雨宮敬次郎(読み)あめみやけいじろう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「雨宮敬次郎」の意味・わかりやすい解説

雨宮敬次郎
あめみやけいじろう
(1846―1911)

実業家。「天下の雨敬」「投機界の魔王」などといわれた。甲斐国(かいのくに)(山梨県)東山梨郡名主次男として生まれる。14歳ごろから農業のほかに生糸などの行商を始め、やがて行商のほうを専業とするようになった。1870年(明治3)開港場横浜移住、洋銀相場や輸出用生糸などの投機取引に成功、失敗を繰り返して、大胆な相場師として知られるようになった。1884年病気を契機に相場取引から手を引き、東京へ転住。その後、新たに「安全かつ有利」な蓄財手段として鉄道事業を中心とする株式投資を活発に行うとともに、多数の企業の経営に大株主重役として関与し、「甲州財閥」を代表する企業家の一人となった。晩年には国益的観点から製鉄業の育成にも関心を向けた。だが、多年の「金儲(かねもう)け」至上主義のため、彼の死去とともに傘下企業は離散した。

[四宮俊之]

『小泉剛著『甲州財閥』(1975・新人物往来社)』


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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「雨宮敬次郎」の解説

雨宮敬次郎 あめみや-けいじろう

1846-1911 明治時代の実業家。
弘化(こうか)3年9月5日生まれ。生家は甲斐(かい)(山梨県)の名主。明治5年横浜にいき洋銀相場,生糸取り引きの仕事に従事。12年東京深川に製粉工場を設立し成功。軽井沢の土地開墾,岩手県仙人鉄山,甲武鉄道(現JR中央線の一部),東京市街鉄道などの経営にあたった。甲州財閥のひとりで,雨敬とよばれた。明治44年1月20日死去。66歳。
格言など】快楽は求むべきものではなく,自然に来るのを待つべきものである。しかもそれは働いて待つべきものである

雨宮敬次郎 あめのみや-けいじろう

あめみや-けいじろう

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雨宮敬次郎」の意味・わかりやすい解説

雨宮敬次郎
あめみやけいじろう

[生]弘化3(1846).9.11. 山梨
[没]1911. 東京
明治期の実業家。甲州の農家に生れ,少年時代から近郷の諸産物を行商し,商才を発揮する。明治維新後,新開の横浜港に出て生糸や蚕種の大胆な投機でその名を知られる。 1877年蚕種の輪出促進のためイタリアに渡航,帰国後製粉事業を興して成功した。その後は開墾,植林および近代産業に活動の舞台を移し,さらに 88年以後は甲武鉄道,川越鉄道,東京市街鉄道ほか多数の鉄道会社に関係して活躍,その規模の大きさとアイデアで実業界における一方の雄と目された。

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百科事典マイペディア 「雨宮敬次郎」の意味・わかりやすい解説

雨宮敬次郎【あめのみやけいじろう】

実業家。雨敬と俗称。甲斐の人。甲州物産の江戸行商をした後,横浜で蚕種・生糸投機,銀相場に手を染めた。1880年東京深川に製粉工場を設立し,軍需用堅パン・ビスケットを製造して成功。浅間山麓開発,東京市街鉄道敷設,電鉄事業等に尽力した。東京市街鉄道株式会社取締役会長,江ノ島電鉄社長を歴任。早くから鉄道国有論を唱えたことでも知られる。若尾逸平,小野金六と並び甲州財閥三人男とされた。

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367日誕生日大事典 「雨宮敬次郎」の解説

雨宮 敬次郎 (あめのみや けいじろう)

生年月日:1846年9月5日
明治時代の実業家
1911年没

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世界大百科事典(旧版)内の雨宮敬次郎の言及

【疑獄】より

…〈疑獄〉という言葉は,元来入獄させるか否かが明確でなく,犯罪事実があいまいな事件を意味する。この種の事件は多かれ少なかれ政・官・財界に波及するため,現在では政治問題化した利権関係事件の総称となっている。政治問題として社会的に大きく取りあげられ,ジャーナリズムによる声高な批判を代償として,刑事事件としては訴追されることがきわめて少ないのが疑獄事件の特徴といってよい。 明治初期においては,山県有朋が関与したといわれる山城屋事件など,藩閥政府と政商とが特権の供与をめぐって直接結びついたケースがあり,多くは表沙汰にならなかった。…

【甲州財閥】より

…明治から昭和の初めにかけて財界に一大勢力を占めた山梨県出身の資本家群に対する俗称。若尾逸平,雨宮敬次郎,根津嘉一郎などがその代表で,郷党意識で結ばれていたことから世人は甲州財閥と呼んだ。財閥本来の意味からいう財閥ではない。…

※「雨宮敬次郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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