錦紗(読み)きんしゃ

改訂新版 世界大百科事典 「錦紗」の意味・わかりやすい解説

錦(金)紗 (きんしゃ)

地に文様縫取織,あるいは刺繡したもの。特に金糸を縫取で織り入れたものを〈紗金(しやきん)〉,刺繡したものを〈繡金紗(ぬいきんしや)〉と呼んで区別することもある。この織法が日本に伝えられたのは元和年間(1615-24)の頃とされるが,金紗そのものは金襴などと共に室町時代以前に渡来したものと思われる。独特の軽やかな華やかさが賞翫され,夏の袈裟や茶席の書画表装などに多く使用されてきている。今日〈名物裂〉として伝えられる金紗はほとんどが中国からの舶載裂であるが,〈銭屋〉〈雁金屋〉〈竹屋町〉と呼ばれる裂類は日本製の金紗として名高い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「錦紗」の意味・わかりやすい解説

錦紗
きんしゃ

紗の地に、金糸・箔(はく)・色糸などを絵緯(えぬき)に織り込んで文様を表した絹織物。金紗とも書く。どっしりとした金襴(きんらん)に対して軽やかでありながら、豪華さをもっているところに特徴がある。わが国で織り出されたのは室町末期といわれるが、この錦紗は『堺鑑(さかいかがみ)』によると、元和(げんな)年間(1615~24)に、堺の銭屋(ぜにや)・松屋が、中国の渡来技術者に習って織り出したと伝えている。この錦紗を模して、製織の紗地に金糸・色糸などで文様を刺しゅうしたものを、一般に竹屋町(たけやまち)とよんでいる。これは京都・竹屋町の織工の創意によるところから付称されたという。外見は錦紗によく似ているが、紋織(もんおり)の技法や、金糸や色糸の扱いに相違がみられる。盛夏の着物地、表装地、人形衣装、芸能衣装などに使われる。

[角山幸洋]

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百科事典マイペディア 「錦紗」の意味・わかりやすい解説

錦紗【きんしゃ】

錦紗縮緬(ちりめん)の略。金紗とも書く。絹織物の一種。普通の縮緬より経糸(たていと)を密にし,緯(よこ)糸に撚(よ)りの強い細糸を用いる。軽くしなやかで布面のしぼは細かい。染めて羽織,着物,長襦袢,裾(すそ)回しなどにする。主産地は京都,滋賀。なお経緯とも普通より細い糸を用いて織った御召を錦紗御召と称する。また金襴の一種で紗織に金糸などを織り込んで文様を表したものをいう。

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世界大百科事典(旧版)内の錦紗の言及

【紗】より

綟り織(もじりおり)の一種。経糸2本を組織単位とし,その一方が搦み経(からみだて)となって,他の一方の地経(じだて)の左右に搦みながら組織される織物。一般に経緯に生糸を用い,強い糊を施して織り上げ,製織後に精練,染色,仕上げを行う。紗はと同様に,中国においてきわめて古い歴史をもつと考えられるが,羅より一層耐久性に乏しいためか,漢から隋・唐にかけて出土する羅ほど多くの例をみない。日本では平安以降〈うすもの〉と称して,装束類の夏衣料に広く活用されてきた。…

【ちりめん(縮緬)】より

…生糸のみ使ったものを本ちりめん,玉糸入りのものは玉ちりめん,紬入りは紬ちりめんなどと呼ぶ。ちりめん緯の配列の違いによってしぼの表れ方,形が異なり,左右1本交互を一越(ひとこし),2本交互を錦紗(きんしや),3本交互を三越,4本交互以上で出るしぼを〈うずら〉,片撚りだけのものは片しぼ,立てしぼ,楊柳と呼び絹縮になる。段ちりめんはちりめん緯と平糸などをさまざまに混ぜて織り込んだもので,経緯に強撚糸を使ったものをジョーゼットクレープと呼ぶ。…

※「錦紗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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