精選版 日本国語大辞典 「骨」の意味・読み・例文・類語
こつ【骨】
ほね【骨】
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脊椎(せきつい)動物の骨格の構成要素で、骨組織よりなる。俗には軟骨も骨に含めることがあるので区別して硬骨ともよぶ。骨は体全体または重要な器官を包んで保護したり、付着している筋肉と協同して運動器官となったり、体の支持器官として働いている。骨は形状によって長骨、短骨、扁平骨(へんぺいこつ)(または膜性骨)などに区別する。いずれも表面は緻密(ちみつ)な緻密骨質からなり、内部は粗い海綿状の海綿骨質、またはそれを欠いて腔所(こうしょ)となっている。骨は現生脊椎動物では硬骨魚類以上に発達するが、これには、結合組織内でいきなり骨組織がつくられる場合(頭頂骨のような扁平骨)と、初めに軟骨ができ、のちに軟骨が吸収・消失したあとに骨がつくられる場合(大腿骨(だいたいこつ)のような長骨と、指骨のような短骨)、すなわち軟骨をモデルとした骨形成とがある。骨の成長は、雪だるまを大きくするように外側に骨質が付加されておこる。骨が形よく成長するのは、付加されるだけでなく、不要部分の吸収もおこるためで、骨の内外面の削り取りにより、彎曲(わんきょく)した頭蓋冠(とうがいかん)の曲率の変化や長骨のリモデリングremodeling(形のとり直し)がおこる。
[川島誠一郎]
骨組織では骨質中に骨小腔(こつしょうこう)とよばれる小室が点在し、その中に骨細胞(こつさいぼう)osteocyteが埋まっている。骨細胞は多数の細い原形質突起(骨細管という)により互いに連絡し、またそれを通じて血管とも連絡している。骨細胞は、骨芽細胞osteoblast(造骨細胞ともいう)が自らつくった骨質により封じ込められて徐々に骨形成能を失ったものをいう。骨質はコラーゲン繊維の間に有機質と無機質が詰まったものである。骨芽細胞は、胚(はい)では間充織の細胞が、成体では繊維芽細胞または細網細胞が肥大し分化したものである。骨芽細胞に分化する前の細胞は増殖能力のある未分化の細胞で、骨組織細胞の幹細胞(かんさいぼう)osteoprogenitor cellという。骨芽細胞の大部分は骨細胞になるが、一部は幹細胞に戻るといわれる。
[川島誠一郎]
化石は生物の遺骸(いがい)および遺跡のうち地層中に発見されたもので、古生物を認識するのに調べられる。化石には、実体は残らずその印象のみが残るものから、体の軟部までも保存されているものもあるが、一般に古生物の硬い部分である骨は、量的にも多いために化石として残ることが多い。脊椎動物の骨格系は外骨格と内骨格に分けられるが、外骨格の化石としては、甲皮類や板皮類の甲板、サメの皮歯、硬骨魚類の鱗(うろこ)や爬虫(はちゅう)類の骨板などがある。骨の化石の大部分は内骨格で、脊椎動物の脊柱を中心とした中軸骨格や付属肢の骨の大部分がこれに含まれる。
[川島誠一郎]
人体の内部では多数の硬骨と軟骨とが組み合わさって骨格を構成し、体を支えたり、内臓諸器官の保護にあたっている。このような働きをする骨格を内骨格とよぶ。内骨格は、発生の初期には軟骨組織の形をとり、それから骨組織となる(原始骨・置換骨)。これに対して、外骨格とよばれるものは、結合組織からそのまま骨組織となる(結合組織骨)。外骨格に属するのは、軟体動物では貝殻、節足動物ではキチン質の外層であり、脊椎動物では頭蓋(とうがい)の上部の骨、顔面骨などである。
[嶋井和世]
人体の骨の数は200余個であるが、年齢や個体によって骨の癒合状態が異なったり、腱(けん)や靭帯(じんたい)内にできる骨(種子骨(しゅしこつ))があったりするため、その数は不確定となる。特殊な骨には、左右の中耳内に位置する耳小骨がある。これは、それぞれ3個の骨によって構成される。骨は形によって、長骨、短骨、扁平骨、含気骨(がんきこつ)に分類される。長骨は中空の細長い骨幹(骨体という)の両端に肥厚した骨端をもっており、大腿骨(だいたいこつ)、鎖骨、指骨などがその例である。短骨の例には手根骨(しゅこんこつ)、足骨(そっこつ)、脊椎骨があり、扁平骨の例には頭蓋冠、肩甲骨、寛骨(かんこつ)がある。含気骨はその内部に1個あるいはそれ以上の小腔(しょうくう)を含んでいる骨で、上顎骨(じょうがくこつ)、篩骨(しこつ)などがその例である。また、1個の骨でも、いろいろの形態が組み合わされる場合もある。
