日本大百科全書(ニッポニカ) 「鋸南」の意味・わかりやすい解説
鋸南(町)
きょなん
千葉県南西部、安房郡(あわぐん)にある町。1959年(昭和34)勝山町と保田(ほた)町が合併して改称。鋸山(のこぎりやま)の南に位置することに町名の由来がある。安房丘陵の北部を構成する丘陵状地形で占められ、東西の断層線に沿って保田川、佐久間川の小河川が浦賀(うらが)水道に注ぐ。JR内房(うちぼう)線と国道127号が海岸の景勝地を走り、丘陵寄りを並行して富津館山道路が通る。竪穴(たてあな)住居跡の田子台遺跡(たごだいいせき)や、石橋山の戦いで安房へ逃れた源頼朝(よりとも)上陸地は県指定史跡である。中世里見氏の支配を経て、江戸時代保田は河口の港町、勝山は酒井氏1万2000石の城下町として栄えた。酪農をはじめ米、花卉(かき)、野菜の複合経営が行われるが、花卉は歴史のあるスイセンやカーネーションが多い。保田と勝山の海浜は海水浴場となり、民宿・貸家が多い。鋸山は南房総国定公園の観光拠点で、山腹の五百羅漢(らかん)石像群とともに県指定の名勝であり、中腹に日本寺と日本最大級の大仏がある。また菱川師宣(ひしかわもろのぶ)の生地で菱川師宣記念館がある。面積45.19平方キロメートル、人口6993(2020)。
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『『鋸南町史』(1969・鋸南町)』