非淋菌性尿道炎(読み)ひりんきんせいにょうどうえん(その他表記)Nongonococcal Urethritis

六訂版 家庭医学大全科 「非淋菌性尿道炎」の解説

非淋菌性尿道炎
ひりんきんせいにょうどうえん
Nongonococcal urethritis
(感染症)

どんな感染症か

 尿道炎は、性行為を介して感染する性感染症(STD)で、男性に発症します。

 原因となる微生物は、淋菌(りんきん)淋菌以外に大別され、前者が淋菌性、後者が非淋菌性尿道炎に分類されます。これらの微生物は、女性の腟だけでなく咽頭にも棲息することがあるので、オーラルセックスでも感染します。

 非淋菌性尿道炎の約半数がクラミジアによる感染で、そのほか、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、トリコモナスなどが原因微生物になります。

症状の現れ方

 クラミジアによる尿道炎は、淋菌性に比べて潜伏期間が約1~3週間と長く、比較的ゆっくりと発症します。主な症状は尿道の不快感や排尿痛で、また尿道から漿液性(しょうえきせい)(比較的さらさらとした)の分泌物が排出されます。

検査と診断

 尿道炎の診断は、尿か尿道分泌物を顕微鏡で観察して白血球を確認します。通常は、原因微生物を決定するために培養検査を行いますが、クラミジアは一般施設での培養は難しく、通常は遺伝子抗原の検査で確認します。

治療の方法

 クラミジアによる尿道炎治療は、クラミジアに抗菌力をもつ抗菌薬を内服します。内服期間は1~2週間です。1回のみの服用で効果のある薬剤も登場しています。

 感染の原因となったセックスパートナーが特定できる場合は、パートナーもいっしょに治療する必要があります。治癒が確認されるまで性行為は禁止です。

病気に気づいたらどうする

 病院を受診し、尿道炎の治療を開始するとともに、セックスパートナーに病気のことを伝えて医師の診察を受けることを促します。

 尿道炎は、性行為のあらゆる過程で感染する可能性があり、前述したようにオーラルセックスでも感染します。予防法として、性行為の最初からコンドームを使用することが肝要です。

公文 裕巳

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「非淋菌性尿道炎」の解説

ひりんきんせいにょうどうえん【非淋菌性尿道炎 Nongonococcal Urethritis】

[どんな病気か]
 淋菌以外の病原微生物の感染でおこる尿道炎です。性行為によって感染します。
 原因となる病原微生物には、細菌大腸菌(だいちょうきん)、ブドウ球菌(きゅうきん)、レンサ球菌、変形菌など)、ウイルス、原虫(げんちゅう)(トリコモナスなど)、真菌(しんきん)(カンジダなど)、スピロヘータ、クラミジアなどいろいろありますが、近年は、クラミジアによるものが増えています。
[症状]
 性行為から1~7日たって、尿の出口(外尿道口)が赤くただれ、そこから膿(うみ)や分泌物(ぶんぴつぶつ)が出たり、排尿(はいにょう)の際に痛み・かゆみ、熱感などを感じますが、淋菌性尿道炎(淋病)に比べると、症状は軽いものです。
 とくに、クラミジアによる尿道炎は潜伏期間が長く(1~3週間)、症状が軽く、病気にかかっていることに本人も気づきにくいものです。
 男性は排尿時の熱感・しみる感じ・外尿道口の軽いかゆみ程度ですし、女性は白色~黄色の鼻水のようなうすいおりもの、下着のわずかな汚れ、下腹部の鈍い痛み程度のことが多いものです。
 女性は尿道が短いため膀胱炎(ぼうこうえん)を併発しやすいものです。頻繁(ひんぱん)にトイレに行きたくなる、排尿の終わりに痛みを感じる、残尿感(ざんにょうかん)があるといったときは、膀胱炎もおこっています。
[検査]
 淋菌性尿道炎と同じ検査(「淋病(淋疾)」の検査)のほかに、血液中の抗体(こうたい)の量を測定したり、分泌物を培養(ばいよう)したりして、原因となった病原微生物を調べます。
 ときには、外尿道口から内視鏡(ないしきょう)を挿入して、尿道や膀胱の中を調べることもあります。麻酔をするので痛くはありません。
[治療]
 原因となった病原微生物を調べ、もっとも有効な薬剤を選んで使用します。
 トリコモナス、カンジダ、スピロヘータには、それぞれに有効な薬があります。
 クラミジア、マイコプラズマ、一般細菌(大腸菌、ブドウ球菌、レンサ球菌など)には、テトラサイクリン、マクロライド系の抗生物質が、第1選択の薬になります。
 早ければ1~2週間で治りますが、治りにくいこともあって、この場合は、数か月かかります。
 素人療法、とくに抗生物質の乱用は、病気を慢性化させたり、誤診のもとになりますから、必ず医師の指示にしたがって使用してください。
 薬の副作用と思われる症状が出たり、熱が出たり(合併症がおこった可能性がある)したときは、すぐに医師に連絡してください。
 服薬中は、飲料を多めに飲むようにします。
 なお、自分だけではなく、病気を自分にうつしたと思われる人、自分が病気をうつした可能性のある人も検査や治療を受けることが必要です。
 日常生活の注意や予防は、淋菌性尿道炎(「淋病(淋疾)」の日常生活の注意、予防)と同じです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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