素粒子(電子,陽子など),原子,分子,電離放射線などがもつエネルギーの単位。エレクトロンボルトとも呼ばれ,記号eV。1eVは,1個の電子が真空中で電位差1Vの電極の間で加速されるときに得るエネルギーに等しい。電子のもつ電荷は約1.602×10⁻19Cであり,一方,1Cの電荷をもつ粒子が1Vの電位差の2点間で加速されて得るエネルギーが1Jと定められているから,1eVは約1.602×10⁻19Jである。エネルギーが高い場合には,その程度により,キロ,メガ,ギガの接頭語をつけて,それぞれキロ電子ボルトkeV,メガ電子ボルトMeV,ギガ電子ボルトGeVの単位が用いられる。紫外線,可視光線などの光子1個のエネルギーも,その波長λ(nm)が知れると,およそ1240/λによってeV単位で表すことができる。例えば,波長200nmの紫外線のエネルギーは約6.2eVである。
執筆者:山下 幹雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
エネルギーの単位.記号 eV.エネルギーの単位としてカロリーやジュールがあるが,単一の原子・分子に関する現象を述べるには,あまりにも大きすぎて不便であるので,通常,電子ボルトという単位が使用されている.単位電荷をもった荷電粒子,たとえば1個の電子が静止状態から出発して1 V の電位差間を妨害を受けずに移動するときに必要なエネルギー.便宜上,103 電子ボルトを keV,106 電子ボルトをMeV,109 電子ボルトを GeV と略記する.水素原子から電子を取り去るのに要するエネルギーは13.6 eV,また放射性同位体のコバルト60は1.17および1.13 MeV のエネルギーをもったγ線を放出する.ジュール(J)への換算は電荷素量の測定の精度に依存するが,
1 eV ≈ 1.6021×10-19 J,
熱化学的単位への換算は
1 eV ≈ 23.06 kcal mol-1.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
1個の電子が1ボルトの電位差によって受けるエネルギーで、荷電粒子のエネルギーを表すのに用いる単位。エレクトロンボルトともいう。記号はeVで表す。SI単位で表される数値が実験的に求められる非SI単位の一つである。1電子ボルトは1.6027653×10-19Jに等しい。国際単位系(SI)では、特別な領域でSI単位と併用してよいとしている。電磁放射(光子)のエネルギーを電子ボルトで表す近似的な方法として、波長λをナノメートル(nm)で表せば、10-4程度の精度で、1234/λeVで与えられる。
[小泉袈裟勝・今井秀孝]
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