御高祖頭巾(読み)オコソズキン

デジタル大辞泉 「御高祖頭巾」の意味・読み・例文・類語

おこそ‐ずきん〔‐ヅキン〕【高祖頭巾】

日蓮上人の像の頭巾に似るところから》縮緬ちりめんなどの四角い布にひもをつけ、目だけを出して頭・顔を包む婦人の防寒用頭巾。袖頭巾そでずきん 冬》
[類語]頭巾綿帽子角隠し防空頭巾フードベール

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「御高祖頭巾」の意味・読み・例文・類語

おこそ‐ずきん‥ヅキン【御高祖頭巾】

  1. 〘 名詞 〙 ( 御高祖日蓮上人のこと)の像の頭巾に似ているところから ) 目の部分だけ残して、頭や他の部分を全部包む防寒ずきん。宝暦(一七五一‐六四)頃、歌舞伎の女形中村富十郎が着用してから若い女の間で流行した。おこそ。おこそう頭巾。おこそう。袖頭巾。大明(だいみん)頭巾。《 季語・冬 》
    1. 御高祖頭巾〈風俗画報〉
      御高祖頭巾〈風俗画報〉
    2. [初出の実例]「朝帰る時、伽羅(きゃら)の香をとめた黒縮緬のおこそ頭巾(ヅキン)あげんせうと出しおった時のうれしさ」(出典:咄本・座笑産(1773)頭巾)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「御高祖頭巾」の意味・わかりやすい解説

御高祖頭巾 (おこそずきん)

江戸時代,宝暦(1751-64)のころから行われ,ことに明治時代,婦人の間に流行した被り物(かぶりもの)の一種。方形の布に耳掛けのひも輪をつけたずきん。主として冬季,防寒のために着装した。御高祖頭巾の名称については《嬉遊笑覧》に〈其着たるさま日蓮上人の像に似たればお高祖頭巾ともいひしなり〉とあり,御高祖は日蓮を指していったものとされているが,〈おこそ〉は〈おくそ〉の転訛で,宝暦以前の苧屑(おくそ)頭巾の語に由来する。したがって《嬉遊笑覧》の説は御高祖の当て字から日蓮上人にこじつけたものである。上等品は浜ちりめんで作り,色合いを中年は鉄・藍鼠(あいねずみ)・淡鼠・浅黄鼠,若向けは藤・紅掛(べにかけ)・桜鼠で,裏地は共色とし,布の一端に雪,月,花の模様あるいは名前,家紋などを染めぬいた。
被り物 →ずきん
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「御高祖頭巾」の意味・わかりやすい解説

御高祖頭巾
おこそずきん

女性用頭巾の一種。享保(きょうほう)年間(1716~36)に片袖(かたそで)形の頭巾が使われ、これを袖頭巾あるいは大明(だいみょう)頭巾といった。これは順光という僧侶(そうりょ)が高祖日蓮上人(にちれんしょうにん)像の頭巾から思い付いてつくり、かぶったのに始まるという。材料は黒や紫縮緬(ちりめん)を4尺(120センチメートル)角に裁ち、女物は裏に紅絹(もみ)をつけた。明治時代に防寒用具として大流行し、中年の女性は鉄色、藍鼠(あいねずみ)、浅葱(あさぎ)鼠の色を、若い女性は紫、藤、紅掛け鼠の色を用いた。かぶり方は、四角の一角を内へ折って額にあて、左右の角を交互に回し留め、顔の前面だけを残して包む。髪形を壊さないので、よく利用された。

[遠藤 武]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御高祖頭巾」の意味・わかりやすい解説

御高祖頭巾
おこそずきん

江戸時代中期 (18世紀初) から明治,大正にかけて,主として若い女性に用いられた防寒用の頭巾。一説に,おくそ (カラムシの茎) で作った頭巾に形が似ていることから転訛した名称とされる。また,形がきものの袖に似ているところから袖頭巾,ときには大明 (だいみん) 頭巾と呼ぶこともある。頭からかぶって開いた口から顔をのぞかせ,左右を広げて耳のうしろに掛けたのち,襟や肩をおおうようにした。覆面のように目だけを出すこともあり,黒か紫の縮緬 (ちりめん) が多く使われた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「御高祖頭巾」の意味・わかりやすい解説

御高祖頭巾【おこそずきん】

江戸〜明治にかけて流行した女性の防寒用のかぶり物。方形の布に耳かけのひも輪を付けたもので,ふじ色や鉄色の浜縮緬(はまちりめん)で作り,一端に雪月花の模様や家紋を染めた。裏は共色。俗に日蓮宗の高祖日蓮の頭巾に似ているのでこの名があるというが,苧屑(おくそ)頭巾の転訛(てんか)したものらしい。
→関連項目頭巾

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の御高祖頭巾の言及

【被り物】より

…頭にかぶったり頭をおおったりするものの総称。防寒,防暑,防風などの保護機能はもとより,装飾機能や身分,階級,職業などを端的に示すシンボル機能も強い。さらに,神仏への畏敬の表現,吉凶時の喜悲や慎みの表現としても重要である。時代や民族の特性を如実に反映するものとして,古くから多種多様なものがみられる。被り物は身分や役割のはっきりしている社会,また文化の爛熟期に発達している。
【日本】
 帽子頭巾手ぬぐいなどの種類があり,材料としては絹,麻,木綿,ラシャ,紗,紙,藺(い),菅(すげ)などが用いられている。…

【頭巾】より

…これは同形の頭巾の後ろに大きな襠(まち)を入れてかぶりやすくし,顔側の左右に取り付けたひもを結んで着用した。 ふろしき形は,四角または長方形の平面の布を用い,巧みに頭と顔部をすっぽり包む形であり,御高祖(おこそ)頭巾,ふろしきぼっちなどといい,もっぱら女性が用いた。秋田県ではフロシキボッチとよび,第2次世界大戦後もしばらく,冬季の防寒,防雪に,またおしゃれのために多くの女性が愛用した。…

※「御高祖頭巾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android