乾燥剤(読み)カンソウザイ(その他表記)desiccating agent

デジタル大辞泉 「乾燥剤」の意味・読み・例文・類語

かんそう‐ざい〔カンサウ‐〕【乾燥剤】

水分を除去し、乾燥させるために用いる吸湿性の強い物質塩化カルシウム濃硫酸シリカゲルなど。防湿剤
ワニス油・ボイル油などの油脂の酸化乾燥を速めるために加える金属化合物。鉛やマンガン酸化物など。ドライヤー

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「乾燥剤」の意味・読み・例文・類語

かんそう‐ざいカンサウ‥【乾燥剤】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 他の物質から水分を吸収して乾燥させる物質。五酸化燐、塩化カルシウム、濃硫酸、シリカゲル、液体空気など。乾剤。〔稿本化学語彙(1900)〕
  3. 乾性油を原料にした塗料や印刷インキの乾燥時間をはやめる物質。コバルト、鉛などの酸化物、オレイン酸リノール酸などの塩類など。ドライヤー。速乾剤。乾剤。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「乾燥剤」の意味・わかりやすい解説

乾燥剤 (かんそうざい)
desiccating agent

物質から水分を除去するために用いられる薬品。乾燥剤自身吸湿性が強い。吸湿によって化学変化を起こすような場合を化学的乾燥剤といい,これに対し単に水を吸着するだけのもの,あるいは水のみを冷却凍結させて除く凍結乾燥剤などは,まとめて物理的乾燥剤ということもある。実験室では物質の精製その他の目的で乾燥の操作を行うことが多く,そのための乾燥剤が多く知られている。乾燥剤の性能としては,吸湿力と吸湿速度,吸湿容量などが問題にされるが,なかでも吸湿力は重要な要素である。吸湿力は乾燥剤で乾燥した空気1l中に残留する水分のmg数であらわすことが多い。おもな乾燥剤では表のような値を示す。凍結乾燥剤では,寒剤として塩化ナトリウム+氷(-21℃),エチルアルコール+ドライアイス(-72℃),液体空気(-190℃)などが常用されるが,これらを空気1l中に残留する水分のmg数であらわすと,それぞれ0.045,0.016,1.6×10⁻22であり,液体空気あるいは液体窒素などを用いると強く乾燥することができる。

 乾燥剤には,酸性,塩基性,中性など各種のものがあり,また化学物質としてかなり活性のあるものが多いので,乾燥しようとする対象物質と反応しないようなものを選ぶ必要がある。一般に乾燥しようとする物質が中性なら,塩化カルシウムなどの中性乾燥剤,酸性なら酸性,塩基性なら塩基性の乾燥剤を用いる。乾燥剤には表中の物質のほか,金属ナトリウム,金属カリウム,金属カルシウム,水素化カルシウムCaH2,テトラヒドリドアルミン酸リチウムLi[AlH4]などの還元剤,Na2CO3,K2CO3,Na2SO4,CuSO4,MgSO4,ZnCl2などの塩類無水和物などがある。そのほかモレキュラーシーブ分子ふるい)は,合成アルミノケイ酸アルカリで,三次元網目構造の結晶格子空間に一定の大きさの分子のみをとりこむ物質で,水分子のみをとり出すモレキュラーシーブは精密な実験に適していることがある。またシリカゲルは活性な化学物質と違って,取扱いが容易であり,また安全性が高く,吸湿能力が低下しても加熱脱水することによって容易に再生できるので(塩化コバルトを吸着させたものは,青色のとき吸収能力があり,なくなるとピンクになる),タバコ,茶,のり(海苔)などの食品,医薬品などの防湿用に普通に用いられている。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「乾燥剤」の意味・わかりやすい解説

乾燥剤
かんそうざい
desiccating agent

物質中の水分を除去するために用いられる物質をいう。乾燥剤は吸湿性の強い物質で、吸湿により化学変化をおこす場合を化学的乾燥剤といい、物理的な吸着や凍結などによるものを物理的乾燥剤という。前者には塩化カルシウム無水物、五酸化二リンなどが、後者にはシリカゲル、アルミナなどがある。乾燥剤の能力は、吸湿力(残存水分の量)、吸湿速度、吸湿容量の3因子によって比較される。また吸湿容量は一般に化学的乾燥剤のほうが大であるが、再生は物理的乾燥剤のほうが容易である。乾燥剤には、酸性、塩基性、中性のものがあり、適、不適があるので注意を要する。原則として酸性には酸性乾燥剤を、というように用いればよい。

 また、脂肪油の酸化乾燥を促進し、固体塗膜形成を容易にするために添加する金属化合物をいう場合がある(ドライヤーdrierと総称する)。コバルト、マンガン、鉛などの酸化物、脂肪酸塩(金属せっけん)、樹脂酸塩などが使用される。金属酸化物は主としてボイル油の製造に用いられる。脂肪油中の遊離脂肪酸と作用してボイル油中では金属せっけんの形となる。金属有機塩は油溶性であるから、乾性油に直接使用しうるが、またボイル油製造にも使用される。

[福住一雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「乾燥剤」の意味・わかりやすい解説

乾燥剤【かんそうざい】

物質から水分を除くために用いられる薬品。被乾燥物と反応せず,水と反応したり,水を吸着する性質の強いものが用いられる。シリカゲルのほか,生石灰(酸化カルシウム),酸化バリウム,酸化アルミニウム(活性アルミナ),五酸化リン,塩化カルシウム,無水硫酸銅,苛性ソーダ(水酸化ナトリウム),濃硫酸など。→ドライヤー
→関連項目乾燥乾燥機

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

化学辞典 第2版 「乾燥剤」の解説

乾燥剤
カンソウザイ
desiccating agent, desiccant, drying agent, dryer, drier

水分を除去するために用いられる物質.水分を吸って,みずからが化学変化を起こす化学的乾燥剤と,物理的に吸着あるいは凍結によって乾燥する物理的乾燥剤に分類される.前者は五酸化二リンP2O5,後者はシリカゲルなどが代表的である.乾燥剤の能力は,(1)残存水分の量,(2)吸湿速度,(3)吸湿容量,の三つの因子で表される.また,再生可能か否かも重要である.一般的な乾燥剤の性能順位を表にまとめる.使用の際には適・不適を判断して行わなければならない.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「乾燥剤」の解説

乾燥剤

 吸湿性の高い物質で,閉じられた空間におくと,周囲の水を吸収して湿度の低い状態にする能力をもつ物質.シリカゲル,塩化カルシウムなど.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「乾燥剤」の意味・わかりやすい解説

乾燥剤
かんそうざい

乾燥器」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の乾燥剤の言及

【乾燥】より

…気体の乾燥を脱湿または減湿という。湿り気体を乾燥剤と接触させて水蒸気を吸着,吸収して脱湿する。シリカゲル,活性アルミナ,モレキュラーシーブ等の水蒸気吸着剤ならびに塩化カルシウム,五酸化二リン等の水蒸気との化学的親和力の大きい物質が乾燥剤として用いられる。…

【ドライヤー】より

…一般には乾燥器(ヘアドライヤーなど)や乾燥剤(塗料,インキなどの硬化乾燥を促進させるために用いる工業薬品)のことだが,ここでは後者について述べる。乾性油,半乾性油,または不飽和結合をもつ有機材料を原料とした塗料やインキなどは,空気中で自動酸化によって分子間に橋かけ重合が起こり,三次元化して塗膜を形成する。…

※「乾燥剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android