家庭医学館 「耳硬化症」の解説
じこうかしょう【耳硬化症 Otosclerosis】
鼓膜(こまく)の裏側の中耳(ちゅうじ)には、鼓膜の振動を内耳(ないじ)に伝える3個の小さな骨(耳小骨(じしょうこつ))があります。この骨のなかでもっとも小さく、内耳への窓にはまり込んでいる骨を、あぶみ骨(こつ)といいます。
このあぶみ骨と内耳窓(ないじそう)(前庭窓(ぜんていそう))との間に骨のような組織(耳硬化症性骨組織)が増殖(ぞうしょく)してきてあぶみ骨が動かなくなり、難聴(なんちょう)になるのが耳硬化症(じこうかしょう)で、いまのところ原因は不明です。
白人やインド人に多く、東洋人や黒人には少ない病気です。
病気になるのは女性がやや多く、妊娠(にんしん)や出産によって難聴が悪化することもあります。
欧米では、遺伝性の病気と考えられていますが、日本では、遺伝とは関係のない症例が多いようです。
[症状]
青年期から難聴がおこって徐々に進行し、約7割は耳鳴(みみな)りをともないます。
難聴は、片側だけのことも、両側のこともあり、難聴の進行程度が左右で異なることもあります。
[検査と診断]
鼓膜・外耳道(がいじどう)には異常がなく、聴力検査(ちょうりょくけんさ)で気導聴力(きどうちょうりょく)が低下していて、骨導聴力(こつどうちょうりょく)が正常かやや低下した程度の伝音難聴(でんおんなんちょう)または混合難聴(こんごうなんちょう)があって、ティンパノグラムで特有なパターンを示すので、容易に診断がつきます。
ただし、病変が内耳にまで波及すると感音難聴(かんおんなんちょう)となります。
[治療]
ふつう、あぶみ骨切除術(こつせつじょじゅつ)か、あぶみ骨小開窓術(こつしょうかいそうじゅつ)という手術を行ないます。どちらも局所麻酔(きょくしょますい)で行なえますが、術後、数日間はめまいがおこることがあるので、短期間の入院、安静が必要です。
手術後10日目ごろから聴力が徐々に回復し、耳鳴りも消失することが多いようです。
ただし、術後数か月間、舌の味覚異常(みかくいじょう)が続くこともあります。
手術を望まない場合は、補聴器(ほちょうき)で聴力を補うこともできます。