日本大百科全書(ニッポニカ) 「電流磁気効果」の意味・わかりやすい解説
電流磁気効果
でんりゅうじきこうか
galvanomagnetic effect
電流の流れている金属(または半導体)に磁場をかけたときに現れる種々の現象の総称。ただし、試料の温度は一様であるとする(試料内に温度差があると熱電効果も現れる)。磁場の方向が電流の方向と垂直の場合を横効果、両者が平行な場合を縦効果という。横効果にはホール効果、(横)磁気抵抗効果、エッチングハウゼン効果、縦効果には(縦)磁気抵抗効果がある。
(1)横効果 電位差を生ずる。これをホール電圧とよび、この現象をホール効果という。さらに、y方向には(電位差のほかに)温度差も生ずる。これをエッチングハウゼン効果という。また、x方向の電気抵抗は磁場により増加する(強磁性体では減少する場合もある)。これを(横)磁気抵抗効果という。
のように、x方向に電流を流し、z方向に磁場をかける場合を考える。このとき、(y方向には電流を流さない条件で)y方向に(2)縦効果 磁場をx方向(=電流方向)にかける場合には、x方向の電気抵抗が変化する。これを(縦)磁気抵抗効果という。
以上の種々の電流磁気効果のおこる機構は、電流の担い手の電子(または正孔(せいこう))が磁場から力を受けることと、さらに電流が熱も運ぶことにある。ホール効果や磁気抵抗効果のデータは電子の量子力学的状態についての情報を提供するので物性研究において重要な実験手段となっている。たとえば、ホール電圧は電流と磁場に比例する。ホール電圧を電場で表してEH、x方向の電流密度をi、z方向の磁場をHとすると、EH=RHiHと表される。比例係数RHをホール係数とよぶ。電流の担い手が1種類だけという簡単な場合には、ホール係数はRH=1/nqcと表される。nは電流の担い手の単位体積当りの密度、qは電流担い手の(符号を含む)電荷、cは光速である。したがって、RHを測定すれば、その符号から電流の担い手の正負を知ることができ、RHの大きさからはその密度を知ることができる。実際の半導体などでは、電流の担い手は1種類とは限らず解析は面倒である。最終的には量子力学的な計算が必要になる。低温・高磁場における磁気抵抗効果のデータは電子状態のフェルミ面(波数空間において電子の占めている空間と、占めていない空間との境界面)についての情報を提供する。
強磁性体の場合には、異常なホール効果や磁気抵抗効果が加わるのでいっそう複雑になる。
[宮台朝直]
『キッテル著、宇野良清他訳『キッテル固体物理学入門』上下・第7版(1998・丸善)』