黄金伝説(読み)オウゴンデンセツ(その他表記)Legenda aurea

デジタル大辞泉 「黄金伝説」の意味・読み・例文・類語

おうごんでんせつ〔ワウゴンデンセツ〕【黄金伝説】

《〈ラテンLegenda Aureaキリスト教聖者の伝記集成ジェノバ大司教ヤコブス=デ=ウォラギネが13世紀に筆録。信仰上また文学的にも価値の高いものとして黄金の名をもってよばれるようになった。黄金聖人伝
石川淳短編小説。昭和21年(1946)、雑誌中央公論」3月号に掲載。同作を表題作とする作品集は、作中の黒人兵の描写GHQ検閲で問題視され、表題作が削除された状態で刊行された。

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精選版 日本国語大辞典 「黄金伝説」の意味・読み・例文・類語

おうごんでんせつワウゴン‥【黄金伝説】

  1. ( [ラテン語] Legenda Aurea の訳語 ) 中世ヨーロッパのキリスト教国で最も流布した聖人伝。ジェノバの大司教ヤコブス=ア=ボラジネの編著に成ると言われ、信心を広めるのに役だったところから「黄金」の名が与えられた。

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改訂新版 世界大百科事典 「黄金伝説」の意味・わかりやすい解説

黄金伝説 (おうごんでんせつ)
Legenda aurea

13世紀のドミニコ会士でジェノバの大司教となったヤコブス・デ・ウォラギネのラテン語による聖人伝集成。原題は《レゲンダ・サンクトルムLegenda sanctorum》であるが,広く行われたため15世紀に〈黄金〉の呼称がついた。レゲンダはミサの際〈朗読されるべきもの〉の意で〈伝説〉ではない。バンサン・ド・ボーベ百科事典の一部をなす《歴史の鏡Speculum historiale》,ドミニコ会士ジャン・ド・マイJean de Maillyの《聖人伝Gesta sanctorum》等を基に280章に集成された原著は,伝写の間に増補を次々とうけ,15世紀に印刷されるころには440章になっているものまである。原著は1267年ころ書かれたと推定され,13世紀の心性を知るのに好適とされる。広くヨーロッパ各国で読まれ,翻訳もされた。1348年のジャン・ド・ビニェによるフランス訳,1477年に印刷刊行されたカクストンによる英訳等が有名である。芥川竜之介は《奉教人の死》で聖マリナ伝をスタイセン著の聖人伝によって扱ったが,キリシタン版《れげんだ・あうれあ》によるとしたため,一時この架空の書の存在が信じられたという。
聖人伝
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄金伝説」の意味・わかりやすい解説

黄金伝説
おうごんでんせつ
Legenda Aurea ラテン語

聖人の伝説と教会行事からなり、中世ヨーロッパにおいてもっとも流布(るふ)した本の一つ。イタリアのドミニコ会士で、ジェノバの大司教ヤコブス・デ・ウォラギネJacobus de Voragine(1230?―98?)によって1255年から66年の間に集成されたという。

 もとより聖書の記述は素朴で、伝説に乏しく、ギリシア・ローマ神話に比べると、空想力、想像力において甚だ見劣りがし、とりわけオウィディウスの『変身物語』の絢爛(けんらん)さに圧倒されていた。それに対抗するものとして、キリスト教に殉じた多くの聖人たちの生涯や奇跡を、また数々の行事にまつわる物語を潤色し、空想化し、伝説化したのがこの『黄金伝説』である。この両著が中世の人々の想像力に大きくかかわったことは特筆される。『黄金伝説』は主の降誕と再臨に始まり、いわば旧約、新約両聖書の続編のように編纂(へんさん)され、中世カトリックの聖人伝説の根幹をなし、15世紀に印刷機が発明された際、ウィリアム・キャクストンなどによって、聖書に次いでこれが印刷されたことは、この書の重要性を物語っている。芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)の『きりしとほろ上人(しょうにん)伝』が79章に基づいているように、その影響は大きい。

[船戸英夫]

『前田敬作・今村孝他訳『黄金伝説』全4巻(1979~87・人文書院)』

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百科事典マイペディア 「黄金伝説」の意味・わかりやすい解説

黄金伝説【おうごんでんせつ】

Legenda aurea(ラテン語)の訳語。中世以降ヨーロッパに広く流布したキリスト教聖人伝の集成。ジェノバ大司教ヤコブス・デ・ウォラギネの編著。邦題の〈伝説〉は誤りで,正しくは〈朗読されるべきもの〉の意。写本,刊本ともに多く,全欧的ベストセラー。芥川龍之介《奉教人の死》の取材源。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「黄金伝説」の解説

おうごんでんせつ【黄金伝説】

沖縄の泡盛。ウコンを泡盛に漬け込んで造る。原料はタイ米、黒麹。アルコール度数29%。蔵元の「津波古酒造」は明治31年(1898)創業。所在地は那覇市与儀。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黄金伝説」の意味・わかりやすい解説

黄金伝説
おうごんでんせつ

黄金聖人伝」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の黄金伝説の言及

【聖人】より

…聖人の伝記は本来信仰を鼓舞するために教会で朗読されたのでレゲンダlegenda(〈読むべきもの〉の意)と呼ばれたが,奇跡譚の強調を通じてしだいに物語性を強めレゲンダ(伝説)化の傾向をたどった。13世紀,ジェノバ大司教ヤコブス・デ・ウォラギネの編集した《黄金伝説(レゲンダ・アウレア)》は,その集大成である。聖人伝の諸場面は,絵画や彫刻に移されて教会を飾った。…

【聖人伝】より

…カロリング朝時代には修道士による創作的伝記も盛んとなった。中世の聖人伝は歴史としての伝記を求めたのではなく宗教小説ともいえるものであり,この大成を13世紀の聖人伝集《黄金伝説》に見ることができる。 聖人伝研究は,16世紀のプロテスタントからの批判の前に歴史的正確さを求める必要に迫られ,ここに聖人伝学hagiographiaが成立した。…

【ラテン文学】より

…10世紀のオットー帝国もイタリア文化を尊重してラテン語を公用語にしたが,12世紀から13世紀にかけて再びルネサンス運動が起こって,ボローニャ,パリ,オックスフォードなど各地に相ついで大学が創設され,アベラール,トマス・アクイナス,R.ベーコンなどの大学者が登場した。このころに《ケンブリッジ歌謡集》《カルミナ・ブラーナ》などの詩集と,《黄金伝説》《ゲスタ・ロマノルム》などの伝説集が成立している。 14世紀はダンテ,ペトラルカ,ボッカッチョの世紀,イタリア・ルネサンスの前夜である。…

※「黄金伝説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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