馬場佐十郎(読み)ババサジュウロウ

デジタル大辞泉 「馬場佐十郎」の意味・読み・例文・類語

ばば‐さじゅうろう〔‐サジフラウ〕【馬場佐十郎】

[1787~1822]江戸後期の洋学者長崎の人。号、轂里こくり。名は貞由。志筑忠雄師事。幕府天文方の蕃書和解御用ばんしょわげごよう出仕し、翻訳などに活躍。著「俄羅斯語おろしやご小成」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「馬場佐十郎」の意味・読み・例文・類語

ばば‐さじゅうろう【馬場佐十郎】

江戸後期の蘭学者オランダ通詞肥前国長崎県)の人。本名貞由、号は轂里。幕府の「万国全図」の補訂に参与。ついで、ショメール百科全書の翻訳「厚生新編」、日本最初のロシア語辞書「俄羅斯語小成」を編纂。天明七~文政五年(一七八七‐一八二二

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「馬場佐十郎」の意味・わかりやすい解説

馬場佐十郎
ばばさじゅうろう
(1787―1822)

江戸後期の洋学者。長崎の生まれ。本姓は三栖谷(みくりや)、オランダ通詞の長兄馬場為八郎(1769―1838)に養われ、その養嗣子(しし)となった。幼名を千之助、のちに貞由(さだよし)と改め、佐十郎は通称。字(あざな)は職夫、轂里(こくり)と号し、蘭名(らんめい)としてはAbrahamを用いた。オランダ通詞としてオランダ語の教育を受け、さらに志筑忠雄(しづきただお)に師事し、また商館長ドゥーフHendrik Doeff(1777―1835)らからは蘭・仏・英の3か国語を学んだ。1808年(文化5)天文方に蕃書和解御用(ばんしょわげごよう)の局が設けられると、大槻玄沢(おおつきげんたく)とともに訳員として出仕を命ぜられ、フランスのショメルNoël Chomel(1633―1712)の百科全書『厚生新編』の翻訳等に中心的人物として活躍した。大黒屋光太夫(だいこくやこうだゆう)についてロシア語を学び、さらに1813年、松前(まつまえ)に抑留中のロシア船船長ゴロウニンについて、足立信頭(あだちしんとう)(左内(さない))とともにロシア語を学び、ゴロウニンの口述から『魯語(ろご)文法規範』をつくった。ロシア語から種痘に関する書『遁花秘訣(とんかひけつ)』、またゴロウニンの抑留日記を『遭厄日本紀事(そうやくにほんきじ)』として翻訳している。このほか、1818年(文政1)と1822年には浦賀に出張し、イギリス船との応接にあたった。死後出版された『泰西(たいせい)七金訳説』(1854刊)などもある。墓は宗延寺(東京都杉並区)にあり、墓碑銘は高橋景保(かげやす)の撰(せん)文である。

[菊池俊彦]

『杉本つとむ著『江戸時代蘭語学の成立とその展開』全5巻(1976~1982・早稲田大学出版部)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「馬場佐十郎」の意味・わかりやすい解説

馬場佐十郎【ばばさじゅうろう】

江戸時代の蘭学者。名は貞由(さだよし)。号は轂里。長崎のオランダ通詞で中野柳圃(志筑忠雄)の門人。ドゥーフからオランダ語・仏語,ブロンホフから英語,ゴロブニンからロシア語を学ぶ。1808年幕府天文方で《万国全図》の校訂に当たり,のち《厚生新編》訳述事業の中心となった。日本最初の露和辞典《俄羅斯(オロシャ)語小成》を編集。35歳で死んだが語学の天才で,《蘭学梯航》など著書多数。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

改訂新版 世界大百科事典 「馬場佐十郎」の意味・わかりやすい解説

馬場佐十郎 (ばばさじゅうろう)
生没年:1787-1822(天明7-文政5)

江戸後期のオランダ通詞,蘭学者。名は貞由(さだよし),佐十郎は通称。伯兄為八郎の養子となり,通詞となる。志筑忠雄に師事。オランダ商館長ドゥーフからオランダ語,フランス語を,ブロムホフから英語を,ゴロブニンからロシア語を学んだ。1808年(文化5)幕府の天文台に仕え《万国全図》の補訂に従事,11年蕃書和解御用において《厚生新編》訳述事業に従事,異国船の応接・調査にも当たる。著書に蘭文法書《西文規範》《蘭学梯航》等がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「馬場佐十郎」の意味・わかりやすい解説

馬場佐十郎
ばばさじゅうろう

[生]天明7(1787).長崎
[没]文政5(1822).7.27. 江戸
江戸時代後期の蘭学者。オランダ通詞 (つうじ) 。名は貞由。字は職夫。号は轂里。志筑忠雄にオランダ語を学び,文化5 (1808) 年幕府天文方に出仕してオランダ語を教え,のち蛮書和解御用の一員として『厚生新編』の翻訳に従った。 V.ゴロウニン抑留中も通詞として北海道におもむき,『遭厄日本記事』『俄羅斯 (おろしゃ) 小成』を著わした。ほかに『西洋度量考』『和蘭辞類訳名抄』『西説雑記』。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「馬場佐十郎」の解説

馬場佐十郎 ばば-さじゅうろう

1787-1822 江戸時代後期のオランダ通詞,蘭学者。
天明7年生まれ。蘭,仏,露の各国語に精通。幕府のもとで「厚生新編」の訳述に従事。日本最初の露和辞典「俄羅斯(オロシヤ)語小成」をあらわした。文政5年7月27日死去。36歳。肥前長崎出身。本姓は三栖谷(みくりや)。名は貞由(さだよし)。字(あざな)は職夫(しょくふ)。号は轂里(こくり)。著作に「蘭語冠履辞考」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android