防虫加工(読み)ぼうちゅうかこう(その他表記)moth proofing

改訂新版 世界大百科事典 「防虫加工」の意味・わかりやすい解説

防虫加工 (ぼうちゅうかこう)
moth proofing

イガヒメマルカツオブシムシなど,ある種のガや甲虫幼虫羊毛繊維を食べ,布に穴をあける。他の繊維は食べないので,カーペットの羊毛繊維を食べると裏地があらわれる。虫による食害を防ぐため,ショウノウ,ナフタレンなどの昇華性の防虫剤をたんすに入れて衣服を保存することが家庭で行われている。カーペットのように常時使用するものには,この種の防虫剤は適用できないので,繊維自体に防虫剤を吸収,結合させる防虫加工が工業的に行われる。安全性確保,環境保全の立場から,従来よく用いられたディルドリンおよびミチンLAの使用が禁止され,現在では主としてピレスロイド系の農薬が使われている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「防虫加工」の意味・わかりやすい解説

防虫加工
ぼうちゅうかこう

繊維に薬剤を吸着させて防虫性をもたせる加工。おもに羊毛に施される。その方法は,酸性染料に近い化学構造をもつミッチン FF,オイラン CNなどの有機性防虫剤を,羊毛量の1~1.5%量水に溶かし,40℃の状態で 10分間浸し,羊毛量の2%の酢酸芒硝を加え,加熱して 15分間で 80℃以上にする。そのあと 25分間で薬剤が吸着されるので水洗して乾燥する。この防虫性はドライクリーニングにも,8回ぐらいの水洗濯にも,日光にも影響されないので永久防虫法ともいう。虫はこの羊毛をごくわずか食べて中毒死するか忌避するようになる。これら薬剤については,強力なものは特に毒性に十分の注意が必要である。

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化学辞典 第2版 「防虫加工」の解説

防虫加工
ボウチュウカコウ
moth proofing

ケラチン繊維,主として羊毛の虫による食害を防ぐ加工.羊毛食虫には,ヒメマルカツオブシムシ,ヒメカツオブシムシ,イガなどあり,低濃度で有効なディルドリンがおもに用いられてきた.しかし,薬剤の経口毒性,経皮毒性などの副作用について問題がある.また,羊毛中の遊離アミノ基(リシンアルギニン)が虫の食べる拠点になっており,これを化学処理で封鎖するという考え方もある.繊維処理防虫加工方式には人体障害に十分の注意を必要とする.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「防虫加工」の意味・わかりやすい解説

防虫加工
ぼうちゅうかこう

絹や羊毛・毛皮などの繊維製品につくシミやイガなどの繊維害虫を防除するため、防虫剤を染色剤に溶かして、染色と同時に繊維製品に吸収させること。スイスのガイギ社のミチンFF、ドイツのバイエル社のオイランU33などが使用され、いずれも繊維量に対して1~1.5%染着する。これをミチン加工、オイラン加工などと通称している。

[角山幸洋]

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百科事典マイペディア 「防虫加工」の意味・わかりやすい解説

防虫加工【ぼうちゅうかこう】

主として羊毛製品に施し,虫による食害を防ぐため繊維自体に防虫剤を吸収・結合させる加工。低毒性のミチンFFやオイランU33が用いられる。
→関連項目防虫剤

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