紗
しゃ
からみ織の一種で、経糸(たていと)2本が絡むごとに緯糸(よこいと)一越(ひとこし)が交錯したもっとも簡単なからみ織組織である。一般に綜絖(そうこう)2枚と、からみ綜絖1枚を使って製織する。この紗を地として、紋を平(ひら)、綾(あや)などの組織で表した紋紗、金糸を織り込んだ金紗(京都竹屋町で織られたので竹屋町(まち)ともいう)などがある。
紗は古代に少なく、正倉院にも数点が遺存するだけであるが、時代が下るにしたがって増加し、近世初頭には中国の明(みん)の技術が移入され、堺(さかい)では金紗が生産されるようになった。紗にあたるゴーズGauzeは、小アジアの一都市名で、ここで創始されヨーロッパへ発展したという。また日本でも東北地方の「あせはじき」などの農民服に紗がみられ、プレ・インカ裂(ぎれ)にも多くみられるので、織技(しょくぎ)の発展過程で、いずれの地域でも生み出される組織であったとみられる。わが国では、盛夏の着尺地、羽織地、袈裟(けさ)地、篩絹(ふるいぎぬ)などに使われる。
[角山幸洋]
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紗
しゃ
織物の名称。2本の経糸を1本の緯糸にからませるところから搦織 (からみおり) とも捩 (もじり) 織ともいわれる織物の一種。通気性に富み,清涼感に秀いでているところから,盛夏用の着尺や羽織地に用いられる。中国の秦・漢代にはすでにこの語がみられるが,それらは無文紗と考えられる。 10世紀末頃から有文紗も織られた。正倉院には紗の資料は少く,屏風にその例をみるだけであるが,平安時代には貴族の衣服に流行したことが知られている。
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紗【しゃ】
からみ織りのごく薄地の織物。強撚(きょうねん)糸を用いて緯(よこ)糸を経(たて)糸2本でからめていく。絹が多いが近年は化繊や合繊もある。模様を織り出した紋紗,二重織の紗風通などがあり,玉糸を交織した紬(つむぎ)風の粋紗(すいしゃ)も平織組織だが紗と呼ぶ。通風よく涼感があるので羅(うすもの)と称され夏の着物,羽織,ふとんなどにする。
→関連項目織物|絹織物|古代裂
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しゃ【紗】
〘名〙
生糸を絡織
(からみおり)にした織物。目があらく、薄くすき通っていて軽いので、帷
(とばり)や夏羽織などに用いる。うすぎぬ。うすはた。うすもの。《季・夏》 〔十巻本和名抄(934頃)〕
※俳諧・田舎の句合(1680)七番「何と夏羽織縮緬は重し紗は軽し」
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デジタル大辞泉
「紗」の意味・読み・例文・類語
しゃ【×紗】
生糸を絡み織りにした織物。布帛面にすきまがあり、軽くて薄いので、夏物の着尺・羽織地とする。うすぎぬ。うすもの。紗織り。さ。《季 夏》
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紗
ドギーマンハヤシ株式会社が販売する犬用おやつの商品名。
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しゃ【紗】
綟り織(もじりおり)の一種。経糸2本を組織単位とし,その一方が搦み経(からみだて)となって,他の一方の地経(じだて)の左右に搦みながら組織される織物。一般に経緯に生糸を用い,強い糊を施して織り上げ,製織後に精練,染色,仕上げを行う。紗は羅と同様に,中国においてきわめて古い歴史をもつと考えられるが,羅より一層耐久性に乏しいためか,漢から隋・唐にかけて出土する羅ほど多くの例をみない。日本では平安以降〈うすもの〉と称して,装束類の夏衣料に広く活用されてきた。
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