電力を利用して衣類を洗う機械。電気洗濯機ともいう。普通洗濯は「洗い」「すすぎ」「脱水」「乾燥」の四つの工程に分けられるが、洗濯機は、そのうち脱水までの三つの工程を行うものが多い。乾燥まで行う洗濯乾燥機もある。
[竹谷康生]
動力を利用した洗濯機が現れたのはアメリカが最初で、1900年に水力利用の洗濯機が出ている。さらに5年後に電動式のものが紹介されたが、当時の洗浄方式は回転式で、第一次世界大戦後に攪拌(かくはん)式が生まれている。日本では1930年(昭和5)に攪拌式がつくられた。第二次世界大戦後、中断されていた洗濯機の生産が再開され、攪拌式がつくられたが、この方式は構造が複雑で高価なため、広く普及するには至らなかった。1952年(昭和27)にはイギリスから噴流式が紹介された。この方式は構造が簡単で安価であり、翌1953年国産化され急速に普及した。噴流式はやがて改良されて渦巻式となった。1958年ごろになって遠心式脱水機を付属させた二槽式が生まれた。二槽式は、1966年に日本の洗濯機の主流となり、ついで1989年(平成1)には一つの槽で洗濯から脱水まで行う全自動式が二槽式の販売数を上回り主流の洗濯機になって、現在に至っている。この間、渦巻式の短所である布いたみの改良が進められ、電動式の回転をインバーター制御する方式が一般化した。日本の渦巻式は、ヨーロッパの回転式、アメリカの攪拌式と並ぶ洗浄方式の一つになっている。
[竹谷康生]
洗濯機は制御方式、洗浄方式、構造などにより分類されている。
(1)JIS(ジス)(日本産業規格)の「電気洗濯機」(JIS C9606)では制御方式から分類しており、全自動式、自動式、手動式の3方式がある。洗濯工程の洗い、すすぎ、脱水を自動的に行うものを全自動方式、いずれか連続して2工程を自動的に行うものを自動方式、それぞれを単独に行うものを手動式とよんでいる。また、洗濯から乾燥まで自動的に行う方式は洗濯乾燥機とよんでいる。
(2)洗浄方式は、衣類への機械力の与え方によって名づけられており、噴流式は、洗濯槽の側面にある回転翼で上下に回転する水流をおこし、衣類を回転させている。渦巻式は、洗濯槽の底面に回転翼を置き、渦状の水流をおこす。攪拌式は、洗濯槽の底面の中央に3~4枚の大型の羽根をもつ攪拌翼があり、この攪拌翼を左右交互に動かし衣類に往復運動を与えている。また回転式は、円筒状の洗濯槽を水平軸回りに回転させ、衣類を上に持ち上げて落下させ、その衝撃力で洗浄を行う方式で、業務用の大型の洗濯機および洗液に有機溶剤を用いるドライクリーニング機にはこの方式が用いられている。
(3)構造によって分類すると、洗濯槽と脱水槽とを並べて置いたのが二槽式で、二つの槽を兼用にして一つにしたのが一槽式である。全自動方式と洗濯乾燥機には一槽式が用いられている。
[竹谷康生]
衣類乾燥機は脱水を終えた衣類の乾燥を行う機械で、温風を衣類に当てて乾燥を行う。温風の熱源の種類により、ガス式と電気式とに分けられるが、家庭用には電気式が多い。衣類を容器内につり下げて温風を当てるハンガー式と、回転する容器の中で衣類を回転させながら乾燥させるドラム式の二つに大別され、ドラム式が一般的である。また排気の形式によって、排気型と除湿型とに分類される。排気型は、湿った排気を機外に出し、換気扇やダクトを用いて屋外に排気する形式のものである。また除湿型は、排気中の水分を熱交換器などで結露させて取り除き、再度加熱して温風にして循環させる方式のものである。
[竹谷康生]
『久保道正編『家電製品にみる暮らしの戦後史』(1991・ミリオン書房)』▽『小林勇著『やっぱりドラム式洗濯機にきめた――洗剤・水を3分の1にカット繊維にやさしい』(1993・合同出版)』▽『『特許からみた産業技術開発の歴史に関する調査報告書 家庭電化製品』(1995・特許庁)』▽『家電製品協会編『家電製品エンジニア資格――生活家電の基礎と製品技術』(2001・日本放送出版協会)』▽『高杉晋吾著『洗剤ゼロへの挑戦――「洗剤ゼロ・コース」洗濯機のインパクト』(2003・ダイヤモンド社)』▽『柏木博著『日用品の文化誌』(岩波新書)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…1850年には手回しで洗濯桶の中の棒を回転させる方法も生まれた。また洗濯槽を深くしザラ板の役目の装置を取り付け,手動で回転させる洗濯機も登場してきた。さらにこれら手動式のものからエンジンを利用しての洗濯機が生まれたのは,1861年,アメリカにおいてであった。…
※「洗濯機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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