改訂新版 世界大百科事典 「障害児学級」の意味・わかりやすい解説
障害児学級 (しょうがいじがっきゅう)
障害児のために設けられる学級。学校教育法上は特殊学級と呼び,75条にその規定がある。同条に規定する障害児学級の種類には精神薄弱(精神遅滞),肢体不自由,病弱・虚弱,弱視,難聴,言語障害,情緒障害がある。日本最初の障害児学級は,1890年長野県松本尋常小学校に設置された〈落第生学級〉とされている。障害児学級は大正期から昭和期にかけて,そのほとんどが精神遅滞児および学業不振児を対象とする学級として設置されていくが,第2次世界大戦にむかうなかでしだいに影をひそめてしまう。戦後ふたたび障害児学級が設置されるようになったが,精神遅滞児以外を対象とする障害児学級が設置されるのは,概して1960年代以降のことである。
障害児学級の1学級当りの児童・生徒数は12名以下が標準とされているが,具体的な数については都道府県教育委員会が定めることになっており,全国一律ではない。また設置形態も固定制と通級制があり,言語障害学級,難聴学級などは通級制が採用されていることが多い。これは教科学習などは通常の学級で行い,たとえば言語治療のために言語障害学級に通うという形態をとるものである。
障害児学級の教育課程は,それぞれの障害に応じて特別なものが編成されている。すなわち小学校や中学校の教育課程において定められている領域,授業時数,教育内容に準じつつ,必要に応じて二つ以上の教科を合科・統合して教えることができるなど,さまざまな措置がとれるようになっている。障害児学級の大多数は普通の小・中学校のなかに設けられているが,教育活動のほとんどすべてが通常の学級のそれと切り離されて進められている例が少なくない。障害児学級を学校運営においてしっかり位置づけること,健常児と障害児の共同・交流の機会を確保することなど,今後に残された課題は多い。
→障害者教育
執筆者:茂木 俊彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報