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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
中国の作家郁達夫(いくたつふ)の中編小説。第一小説集『沈淪』(「創造社叢書(そうしょ)第3種」1922・泰東図書局)所収。旧制一高特設予科、八高と学んだ自己の留学体験を下敷きとし、異国日本で生活する高等学校の学生「私」の自意識の葛藤(かっとう)、恋愛の苦悩などを私小説風に描いた作品。叙情的な描写に加えて多感な青年の内心の苦悩を祖国中国の命運と不可分なものとして描き、五・四運動の高揚が急激に衰退した、いわゆる5.4退潮期の青年たちの間に大きな反響をよんだ。発表当時、赤裸々な描写によって「肉欲描写作家」「淫書(いんしょ)」などとそしられたが、周作人の論文「人の文学」などで高く評価された。郁達夫の出世作であるとともに、中国近代文学を代表する作品の一つである。
[小谷一郎]
『駒田信二・植田渥雄訳『沈淪』(『現代中国文学6』所収・1971・河出書房新社)』
…彼らの傾向をもっともよく代表するのは郭沫若の長詩《女神》で,奔放な空想力を駆使して反逆の呪いと人間解放への希求を高らかに歌ったこの作品は,その内容と表現の両側面で真に近代詩の名に恥じない最初の作品となった。また,郁達夫の《沈淪》は,暗い現実に苦悩する青年を性のもだえを通して描き,注目をあびた。
[革命文学の時代]
1925年の五・三〇事件を契機として,革命運動が再び高揚期を迎えると,〈文学革命から革命文学へ〉というスローガンが創造社グループによって提起され,やがてそれは20年代末にはプロレタリア文学運動となって展開した。…
※「沈淪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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