合巻。10冊。式亭三馬作,歌川豊国画。1806年(文化3)刊。〈浅草観音・利益仇討〉と角書(つのがき)がある。武蔵国調布の無頼の徒来太郎(らいたろう)は,雷獣をとりおさえて雷太郎と呼ばれ,仲間の獄卒無理太郎らと殺人強盗などの凶悪を働くが,彼に殺された万屋文右衛門の子息や娘婿,手代らが,浅草観音の利生によって敵討をとげるという筋。実録の《天明水滸伝》によった作で,陰惨残虐な叙述や画面が多く,末期黄表紙,初期合巻の特色をよく表している。全10冊を,5丁を1冊とする黄表紙の体裁をとって出したほかに,5冊ずつ前後2編として刊行したものもあり,草双紙の合巻形態を確立普及させたものとして注目される。
執筆者:水野 稔
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式亭三馬(しきていさんば)作の黄表紙(きびょうし)。前後編各5冊。合巻(ごうかん)仕立てで前後編各1冊にしたものもある。初世歌川豊国(とよくに)画。1806年(文化3)刊。「浅草観音/利益仇討(りやくのあだうち)」と角書(つのがき)。悪漢来太郎(らいたろう)は武蔵(むさし)国調布の商家万屋文右衛門(よろずやぶんえもん)の娘お鶴(つる)を手籠(てご)めにし、結婚を承知しない文右衛門を殺した。そのため、葛飾(かつしか)の高(こう)の大之丞(だいのじょう)に嫁していたお鶴は自殺する。来太郎は仲間と悪事を続けていたが、あるとき雷獣を退治して雷太郎(いかずちたろう)と名のる。お鶴の弟亀次郎、大之丞らは、浅草観音の霊夢に導かれ、相模(さがみ)大磯(おおいそ)に潜んでいた雷太郎を討った、という内容である。軽妙、洒落(しゃれ)を生命とする黄表紙の伝統を守っていた三馬が、流行の敵討物(かたきうちもの)に転じたという点と、この作品が黄表紙の合巻化という、製本上の改革に大きい役割を果たしたという点で、文学史上注目されている。
[神保五彌]
『本田康雄著『式亭三馬の文芸』(1973・笠間書院)』
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…草双紙(合巻(ごうかん))に取材した歌舞伎狂言の一系統。1806年(文化3)刊の式亭三馬作《雷太郎強悪物語(いかずちたろうごうあくものがたり)》をはじめとする合巻は,絵入小説の一種で,当代の人気俳優の似顔によって挿絵が描かれるなど,歌舞伎趣味の色濃く投影された出版物。当初,小説の劇化は劇場人の側から拒絶されてきたが(《作者年中行事》),4世鶴屋南北(合巻での筆名は姥尉輔(うばじようすけ))以降,劇界との交流が生まれ,草双紙の劇化も盛行した。…
※「雷太郎強悪物語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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