精選版 日本国語大辞典 「魚見」の意味・読み・例文・類語
うお‐み うを‥【魚見】
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回遊してくる魚群の動静を,陸の小高い丘や山から監視し,海上で待機している漁船に合図をおくり,漁労を指揮する役をいう。魚群の動静を機敏に見分ける必要があるところから,漁労に熟練した者が,これに当たることが多い。魚見のほかに,タカミ,アラミ,ヤマミなどと各地で呼ばれている。魚見山には,小屋や櫓を組んで,その上から魚を監視する。漁船に合図をおくる手段として,笠を高く振りながら大声で叫んだり,またボテ,サイ,シバなどと呼ばれる採り物をもって,この動きによって漁船を指揮したり,魚群の動きを指示したりする。かつて能登半島内浦地方で隆盛した台網漁業のシコオのように,漁船に乗り組んでこれを指揮するものもあり,この場合,シコオは船の上から海中へ小石を投げ入れ,これによって船の下に魚群がいるかいないかを判別するほどの熟練者でなければならなかった。
執筆者:高桑 守史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
海に面する小高い所や船上で魚群の来遊や動静を監視する役目。普通は海鳥の群がりや水面の動き、風向きなどによって判断するが、経験と勘がものをいうむずかしい役目である。漁村でとくに地引網や定置網などによる共同漁が行われる場合に魚見がつくことが多く、湾内に魚群が入れば、大声で叫んだり旗などを合図として漁船や網子(あみこ)に知らせ網を入れさせる。所によっては魚見は監視役だけでなく漁労全体の指揮を務めることもある。島根県八束(やつか)郡島根町野波(松江市)で行われていた村共同のイワシ地引網の場合、交代制で務める網元(カリヤ)自身が魚見を兼ね漁の采配(さいはい)を振るった。それゆえ漁獲物の配当も一般の網子の倍が与えられた。
[野口武徳]
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