シアン酸塩の異性体。一価および二価水銀の化合物が知られている。
(1)雷酸水銀(Ⅰ) 雷酸水銀(Ⅱ)を製造するとき温度を低くして(45~55℃)反応させると得られる。化学式Hg2(ONC)2、式量485.26。淡青白色。雷酸水銀(Ⅱ)よりも水に溶けやすく、同じように爆発しやすい。
(2)雷酸水銀(Ⅱ) 爆薬としてよく知られ、雷汞(らいこう)とよばれる。古くは各種雷管の点火、点爆薬として広く用いられていたが、最近ではジアゾジニトロフェノールなどがかわりに使われ、雷汞は使われなくなっている。硝酸水銀(Ⅱ)の硝酸溶液とエタノール(エチルアルコール)とを大きい反応容器内で反応させると、激しい反応がおこり、複雑な反応ののち結晶として析出する。無色針状晶。比重4.42。冷水に難溶、熱水、エタノール、アンモニア水に溶ける。乾燥したものは、きわめてわずかな摩擦あるいは衝撃によって爆発する。このときの反応は、
Hg(ONC)2→Hg+N2+2CO
であって、爆発熱は1グラム当り409カロリーである。しかし1平方センチメートル当り600キログラム以上に強く圧搾すると死圧現象(ある程度以上の圧力をかけると爆発しなくなる現象)をおこし、点火しただけでは爆発しなくなる。雷汞の発火温度は170~180℃であるが、100℃以下の温度で長時間加熱すると分解して、帯黄色、非爆発性物質に変わる。水を含んでいるとすこしの外力では爆発しない。また水中に貯蔵するが長い間には分解する。チオ硫酸ナトリウムにより分解するので、これは雷汞の定量分析あるいは廃棄に利用される。
Hg(ONC)2+2Na2S2O3+H2O→
HgS4O6+2NaOH+NaCN+NaOCN
金属容器内に圧搾して点火薬として(点火用雷管)、また点爆薬として工業雷管、電気雷管、雷汞雷管などに用いられていた。有毒。
[中原勝儼]
HgⅠと,HgⅡの化合物がある.普通は後者をさす.【Ⅰ】雷酸水銀(Ⅰ)(mercury(Ⅰ) fulminate):Hg2Ⅰ(ONC)2(485.21).HgⅡ塩の合成時と同様,硝酸水銀(Ⅱ)の硝酸溶液にエタノールを加え,やや低温(45~55 ℃)で反応させると得られる.淡黄色の斜方晶系結晶.水に可溶.爆発性である.【Ⅱ】雷酸水銀(Ⅱ)(mercury(Ⅱ) fulminate):HgⅡ(ONC)2(284.62).雷コウ(fulminating mercury)ともいう.大過剰の濃硝酸にHgを溶かすか,または硝酸水銀(Ⅱ)の硝酸溶液に,エタノールを反応させると得られる.無色の単斜晶系結晶.密度約4.42 g cm-3.乾いたものは加熱,衝撃,摩擦で爆発する.約180 ℃ で発火する.水中では爆発しにくい.冷水に難溶,熱水に可溶.アンモニア水に溶け,これに硝酸を加えるとふたたび沈殿するので,これを利用して再沈殿精製する.KClO3などを加えて,爆薬などの起爆薬,点火薬に用いられたが,現在は,ジアゾジニトロフェノール(DDNP)が使われている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…雷酸水銀(II)Hg(ONC)2の慣用名。A.B.ノーベルの発明した雷管に起爆薬として用いられた。…
※「雷酸水銀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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