骨幹と骨端とは、同じ軟骨組織であっても、それぞれ異なった骨化点から発育し始めるため、骨幹と骨端との間には板状の軟骨組織(骨端軟骨)が存在する。骨端軟骨は成長するにしたがって骨化するが、一部はそのまま残って骨端線となることがある。骨端は隣接の骨の骨端との間で関節面を形成するが、この関節面は関節軟骨で覆われている。関節面を除いた生体の骨の全表面は、かならず結合組織性の骨膜によって覆われる。
骨本体の表層を構成しているのは硬くて厚い緻密骨(ちみつこつ)である。緻密骨から内方に向かっては、細い骨質板(海綿小柱)が放散しており、柔らかい海綿構造を形成している。これを海綿骨とよび、骨端部でとくに発達している。緻密骨は骨組織が層板状に配列し、海綿骨は骨小柱が網目状構造をつくるが、これらの構造は、力学的にも構築学的にも、外力に対してきわめて合理的に構成されている。また、大部分の骨は内部に中空の髄腔(ずいくう)をもっている。髄腔は、海綿骨内の骨小柱でつくられている小腔とも交通しており、ともに骨髄で満たされている。
骨髄は造血組織で、盛んに血球造成を行っている。血球造成の盛んな骨髄は肉眼的にも赤色を呈し、これを赤色骨髄とよぶ。成人の場合、赤色骨髄は一部の骨端、短骨、扁平骨の海綿骨に分布するが、幼年者では全骨に、若年者では椎骨、胸骨(きょうこつ)、腸骨などの骨髄に分布する。赤色骨髄は、加齢とともに脂肪組織が増加し、黄色骨髄となる。したがって、黄色骨髄は高年者ほど、その分布が広くなる。なお、臨床上の骨髄検査には一般に胸骨髄が用いられる(この操作を胸骨穿刺(せんし)という)。
[嶋井和世]
骨基質の組織構造をみると、緻密骨、海綿骨ともに厚さ3~7マイクロメートルの骨板が重層をつくっている。緻密骨ではこの骨板が4~20層も同心円状に重なって「ハバース層板」という骨層板をつくり、これが種々の方向に配列して骨基質を構成している(ハバース層板の名は、17世紀のイギリスの医師ハバースC. Haversにちなむ)。この各ハバース層板の中心にはハバース管が通り、その中を血管が走っている。1本のハバース管とこれを取り囲む数十層の骨層板をあわせて骨単位(オステオン)とよび、この骨単位が骨基質構成の単位とみなされる。また、個々のハバース層板の間には、平行な骨層板からなる介在層板が種々の方向に走ってハバース層板の間を埋めている。
骨細胞は、骨層板を形成している各骨板の間に配列し、骨細胞からは細い細胞突起が出て互いにつながっている。骨細胞は骨基質に閉じ込められた状態となっているため、その小腔を骨小腔とよび、骨細胞の突起が連絡する路を骨細管とよぶ。結局、骨細胞は自ら産生した骨基質によって封じ込められ、骨形成機能を失ってしまう。
骨組織の発生には、前述のように結合組織の中に直接骨組織が形成される結合組織性骨化と、軟骨組織から骨組織が形成される軟骨性骨化とがあるが、いずれも間葉細胞に由来する骨芽細胞が骨基質の形成をつかさどる。骨組織は骨芽細胞による新生と同時に、一方では破壊と吸収が行われ、全体として骨成長が行われることとなる。この破壊と吸収活動にあずかる細胞を破骨細胞といい、核を数個から十数個ももつ多核巨細胞である(大きさ20~100マイクロメートル)。この細胞は血液細胞に由来すると考えられている。骨を覆っている骨膜は、強靭な線維性結合組織からなり、血管や神経(とくに豊富な知覚神経)が分布し、骨の保護と栄養をつかさどっている。骨膜内の膠原(こうげん)線維は、骨組織の中に進入し、骨膜と骨組織とを固く結合させている。この線維を貫通線維、シャーピー線維とよぶ(シャーピー線維の名は、19世紀のイギリスの解剖学・生理学者シャーピーW. Sharpeyにちなむ)。骨膜の存在は、骨組織の新生・再生には不可欠である。
