1937年創設された内閣直属の総合国策立案機関であるが,事実上は内閣の総動員関係の事務機関。1935年5月設置された内閣調査局は,37年5月企画庁に拡大改編され,陸軍から重要産業5年計画要綱案の提示をうけ,その検討に着手した。同年7月,日中全面戦争の開始にともない,総力戦体制の整備が急がれ,10月,総動員準備機関としての資源局と企画庁を統合することにより企画院が創設された。初代総裁は滝正雄。発足後当面した課題は,国家総動員法,電力国家管理法の制定,物資動員計画の設定,重要産業充実計画などであった。38年に入ると資金,労務,交通などの動員計画がたてられ,40年11月〈経済新体制確立要綱〉の原案が発表されたが,財界は要綱原案に反対した。企画院は戦時統制経済を推進する革新官僚の拠点として脚光をあびたが,統制経済強化への反発が生じ,41年企画院事件が起きた。42年11月まで4次の改組がなされたが,太平洋戦争の戦局悪化とともに,限られた資材,物資の獲得や発注をめぐり陸海軍の対立・抗争が激化し,さらに強力な権限を有した国家機関が求められるようになった。その結果43年11月,商工省と企画院が廃止され,新たに軍需省に統合再編された。
→国家総動員
執筆者:粟屋 憲太郎
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1937年(昭和12)10月、資源局と企画庁を統合して設置された内閣直属の組織。日中戦争の勃発(ぼっぱつ)に伴い、総動員体制の確立を図る陸軍の強い要請を受けて設置された。国家総動員の中枢機関と位置づけられ、平時、戦時における総合国力の拡充運用に関する計画の立案上申、国家総動員計画の設定、遂行についての各省庁の調整統一をその職務とした。国家総動員法案、生産力拡充計画、物資動員計画などを作成し、また興亜(こうあ)院の設置なども行った。初代総裁には滝正雄が、総務部長には横山勇(いさみ)陸軍少将が就任した。40年7月、第二次近衛文麿(このえふみまろ)内閣の成立に際して、総裁に大蔵省出身の革新官僚であり「満州国」総務長官の星野直樹(なおき)が任命された。その下で新たな経済統制策の立案が進められ、9月に「経済新体制確立要綱」としてまとめられた。しかし財界などの強い反対にあい、彼らの意図する「新体制」は実現されず、かえって41年には企画院事件を引き起こすに至った。企画院は、物資動員計画などにおいてその中心的役割を果たしたが、当初の目的であった総合的な国策を樹立、運用することはできなかった。43年11月、軍需省に再編、合併された。
[芳井研一]
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日中戦争下,戦時統制経済の調査立案にあたった総合国策機関。内閣の外局。1937年(昭和12)10月25日,企画院官制により内閣の外局である企画庁と資源局を統合して設置。総裁は親任官で国務大臣が兼ねることもあった。陸軍・革新官僚は総動員政策の統合主体として設置を望んだが,各庁への優越性が否定されるなど事務機関の地位に留まった。しかし国家総動員法の制定,それにもとづく総動員諸計画の調査立案を担当し,戦時国家統制の確立に重要な役割をはたした。革新官僚の拠点であったが,経済新体制問題で財界と対立,41年には企画院事件がおこって和田博雄ら革新官僚が検挙されたため,以後軍部主導となった。43年11月新設の軍需省に吸収された。
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…第2次大戦期に,総力戦のための国内体制再編を推進した官僚勢力,とくに新官僚に後続して登場,企画院にあって,戦時統制の計画,立案にあたったグループを指す場合が多い。満州事変後,親軍的な官僚層の勢力が増大するとともに,統制強化の動きが各方面に広がり,とくに農山漁村経済更生運動,選挙粛正運動などの新たな組織化が注目されたが,こうした官僚主導型の政治改革を意図するグループが〈新官僚〉と呼ばれるようになった。…
…1935年5月に設置された内閣調査局は内閣の重要政策の調査および審査等を担当する機関であった。ついで企画庁を経て,37年戦時体制のもとで企画院が設置され,国家総動員計画の設定運用,国土計画の設定等強力な計画機能をもって43年まで活動した。なお,44年から45年までの間に総合計画局が設置されている。…
…二・二六事件後には参謀本部の中枢を占めた石原莞爾(かんじ)らは〈満州国〉にならって首相のもとに強力な総務庁をおいて国政全般を指導させ,生産力拡充を目標に国家総動員を強行しようとした。しかし,海軍の反対によって,1937年に内閣調査局の後身の企画庁と資源局とが合併して企画院ができたが,物資動員(物動)計画など国家総動員の事務機関にとどまり,各省にたいする優越性はもたなかった。〈支那事変〉(日中戦争)が始まると軍需工業動員法がとくに発動されたが,1938年には戦時またはこれに準ずる事変に際し政府に国家総動員のための広範な命令権を認める国家総動員法が,議会の審議権を剝奪するとの批判を押しきって制定された。…
※「企画院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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