授澄貞元廿一四」と刻まれている。これは唐の貞元二一年四月、つまり延暦二四年四月に最澄が師の道
からこの仏像を授けられたという意で、当寺に蔵されていることは、天台宗における当寺の重要な位置を示すものだろう。なおこの仏像は当寺本尊仏の胎内に横から納められたので、横蔵寺の寺号があると伝える。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
岐阜県揖斐(いび)郡揖斐川町にある天台宗の寺。両界山(りょうかいざん)横蔵寺医王院と号する。本尊は薬師如来(にょらい)。805年(延暦24)最澄(さいちょう)の開基。村上(むらかみ)天皇(在位946~967)の勅会(ちょくえ)を修して以来栄え、鎌倉時代には38坊を擁する大寺で、『沙石集(しゃせきしゅう)』にもその名がみえる。1585年(天正13)比叡山(ひえいざん)再興のとき当寺の薬師像を根本中堂に移している。戦国時代の兵乱で衰えたが、徳川家康らの外護(げご)により本堂、三重塔など伽藍(がらん)が再興された。寺宝は多く、本尊の薬師如来坐像(ざぞう)(鎌倉時代)はじめ板彫法華曼荼羅(ほっけまんだら)(平安後期)、木造深沙(じんしゃ)大将(平安後期)、同大日如来(だいにちにょらい)(寿永(じゅえい)2年の銘)、同四天王、同十二神将、同金剛力士(仁王)などの諸像が国重要文化財に指定されている。舎利堂には入定妙心法師のミイラが安置されている。
[塩入良道]
『『古寺巡礼 東国6 横蔵寺』(1982・淡交社)』
…越美山地南端の山々に囲まれた根尾川沿いの低地にある。村内には延暦年間(782‐806)創建といわれる天台宗の華厳寺(谷汲観音),横蔵寺があり,早くから開けた。華厳寺は西国三十三所第33番札所で,笈摺(おいずる)を納める巡礼が訪れ,徳積地区に門前町が形成された。…
※「横蔵寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」