横蔵寺(読み)おうぞうじ

精選版 日本国語大辞典 「横蔵寺」の意味・読み・例文・類語

おうぞう‐じワウザウ‥【横蔵寺】

  1. 岐阜県揖斐(いび)揖斐川(いびがわ)町谷汲神原にある天台宗の寺。山号は両界山。延暦二〇年(八〇一)最澄の開創と伝えられる。慶長一五年(一六一〇徳川家康再興。よこくらじ。よこくらでら。

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日本歴史地名大系 「横蔵寺」の解説

横蔵寺
よこくらじ

[現在地名]谷汲村神原

飛鳥あすか川沿いに北上上神原かみかんばら集落の北西部に建つ。天台宗の古刹。両界山と号し、本尊は木造の薬師如来立像(国指定重要文化財)。寺伝によれば、延暦二〇年(八〇一)桓武天皇の勅願により最澄が当地大神おおみわ郷の人三輪次郎藤原助基を施主として創建したという。「和名抄」に大野郡大神郷が記され、「続日本紀」大宝二年(七〇二)七月一〇日条には「美濃国大野郡人神人大」とあり、当寺伝に関連するものか。最澄が創建にかかわったとするのは疑問があるが、地方豪族によって建立された私寺が比較的早い時期に天台宗の支配下に入った例といえる。延暦寺との関係を示すものとして寺蔵の薬師如来銅像銘があり、「授澄貞元廿一四」と刻まれている。これは唐の貞元二一年四月、つまり延暦二四年四月に最澄が師の道からこの仏像を授けられたという意で、当寺に蔵されていることは、天台宗における当寺の重要な位置を示すものだろう。なおこの仏像は当寺本尊仏の胎内に横から納められたので、横蔵寺の寺号があると伝える。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「横蔵寺」の意味・わかりやすい解説

横蔵寺(よこくらじ)
よこくらじ

岐阜県揖斐(いび)郡揖斐川町にある天台宗の寺。両界山(りょうかいざん)横蔵寺医王院と号する。本尊は薬師如来(にょらい)。805年(延暦24)最澄(さいちょう)の開基。村上(むらかみ)天皇(在位946~967)の勅会(ちょくえ)を修して以来栄え、鎌倉時代には38坊を擁する大寺で、『沙石集(しゃせきしゅう)』にもその名がみえる。1585年(天正13)比叡山(ひえいざん)再興のとき当寺の薬師像を根本中堂に移している。戦国時代の兵乱で衰えたが、徳川家康らの外護(げご)により本堂、三重塔など伽藍(がらん)が再興された。寺宝は多く、本尊の薬師如来坐像(ざぞう)(鎌倉時代)はじめ板彫法華曼荼羅(ほっけまんだら)(平安後期)、木造深沙(じんしゃ)大将(平安後期)、同大日如来(だいにちにょらい)(寿永(じゅえい)2年の銘)、同四天王、同十二神将、同金剛力士(仁王)などの諸像が国重要文化財に指定されている。舎利堂には入定妙心法師のミイラが安置されている。

[塩入良道]

『『古寺巡礼 東国6 横蔵寺』(1982・淡交社)』


横蔵寺(おうぞうじ)
おうぞうじ

横蔵寺

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デジタル大辞泉プラス 「横蔵寺」の解説

横蔵寺

岐阜県揖斐郡揖斐川町にある天台宗の寺院。山号は両界山。寺伝では桓武天皇の勅願により最澄が創建と伝える。本尊の薬師如来像ほか、国指定重要文化財に指定された仏像を多数所蔵。紅葉の名所。

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世界大百科事典(旧版)内の横蔵寺の言及

【谷汲[村]】より

…越美山地南端の山々に囲まれた根尾川沿いの低地にある。村内には延暦年間(782‐806)創建といわれる天台宗の華厳寺(谷汲観音),横蔵寺があり,早くから開けた。華厳寺は西国三十三所第33番札所で,笈摺(おいずる)を納める巡礼が訪れ,徳積地区に門前町が形成された。…

※「横蔵寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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