津波や洪水、土砂崩れなどの災害で被害に遭った地域や、被災する恐れがある地域から集団での移住を促す事業。1972年に創設された。自治体は高台や内陸など安全とされる場所に宅地を整備し、国は自治体や住民に対し、移転にかかる費用を補助する。移転跡地は自治体が取得。原則として住宅を建てないなど土地利用が制限される。被災地の宅地整備では他に、市街地をかさ上げして住宅や公共施設を再配置する「土地区画整理事業」などがある。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
津波や土砂崩れなどの災害が発生した地域やそのおそれがある地域で、住居の集団的移転を促す事業。略称は「防集」「防集事業」。1972年(昭和47)7月の豪雨災害を機に創設された。根拠法は「防災のための集団移転促進事業に係る国の財政上の特別措置等に関する法律」(昭和47年法律第132号)。事業主体は市町村(市町村からの申し出や委託を受けた都道府県や都市再生機構も可能)で、災害発生地域やそのおそれがある地域を移転促進区域に指定し、住民の土地を買い上げ、危険地に他人が住めないようにする。同時に、高台や内陸など安全な移転先で用地を買収し、宅地、団地、道路、公共施設、農業倉庫などを整備する。東日本大震災の被災地などでは事業費全額を国が負担したが、原則、事業費の4分の3を国が補助し、残りを市町村が負担する(市町村負担分の一部を国の地方交付税などで補助)。住民は移転先に自宅を自力再建するか、復興住宅(賃貸または分譲)に入居するかを選ぶ。移転者には家屋補償や移転費補助などがあり、自力で住宅・土地を購入する人には、住宅ローンの利子相当額も補助する。当初、住宅団地の規模が最低10戸以上で、かつ住居の半数以上が住宅団地に移転する必要があったが、2011年(平成23)の東日本大震災の教訓を踏まえ、津波災害警戒区域、浸水想定区域、浸水被害防止区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、火山災害警戒地域、土砂災害警戒区域については、「住宅団地の規模が5戸以上、かつ住居の半数以上が住宅団地に入居」に条件が緩和された。2023年(令和5)3月末までに同事業で、東日本大震災の被災地で27市町村4万9440戸、それ以外の被災地で35市町村1854戸が移転した。ただ、国庫補助額には1戸あたり1655万円の上限がある一方、移転事業費は一戸あたり2500万~5000万円かかるため、差額は市町村の負担となっており、住民合意形成のむずかしさとともに移転が進まない要因となっている。このため国は2024年度から一定要件下での移転について、1戸当りの補助額上限を撤廃することとした。なお、防災移転事業には、安全な既存集落の空き地などへ1戸ずつ移転する差し込み型移転を含む防災集団移転促進事業のほか、被災地をかさ上げして再建する土地区画整理事業などがある。
[編集部 2023年9月20日]
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