デジタル大辞泉
「骨形成不全症」の意味・読み・例文・類語
こつけいせいふぜん‐しょう〔‐シヤウ〕【骨形成不全症】
先天的に全身の骨が弱く、軽微な外力で骨折してしまう、遺伝性の疾患。青色強膜・難聴・歯牙形成不全などを伴うことが多い。発症頻度は約2~3万人に1人とされる。OI(Osteogenesis Imperfecta)。
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骨形成不全症
こつけいせいふぜんしょう
Osteogenesis imperfecta
(遺伝的要因による疾患)
重症度と合併症により、複数の分類がありますが、骨折しやすく、これによって脚や腕の骨の変形を伴うことが共通の特徴です。
骨形成不全症は遺伝性疾患で、両親のいずれかがこの疾患であって、その親から50%の確率で遺伝する常染色体優性遺伝が基本ですが、その他の遺伝形式をとる場合もあります。また突然変異で発症することもあり、必ず親から遺伝するわけではありません(健常な両親から生まれることもあります)。
原因のほとんどは1型コラーゲンという骨の形成に重要な遺伝子の変異によって生じます。
骨折しやすい、脚や腕の骨の変形を併うといった症状以外にも側彎や胸郭変形、低身長などの骨所見を伴うことも多いです。また、眼の青色強膜、歯牙形成不全、皮膚の異常、難聴などを伴うこともあります。
一般に骨の脆弱性は骨成熟とともに改善しますので、小児期から成人期にかけて骨折は起こりにくくなります。しかし女性の場合には、閉経後に悪化する傾向があります。知的障害や精神発達障害はありませんが、骨折による運動障害や、骨折を予防するための運動制限の必要性はあります。
①1型 眼の青色強膜と成人期の難聴を伴います。骨折はさまざまですが、軽度の場合が多いです。
②2型 2型は重症で死産になったり、出生後の早期に亡くなることが多いです。
③3型 重症型ですが、症状は2型よりやや軽度です。
④4型 中等度の重症度で、青色強膜を伴わないことが特徴です。
近年は分類が細分化されて5~7型までに分類されることもあります。
前記の症状があった場合に骨形成不全症が疑われますが、診断確定はX線検査で全身の骨化不良、骨折と再生像、頭蓋骨で菲薄化等がみられれば確定します。血液検査では骨代謝マーカーを用いた検査で、骨代謝の亢進所見がみられます。
薬剤治療としてビスホスフォネート製剤の投与、長管骨の骨折や変形に対しては髄内釘手術などが行われますが、根治的な治療方法はありません。
澤井 英明
骨形成不全症
こつけいせいふぜんしょう
Dysosteogenesis
(子どもの病気)
Ⅰ型コラーゲンの異常により生じる全身性の結合組織の病気で、骨の脆弱性から頻回の骨折、骨変形を生じます。遺伝性の病気で、発生頻度は約2万人に1人です。
症状はさまざまで、生後すぐ死亡する重症型から、偶然発見されるほとんど無症状のものまであります。症状は、易骨折性(骨折しやすい)・進行性の骨変形などの長管骨の脆弱性と脊椎の変形に加え、青色強膜、象牙質形成不全、成長障害、難聴、関節・皮膚の過伸展などです。
重症度、青色強膜、象牙質形成不全の有無により、Ⅰ型~Ⅳ型に分類されます。最近、この分類に当てはまらず、またコラーゲン異常が原因ではない場合が存在することが判明し、Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ型と新たに分類されました。
軽微な外力による繰り返す骨折、青色強膜、X線所見、骨密度測定などにより診断されます。軽症型では診断が簡単でない場合もあります。X線写真では、頭蓋骨における多数の小さい島状の骨が見える所見が重要です。骨の密度は著しく低値です。
区別すべき病気として、くる病などの骨脆弱性を呈する病気のほか、被虐待児(ひぎゃくたいじ)症候群もあげられます。
四肢長管骨の骨折、変形に対する外科的治療のほか、最近行われるようになったビスホスフォネート製剤を用いた薬物療法が著しい効果をあげています。
山中 良孝
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
骨形成不全症(先天性結合組織疾患)
骨量が低下し,骨の脆弱性を特徴とする疾患で,brittle bone disease(脆弱骨病)ともよばれている.
頻度
20000〜30000出生に1例程度の頻度で発症するまれな疾患である.発生頻度に地域差・人種差はないとされており,小児慢性特定疾患に指定されているものの,わが国での正確な数字はない.
臨床症状
多くの場合,Ⅰ型コラーゲンの遺伝子異常が常染色体優性遺伝することによりヘリックスがうまく形成されないことによる.高頻度の骨折,非定型骨折,低身長,脊椎の側弯,頭蓋骨の異常,青色強膜(blue sclera),歯牙の異常(dentinogenesis imperfecta),聴力低下などが特徴とされる.非常に重篤で生後まもなく死亡する症例から,閉経後骨粗鬆症と区別がつかない軽症例まである. 軽症型では幼児期には骨折を認めるものの思春期以降は骨折の頻度は低下する.低身長になる頻度も少ない.成人になると伝音性と感音性が混ざり合った聴力低下を認めることがある. 中等症型では低身長や脊椎骨の後弯・側弯などの変形を認める.耳小骨に生じた変化のために小児期から聴力低下をきたす. 重症型では多くの骨折を認め,子宮内で死亡したり,出生しても呼吸不全のため出生後まもなく死亡する.
