日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄明礬石」の意味・わかりやすい解説
鉄明礬石
てつみょうばんせき
jarosite
含水硫酸塩鉱物の一つ。各種起源の硫化鉄鉱物の分解産物として産し、また堆積(たいせき)岩の表面に着生するほか、温泉作用など熱水変質産物としても生成される二次鉱物である。まれにある種の熱水鉱脈鉱床の空隙(くうげき)に産する。外観は多く土状あるいは皮膜状であるが、熱水鉱脈中のものは六角板状あるいは立方体に近い菱面体(りょうめんたい)の自形をもつことがある。鉄明礬石を含む明礬石族鉱物は成分変化に富み、銅、鉄、亜鉛、鉛、銀、タリウム、ヒ素、モリブデンなどを含みうるので、鉱床酸化帯のものを定性分析すれば、どのような元素が濃集されたかを知ることができるともいわれている。
群馬県草津(くさつ)町では各所に変質産物として産し、長野県茅野(ちの)市諏訪(すわ)鉄山(閉山)や秋田県鳥海山(ちょうかいさん)周辺では一時鉄鉱石として採掘された。また21世紀に入ってからは、火星探査でも、その表面に存在していることが確認された。英名は、最初に詳しい研究が行われた標本の産地スペインのバランコ・デル・ハロソBarranco del Jarosoにちなむ。
[加藤 昭 2017年12月12日]