鏡板(読み)カガミイタ

デジタル大辞泉 「鏡板」の意味・読み・例文・類語

かがみ‐いた【鏡板】

壁・天井などに張る、平らで滑らかな一枚板
能舞台の後方正面羽目板。ふつう、大きく1本老松を描く。
くつわ部分の名。はみの両端に付いて馬の口脇をおさえる金具

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精選版 日本国語大辞典 「鏡板」の意味・読み・例文・類語

かがみ‐いた【鏡板】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 表面が平らな入れ子板。天井、戸、腰羽目などに用いるもの。〔改正増補和英語林集成(1886)〕
  3. 舞台のうしろ正面に張る羽目板。普通、老松を描く。この松は奈良春日神社の影向(ようごう)の松をかたどったものといわれる。
    1. [初出の実例]「さてまくを上るみぎりに、鏡板に立たる時」(出典:承応神事能評判(1653)翁)
  4. 馬具の一つ。銜(はみ)がはずれるのを防ぎ、面掛(おもがい)に取り付けるために轡(くつわ)の両端につける金具。轡鏡板。
    1. 鏡板<b>③</b>
      鏡板
  5. 丸ボイラー圧力容器などの円筒形容器の天地または前後両端部の一枚板。

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改訂新版 世界大百科事典 「鏡板」の意味・わかりやすい解説

鏡板 (かがみいた)

馬の口にはませる銜(はみ)は,その両側に引手をつけ手綱によって引くので左右にずれやすい。銜が左右に動くのをとめ,かつ(くつわ)を面繫(おもがい)に取り付ける役目を果たすのが鏡板である。中国では鑣(ひよう)という。鏡板という名称は,平安時代に轡につけた無文の円板を〈鏡〉と形容したことに由来するが,同じ機能をもつものには同一の名称を与える方が混乱が少ないので,棒状鏡板あるいは素環鏡板などと,語の本来の意味とは矛盾した名称を用いている。形は棒状,環状,環に十字をわたしたもの,方形円形,楕円形,ハート形,S字形,f字形,鐘形,動物形などがある。楕円形,S字形,f字形には周囲に鈴をつけた鈴付鏡板があり,また動物文や唐草文が施されていて,目にも耳にもその華麗さを示そうとしている。材質は,古い時期の棒状鏡板の中に骨角製品があるほかは,木製,青銅製,金銅製,鉄製があり,韓国と日本の古墳の副葬品には鉄地金銅張りのものが多い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鏡板」の意味・わかりやすい解説

鏡板
かがみいた

馬具の1種。 (くつわ) の一部で,馬銜 (はみ。喰) の両端につける金具。板状のものと棒状のものがある。北方騎馬民族の影響のある中国,漢代のものなどは後者で,日本のものは前者に属する。鉄製,金銅張り,銀製などがあるが,実用と装飾用があったと思われる。日本ではこの形式によって轡の名称とし,S字形轡 (奈良時代以降) ,十文字轡,杏葉 (ぎょうよう) 轡,鏡轡 (平安~室町時代) ,透かし轡 (室町時代以降) などが盛行した。

鏡板
かがみいた

能舞台の正面奥の羽目板。正面に大きく老松を,右側面に若竹を描いたもの。松羽目ともいう。歌舞伎の能懸りの舞台のうしろの飾り板も同じ。

鏡板
かがみいた

鏡のように平らな板。 (かまち) や額縁などに入れ,天井,壁,建具などに用いる。

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百科事典マイペディア 「鏡板」の意味・わかりやすい解説

鏡板【かがみいた】

能舞台の背面に張った板。正面に老松を,右側の板には竹を描く。歌舞伎ではこれを模した羽目板を松羽目と称し,転じて能の内容や様式を借用した舞踊劇を松羽目物と総称する。

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世界大百科事典(旧版)内の鏡板の言及

【能】より

…この本舞台の後方に横板(よこいた)(アト(後)座ともいう)と称する部分が付き,横板の左に橋掛りが付く。すべてヒノキ(檜)の白木造りで,正面奥壁の鏡板(かがみいた)に描かれた松,右側の壁面に描かれた竹のほかは装飾がまったくない。これは,最小の行動に最大の効果を期待する能の演出精神にふさわしい意匠である。…

【能舞台】より

…アト座には本舞台の屋根から廂が出ていて,本屋根の傾斜とともに音響の一助となっている。アト座の奥の壁は老松を描いた羽目板になっていて,この壁面を鏡板(かがみいた)という。他の3方は開放され,見所との境には幕がない。…

※「鏡板」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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