鳩翁道話(読み)キュウオウドウワ

デジタル大辞泉 「鳩翁道話」の意味・読み・例文・類語

きゅうおうどうわ〔キウヲウダウワ〕【鳩翁道話】

江戸末期の心学書。正編3巻。天保6年(1835)刊。柴田鳩翁講話養子遊翁が筆録したもの。7年刊続編、9年刊続々編各3巻がある。

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精選版 日本国語大辞典 「鳩翁道話」の意味・読み・例文・類語

きゅうおうどうわキウヲウダウワ【鳩翁道話】

  1. 江戸後期の心学書。三巻六冊。柴田鳩翁の談話を子の武修が筆録したもの。天保五年(一八三四)序。石門心学(せきもんしんがく)の教えを、事実談やたとえ話に託して、やさしく説く。広く、武士階級および庶民の間に普及し、感化を及ぼした。「続鳩翁道話」三巻、「続々鳩翁道話」三巻がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳩翁道話」の意味・わかりやすい解説

鳩翁道話
きゅうおうどうわ

江戸後期の石門心学者(せきもんしんがくしゃ)柴田(しばた)鳩翁の道話を、養子遊翁(ゆうおう)が筆録したもので、心学道話の代表的著作。正篇(へん)(1835=天保6刊)、続篇(1836刊)、続々篇(1838刊)の3篇9巻よりなり、のちに『鳩翁道話拾遺(しゅうい)』2篇(1929=昭和4)が公刊された。同書は冒頭に「聖人の道もチンプンカンでは、女中や子ども衆の耳に通ぜぬ。心学道話は、識者のためにまふけました事ではござりませぬ。ただ家業におはれて、隙(ひま)のない御百姓や町人衆へ、聖人の道ある事をおしらせ申したいと、先師の志でござりまする」というように、平易な語り口で古典や身近な実例を材料に心学の教えを説く。また「京の蛙(かわず)と大坂の蛙」や「サザエの話」などの軽妙なたとえや皮肉ユーモアを交えながら、家庭や恋愛・宗教などの諸問題を取り上げている。同書は世人に歓迎されて多くの版を重ね、庶民教化に大きな影響を与えた。

[今井 淳]

『柴田実編『日本思想大系42 石門心学』(1971・岩波書店)』『石川謙校訂『鳩翁道話』(岩波文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「鳩翁道話」の意味・わかりやすい解説

鳩翁道話 (きゅうおうどうわ)

江戸時代の心学者柴田鳩翁の道話の聞書。正編は1835年(天保6),続編36年,続々編38年刊。鳩翁は道話の神様といわれ,思わず聞かせて思わず考えさせる話しぶりで,〈京の蛙と大坂の蛙〉とか〈貸雪隠〉の話など道話の白眉である。家業にいそがしい百姓や町人たちを納得させる説得力があり,明治時代でもベストセラーになった。経書の真意,心学の核心を自得し,己のものとして自由にこなす力があったからである。明治時代には大阪の商店丁稚(でつち)に読ませていたといわれる。
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百科事典マイペディア 「鳩翁道話」の意味・わかりやすい解説

鳩翁道話【きゅうおうどうわ】

柴田鳩翁心学に関する講義を,義子の遊翁が筆記したもの。3巻。1836年刊。豊富な実例や寓話(ぐうわ)によって人生教訓を興味深く説く。分り易いことばを用い,家業に忙しい百姓や町人たちを納得させる力がある。心学道話中最も知られ,明治時代には大阪の商店で丁稚(でっち)に読ませたといわれる。《続鳩翁道話》《続々鳩翁道話》が引き続いて出版された。
→関連項目石田梅岩

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鳩翁道話」の意味・わかりやすい解説

鳩翁道話
きゅうおうどうわ

江戸時代後期の石門心学者柴田鳩翁の心学道話を養子の武修 (遊翁) が筆録,編纂したもの。天保6 (1835) 年刊で正編3巻のほか,続編が同7年に,続々編が同9年に出,各3巻で計9巻となるが,1929年さらに拾遺が加えられた。道話史上最も有名で,文学的にもすぐれ,口語文の先駆となったといわれる。道話は講釈のなかに種々の事実談やたとえ話などを交えることによって,一般庶民に経典の趣旨を,日常見聞する人生体験のなかで平易に理解させようとしたもので,正面から人生教訓を説き,本心修行をすすめるだけでなく,歴史や民話のなかからの幾多の実例,寓話などによって興味深く語られている。

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旺文社日本史事典 三訂版 「鳩翁道話」の解説

鳩翁道話
きゅうおうどうわ

江戸後期,柴田鳩翁の心学書
1835〜39年刊。正・続・続々編。各3巻。計18冊。『孟子』『大学』『中庸』の句を説く道話集で,生活に追われて読書もできなかった庶民を対象に,身近なたとえを多くあげてわかりやすくした点が特色。

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