中国で鉄を素材として作られた方孔円銭(穴あき銭)。中国において王朝の主要な通貨であった銅銭はしばしば需要に対応できず,窮余の策として鉄をもって鋳造することがあった。一般には王莽(おうもう)の新朝の末に蜀(四川)で自立した公孫述が鉄製の五銖銭を鋳造したのが鉄銭の始まりとされるが,近年では湖南省の前漢墓から鉄製の四銖半両銭が出土しており,埋葬用に作られたのでなければ,これが最も古い鉄銭ということになろう。歴史上著名な鉄銭としては南朝梁,唐・宋代の四川(蜀)で作られたものが挙げられるが,清の咸豊年間の鉄銭もよく知られている。
梁の武帝は当時の銅銭不足,通貨需要の増大に対応するため,523年(普通4)鉄銭(五銖銭)を発行したが,やがて鉄銭は激しいインフレーションを引き起こして王朝を破滅に導く要因となった。唐末五代の蜀の地方政権は銅銭不足,財政難から鉄銭を発行したが,他地方には使用できない貨幣を流通させることによって商人たちに蜀の物資をもって他地域の物資と交易させ,貿易振興をもねらいとしていた。なおこの鉄銭は運搬の問題から飛銭や交子などの為替手形(紙幣)の発行を促したことは有名である。清の鉄銭(咸豊通宝)は1854年(咸豊4)太平天国に対する軍事費の捻出のため,16種類の銅銭の一部に組み込まれて鋳造された。
執筆者:稲葉 一郎
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銑銭(ずくせん)とも。鉄で鋳造された銭貨。日本で鋳造された銭貨は古代以来銅銭が主流であり,鉄銭がはじめて鋳造・発行されたのは,輸出銅確保のため代用銭が必要となった江戸中期の1739年(元文4)である。以降,寛永通宝一文銭は鉄銭が主流となり,地方銭でも仙台通宝・箱館通宝などの鉄銭が発行された。1860年(万延元)にははじめて精鉄の四文銭も出された。当時のおもな鉄製品が鍋だったことから鍋銭ともいった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…南朝では北朝の侵略に対抗すべく軍事財政を組む必要から新貨を発行した。宋では孝建四銖・二銖を,梁では五銖の鉄銭を発行したが,前者の場合,民間では新貨を嫌い五銖銭を変造した悪貨(鵝眼銭・綖環(えんかん)銭)が流通するようになった。後者の場合は悪性のインフレーションが発生したうえ,盗鋳が激増したため,民間では鉄銭を嫌って銅銭(五銖)で交換するようになり,梁の末年には銅銭を復活せざるをえなくなった。…
…宋代になると寄附鋪は州・県などの都市にも普及し,したがって手形も普及した。特に四川では宋朝の政策で鉄銭が発行されたが,鉄銭は素材価値低く(994年の銅鉄銭の公定比価は1対10),やや大口の取引になると代価を持ち運ぶのは困難で,手形交子が盛んに用いられた。益州(成都)城内では富豪16戸が連名で官許を得て交子鋪を開き,独占的に交子を発行していた。…
※「鉄銭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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