骨基質は無定形基質で、多量の無機質(60~65%)を含んでいる。無機質としてはリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、および少量のマグネシウム塩などである。リン酸カルシウムは燐(りん)灰石(アパタイト)とよぶ微細な結晶からできており、この結晶は主として水酸化アパタイトCa10(PO4)6(OH)2である。そのほか骨基質に含まれるものに水分、タンパク質があるが、骨から無機質を抜き取ると、骨は柔らかくなる(脱灰という)。骨には体内のカルシウムの約99%が含まれ、カルシウムの貯蔵所としても重要な役割を果たしている。
[嶋井和世]
死者の骨をたいせつに保存し、長く祭りの対象とする習俗は、風葬の地において顕著である。沖縄がそうで、古くは原野や山林の中に放置された。のちには洞窟(どうくつ)や特殊な建造物の中に納められ、年を経て骨化した遺体を取り出して洗骨し、袋や甕(かめ)に入れて、元の所あるいは別の所に納めて保存した。この洗骨改葬は子孫が父祖に対する孝養の仕上げとみられており、いまもなお続けられている。広く行われていた土葬の場合でも、遺骸(いがい)の白骨化したころ掘り起こして甕などに入れて埋め直したり、ときに頭骨だけをそのように処置したりする風は、奄美(あまみ)諸島のほか本土でも若干の村落にみられた。全村落をあげてこのような改葬を行っていた所は、和歌山県日置川(ひきがわ)町(現、白浜(しらはま)町)、愛知県渥美(あつみ)町(現、田原(たはら)市)、千葉県江見町(現、鴨川(かもがわ)市)などあったが、近年火葬化に伴ってやめた所が多い。このほか、埋葬地を村落から離れた所に設け、村落に接した石塔墓地を詣(まい)り墓とし、白骨化した頭骨だけを移す風は、大分県四浦(ようら)村(現、津久見市)などにみられ、特定の家のものだけが頭骨だけの改葬をした地方も二、三あった。近年一般化している火葬の場合、火葬骨を壺(つぼ)に納めてしばらく家で供養したのち、墓に入れるのが一般であるが、壺に取り入れる火葬骨が関西で著しく微少なのに対し、関東では灰以外のほとんどを取り入れる。このほか、火葬骨のすべてを川に流したり、湖中に投じて顧みない所、あるいは火葬場にそのまま火葬骨を残しておいて顧みない所もある。
[最上孝敬]
『西井易穂・森井浩世・江沢郁子・小島至編『カルシウムと骨』(2001・朝倉書店)』▽『米田俊之著『新しい骨のバイオサイエンス――骨研究のHOT SPOTが疾患までまるごとわかる』(2002・羊土社)』▽『須田立雄・小澤英浩他編著『新 骨の科学』(2007・医歯薬出版)』
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出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
…農地改革(1962)前のイランでは耕地の約90%は地主が所有し,うち80%強は分益小作制によって経営されていた。分益小作制は高原地方に広くみられ,降水量が少なく灌漑技術が農作業においてきわめて重要な意味をもつ地方では,ボネboneなどと称する特殊な耕地制度がとられていた。地主は所有する耕地を一定数の耕区に分け,そこに一定数の農民を配属して共同で農作業をさせる。…
※「骨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
少子化とは、出生率の低下に伴って、将来の人口が長期的に減少する現象をさす。日本の出生率は、第二次世界大戦後、継続的に低下し、すでに先進国のうちでも低い水準となっている。出生率の低下は、直接には人々の意...
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