馬の口にはませる銜(はみ)は,その両側に引手をつけ手綱によって引くので左右にずれやすい。銜が左右に動くのをとめ,かつ轡(くつわ)を面繫(おもがい)に取り付ける役目を果たすのが鏡板である。中国では鑣(ひよう)という。鏡板という名称は,平安時代に轡につけた無文の円板を〈鏡〉と形容したことに由来するが,同じ機能をもつものには同一の名称を与える方が混乱が少ないので,棒状鏡板あるいは素環鏡板などと,語の本来の意味とは矛盾した名称を用いている。形は棒状,環状,環に十字をわたしたもの,方形,円形,楕円形,ハート形,S字形,f字形,鐘形,動物形などがある。楕円形,S字形,f字形には周囲に鈴をつけた鈴付鏡板があり,また動物文や唐草文が施されていて,目にも耳にもその華麗さを示そうとしている。材質は,古い時期の棒状鏡板の中に骨角製品があるほかは,木製,青銅製,金銅製,鉄製があり,韓国と日本の古墳の副葬品には鉄地金銅張りのものが多い。
執筆者:小野山 節
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…この本舞台の後方に横板(よこいた)(アト(後)座ともいう)と称する部分が付き,横板の左に橋掛りが付く。すべてヒノキ(檜)の白木造りで,正面奥壁の鏡板(かがみいた)に描かれた松,右側の壁面に描かれた竹のほかは装飾がまったくない。これは,最小の行動に最大の効果を期待する能の演出精神にふさわしい意匠である。…
…アト座には本舞台の屋根から廂が出ていて,本屋根の傾斜とともに音響の一助となっている。アト座の奥の壁は老松を描いた羽目板になっていて,この壁面を鏡板(かがみいた)という。他の3方は開放され,見所との境には幕がない。…
※「鏡板」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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