改訂新版 世界大百科事典 「麗気記」の意味・わかりやすい解説
麗気記 (れいきき)
両部神道理論を代表する書。18巻。作者には聖徳太子,役行者,弘法大師,伝教大師,醍醐天皇の諸説あり,18巻に編成したのは醍醐天皇との説もある。ただし巻末の〈豊受大神宮継文〉は本来《麗気記》とは無関係で,江戸時代に添加されたが,この継文に空海撰とあったことから本書全体が空海作と一般に伝えられた。本書は1320年(元応2)に成立の《類聚神祇本源》に引用されているところから,弘安(1278-88)より元応に至る40年間の間に成立したものとされている。巻名は〈二所太神宮麗気記〉〈降臨次第麗気記〉〈神天上地下次第〉〈天地麗気記〉〈天照皇太神宮鎮座次第〉〈豊受太神宮鎮座次第〉〈心柱麗気記〉〈神梵語麗気記〉〈万鏡霊瑞器麗気記〉〈神号麗気記〉〈神形注麗気記〉〈三界表麗気記〉〈現図麗気記〉〈仏法神道麗気記〉,以下4巻は〈神体図麗気記〉で,最後に〈豊受大神宮継文〉をもって終わる。後に巻の配列をかえ,流布本では〈天地麗気記〉を巻頭としたものもある。その内容は伊勢の内宮と外宮の降臨と鎮座からはじまり,祭神・祭祀等について主として密教的に解釈説明を加えたものである。《麗気記》は《大和葛城宝山記》をはじめ多くの書物を参考引用しているが,伊勢神道の理論書である《神道五部書》に対抗するものであることは明らかで,前者が神道の立場,後者が神仏習合論の立場を重視した。また一般には真言系とみられているが,天台本覚思想がとり入れられているため,天台系の人物の手になるものとみる人もある。いずれにしても単なる理論書ではなく,伝受の秘書でもあった。
執筆者:和多 秀乗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報