革新官僚(読み)かくしんかんりょう

精選版 日本国語大辞典 「革新官僚」の意味・読み・例文・類語

かくしん‐かんりょう ‥クヮンレウ【革新官僚】

〘名〙 昭和一〇年代、新官僚と呼ばれた一派より一世代若い官僚層で、日中全面戦争以後の戦時統制計画を立案、推進した一派。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「革新官僚」の意味・わかりやすい解説

革新官僚 (かくしんかんりょう)

第2次大戦期に,総力戦のための国内体制再編を推進した官僚勢力,とくに新官僚に後続して登場,企画院にあって,戦時統制の計画,立案にあたったグループを指す場合が多い。満州事変後,親軍的な官僚層の勢力が増大するとともに,統制強化の動きが各方面に広がり,とくに農山漁村経済更生運動選挙粛正運動などの新たな組織化が注目されたが,こうした官僚主導型の政治改革を意図するグループが〈新官僚〉と呼ばれるようになった。1935年岡田啓介内閣が国策調査機関として設置した内閣調査局は,これら新官僚の活動の場となり,後藤文夫吉田茂戦後首相とは別人)らの内務官僚主流をなした。革新官僚とは,この新官僚につづく,より若い官僚を指しており,内閣調査局が企画庁となり,さらに日中戦争の全面化とともに,資源局と合して企画院に発展する過程で,総動員計画の作成にあたるようになる経済官僚がその中心になっていた。内閣調査局時代から,企業の所有と経営の分離による公益的統制を主張して電力国家管理案を作成し,その実現に奔走した奥村喜和男逓信省出身)の活動はその先駆をなすものであり,さらに40年後半の新体制論議のなかで,企画院案として提示された〈経済新体制確立要綱〉は,革新官僚の意図と方向を示すものとして注目を集めた。当時,革新官僚とは,岸信介商工次官,星野直樹企画院総裁ら,すでに満州国での経済統制の経験をもつ高級官僚と企画院の実務を担当している前記奥村や,美濃部洋次(商工省出身),毛里英於菟(大蔵省出身),迫水久常(大蔵省出身)らの中堅官僚をひとまとめにした呼称として使われている。彼らによって作成・推進された〈経済新体制確立要綱〉は,企業の公共化,ナチス的な指導者原理の導入による統制機構の確立,利潤の制限などを骨子とするものであり,これらの要求が〈革新〉の名で呼ばれたのであった。この〈革新〉性は財界などからの強い反発によって一定の後退を余儀なくされたし,また企画院に共産主義の影響ありとする企画院事件(1941)も,こうした〈革新〉性をけん制する意味を持つものとみられた。以後,対米英開戦後の物資欠乏により,総動員計画の立案・実施が困難になるとともに,官僚の〈革新〉性への関心も薄れるが,しかしこれらのメンバーは,以後も戦時統制強化のために活躍している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「革新官僚」の意味・わかりやすい解説

革新官僚
かくしんかんりょう

1937年(昭和12)10月創設の企画院を拠点に、強力な戦時経済統制の実現を図った官僚勢力。逓信(ていしん)省から、企画院の前身である内閣調査局に入った奥村喜和男(きわお)らが電力国家管理法案を起案・推進したことから、にわかに注目を浴びた。38年3月の第73議会で、国家総動員法案と電力国家管理法案がともに通過、成立したため、経済の国家統制について、財界と軍部、革新官僚の対立が表面化した(たとえば同年秋の総動員法第11条、利潤統制の発動問題など)。この対立は、40年7月、第二次近衛文麿(このえふみまろ)内閣成立直後の経済新体制問題において頂点に達した。企画院総裁星野直樹(なおき)の下で、奥村のほか、美濃部洋次(みのべようじ)、迫水久常(さこみずひさつね)、毛里英於菟(もうりひでおと)らが、私企業に対する直接の官僚統制を意味する経済新体制確立要綱の立案にあたり、財界の自主統制案と激しく抗争した。彼らは、戦時体制下において、軍部の志向する総動員体制の確立に呼応した官僚勢力であったが、結局財界などの強い反対にあい、そのプランを実現することができなかった。

[芳井研一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の革新官僚の言及

【右翼】より

…観念右翼には国本社建国会,血盟団,神兵隊,大日本生産党,大東塾など,革新右翼には経倫学盟,日本国家社会党,新日本国民同盟,日本革新党など,中間派には東方会,大日本青年党,国粋大衆党などがあったが,中間派は思想上の立場からいえば革新右翼に分類することも可能である。これらの右翼団体の多くは軍部内のファッショ的革新派や革新官僚と結びついていたが,観念右翼は皇道派に,革新右翼と中間派の多くは統制派に親近感をいだいていた。テロをともなう彼らの運動は,満州事変前後から活発化したが,多くは大衆的基盤が弱く,理論性に乏しく,非合法活動に走った場合には弾圧されるなど,全体としては政治のファッショ化を促進する役割を果たしたにとどまった。…

【新官僚】より

…大正後期から,青年団運動,選挙粛正運動などを推進するなかで,一定の連携をつくりあげてきた勢力であり,国維会はその背後にある組織として注目された。内閣調査局は新官僚の拠点と評されたが,それが日中戦争の拡大とともに企画院に拡大されるにしたがって,より若い勢力が〈革新官僚〉と呼ばれるようになった。【古屋 哲夫】。…

※「革新官僚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android