診断
骨の脆弱性があり,骨外症状や遺伝性が明らかであれば診断は容易であるが,軽症例では診断が困難なことがある.骨外症状としての青色強膜も必ずしも特異性は高くない.疑った場合にはCOL1A1とCOL1A2の遺伝子解析が推奨される.
治療
保存的治療が主となる.過度ではない運動は骨密度を保つために重要である.骨代謝が亢進していることからビスホスホネートが試用されている.また,骨髄移植が試みられることがある.[簑田清次]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
家庭医学館
「骨形成不全症」の解説
こつけいせいふぜんしょう【骨形成不全症 Osteogenesis Imperfecta】
[どんな病気か]
生まれつき骨のつくりが悪く、簡単に骨折をおこしてしまう病気です。
ふつう、10歳くらいまでに何度も骨折をおこしてしまうため、骨が変形してしまいます。
[症状]
この病気にともなう症状として、白目(しろめ)の部分が青かったり、むし歯になりやすかったり、また、耳が聞こえにくかったりすることがあります。
骨折にともなう変形によって、身長が低くなる(低身長(ていしんちょう))ことはありますが、知能の低下はおこりません。
多くの場合、骨折がよくおこるのは10歳までで、それ以降は少ないとされています。
原因としては、骨の形成にたいせつなⅠ型コラーゲンと呼ばれるたんぱく質の異常によっておこると考えられています。
[治療]
原因がわかっている場合が多いのですが、いまのところ有効な治療法はありません。
骨折がおこらないように、カルシトニンというホルモンを用いる場合もありますが、その効果については、まだはっきりしていません。
くり返しおこる骨折のために変形した下肢(かし)(脚(あし))の骨には、変形を矯正(きょうせい)する手術を行なったりします。
生後すぐに死亡する場合もありますが、それ以外は、成人に達することが多いので、寝たきりにならないように、とくに下肢の体重を支える機能を保つような治療が行なわれることがたいせつとなります。
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骨形成不全症 (こつけいせいふぜんしょう)
osteogenesis imperfecta
先天的に骨が脆弱(ぜいじやく)で,わずかな外力によって容易に骨折を起こす遺伝性の疾患。生後まもなく死亡するもの,多数の骨折を生ずる重症型,幼小児期から骨折を起こしはじめる中等度のもの,成人になって初めて発見される軽症型など,いくつかの病型がある。遺伝のしかたについても,常染色体優性のものが多いが,常染色体劣性のものもあり,まだ不明の点が少なくない。くり返して起こる骨折によって高度の下肢変形を生ずるものがあるので,骨折時の適切な治療が大切である。本症患者の骨は皮質が薄く,骨質量が少なく,先天性の骨粗鬆症(こつそしようしよう)ということができ,骨のコラーゲンの組成が正常の骨とは異なっていることが証明されている。青色強膜(強膜が青く見える遺伝性疾患)と難聴を合併するものがあり,これをバン・デル・ヘーベvan der Hoeve症候群という。
→骨
執筆者:吉川 靖三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
骨形成不全症
こつけいせいふぜんしょう
先天性骨疾患で、骨の長径の成長障害はないが、骨の皮質や骨稜(こつりょう)が薄く、そのために骨は細くて骨折しやすい。出生時に多数の骨折がみられる重症のものもある。出生後に骨折を繰り返すと、そのために四肢骨とくに下肢骨は高度の変形をきたして彎曲(わんきょく)する。原因は結合織の成熟障害にあるものと考えられており、骨ばかりでなく、他の組織にも変化がみられる。とくに青色強膜(目の強膜が薄くて内部のぶどう膜が青く透けて見える遺伝病)と難聴を合併することがしばしばある。
[永井 隆]
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骨形成不全症
こつけいせいふぜんしょう
osteogenesis imperfecta
骨が全体的に細長く,わずかな外力によってきわめて骨折しやすくなる遺伝性の疾患。初めて記載したオランダの医師の名をとってブァンデルヘーベ症候群ともいわれる。2~6歳に発症することが多い。骨芽細胞の機能不全のため,骨幹部の形成が阻害されて骨が太くならず,骨皮質は菲薄であるが,長さの成長は障害を受けない。この疾患では中胚葉性組織全体に発育不全があり,骨折しやすい,青色強膜 (眼の白目のところが青い) ,耳硬化症による難聴の3主徴のほか,歯牙発育不全,関節の異常可動性もみられる。有効な原因療法はない。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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「骨形成不全症」の意味・わかりやすい解説
骨形成不全症【こつけいせいふぜんしょう】
先天的に骨形成が悪く,骨折しやすい状態。骨折は肋骨や四肢,とくに下肢に起こりやすい。骨と骨の癒合は正常で,思春期以降には骨折する頻度はまれになる。カルシウム剤,ビタミンD剤,ホルモン療法なども有効性が認められず,骨折に留意しながら筋肉や関節の強化を試みる方法が主流。骨折を起こしたときは,変形が残らないよう,完全な治療が必要となる。
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