翻訳|anesthetic
麻酔剤。麻酔に用いられる薬剤で、その使用目的により全身麻酔剤と局所麻酔剤に分けられるが、一般的に麻酔剤といえば全身麻酔剤をさす。
全身麻酔剤は中枢神経系に働いてその機能を抑制することにより意識を消失させ、全身の知覚を鈍麻または消失させる。投与ルートから吸入麻酔剤、静脈麻酔剤、直腸麻酔剤の3種に分けられるが、手術時の麻酔には吸入麻酔剤がもっとも多く用いられる。
吸入麻酔剤は常温においては揮発性液体または気体(ガス体)で、呼吸器よりの吸入によって麻酔作用を現す薬物をいう。古くはエーテル、クロロホルムが用いられたが、現在では亜酸化窒素(笑気ガス)、ハロタン(フローセン)、エンフルラン(エトレン)が用いられ、そのうち笑気ガスがもっとも多く使用されている。笑気ガスは通常、酸素と混合して用いられる。
静脈麻酔剤であるバルビツール酸系の薬剤は作用が強力で、発現の早い超短時間型のバルビツール酸化合物であるチオペンタールナトリウム(ラボナール)、サイアミラールナトリウム(イソゾール、チトゾール)が全身麻酔およびその導入に用いられ、アモバルビタールナトリウム、ペントバルビタールナトリウムは基礎麻酔、誘導麻酔、および麻酔前投与薬として投与される。そのほか、プロパニジド、塩酸ケタミン、アルテシンなどは小手術や導入麻酔に応用される。なお、直腸麻酔剤としてはチオペンタールがわずかに用いられるにすぎない。
局所麻酔剤は末梢(まっしょう)における神経線維の伝達を遮断するもので、限局された部位の知覚神経を麻痺(まひ)させ、疼痛(とうつう)を緩和させる。局所麻酔には表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔(神経ブロック)、硬膜外麻酔、脊髄(せきずい)麻酔があり、これらの局所麻酔に用いられる薬剤には塩酸コカイン、塩酸プロカイン、リドカイン、テトラカイン、テーカイン、ジブカイン、オキシプロカイン(ベノキシール)、メピバカイン(カルボカイン)、プロピトカイン、ブピバカインなどがあり、これらは注射剤として用いられている。なお、虫垂炎の手術には腰椎(ようつい)麻酔としてプロカイン、リドカイン、ジブカインがよく用いられる。
[幸保文治]
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…全身麻酔は通常意識消失を伴う。麻酔作用を有する薬を麻酔薬anestheticsと呼ぶが,通常,単に麻酔薬といえば全身麻酔薬をさし,局所麻酔薬とは区別されている。麻酔の目的は痛みを取り除くことのほかに,手術の侵害によって起こる患者の反応を調節するとともに,手術が安全に行われるように管理することがある。…
※「麻酔薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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