鎌倉後期(14世紀初期)の絵巻。清少納言(せいしょうなごん)の『枕草子』を絵画化したもの。現在、詞(ことば)・絵各七段からなる一巻(重文、個人蔵)であるが、配列の順序が乱れており、当初の絵巻の残存部分を集めたものと思われる。現存七段は流布本の第83(二場面)、89、100、123、130、132段にあたる。詞書の料紙は四隅に藍(あい)色の雲形を漉(す)き込み、金銀泥で下絵を施すなど装飾的である。絵は単色で、細い墨の線と髪や調度に塗った濃い墨の面で構成した典型的な白描画である。『隆房卿艶詞(たかふさきょうつやことば)絵巻』『豊明(とよのあかり)絵草紙』などとともに、白描物語絵巻の代表的作例にあげられるが、とくに製図を思わせるような精巧な筆技、無機的な画面は他に例をみない。後崇光(ごすこう)院の『看聞御記(かんもんぎょき)』(永享10年〈1438〉12月3日条)に載る「清少納言枕草子絵(墨絵)二巻」が現存の絵巻にあたるとの推論が行われている。
[村重 寧]
『小松茂美編『日本絵巻大成10 枕草子絵詞他』(1978・中央公論社)』
鎌倉時代末期の絵巻。清少納言の《枕草子》を絵画化し7段1巻にまとめたもの。詞書が2筆であることや,内容が2種に大別できることなどから,もと2巻の絵巻であったものが一度散逸して現状の形になったと考えられる。彩色のない白描画態で,髪や冠物に使われた光沢のある濃墨や唇の朱がアクセントとなり,洗練された画趣を創り上げている。その細く鋭い線描や整った構図,精緻な描写は,白描やまと絵盛期の様式を代表するものである。伏見院流の書風や紫と藍の打曇(うちぐもり)料紙に施された金銀泥下絵は,《伊勢物語絵巻》詞書のそれらに近似しており,濃彩の作絵(つくりえ)と白描画との違いはあるが,ともに伏見院を中心とする14世紀前半の宮廷文化サロンにおける古典復興の一面を物語る貴重な作例といえよう。
執筆者:佐野 みどり
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新