アメリカの中央情報局Central Intelligence Agencyの略称。国防総省(ペンタゴン),国家安全保障会議などとともに1947年の国家安全保障法National Security Actによって設立された。第2次世界大戦直後の東西冷戦状況のなかで,それまで国務,陸・海軍各省が個々に行っていた情報収集・諜報活動を統合し,大統領の直属機関として,対外政策の決定に必要な秘密情報を提供することを任務としている。しかし実際には,例えば1953年のイランのモサッデク政権の転覆工作以来,U2型機ソ連領空侵犯・撃墜事件(1960),南ベトナムにおけるゴ・ディン・ジェム政権に対するクーデタ(1963),チリのアジェンデ政権の成立妨害,あるいはカストロ,ルムンバ(元コンゴ首相)の暗殺計画などの背後にはCIAが介在していたことが明らかにされており,CIAは正常な情報入手活動よりむしろ海外における不法な政治工作活動で悪名高い存在となった。
国内でも〈見えざる政府Invisible Government〉と呼ばれ,人員,予算,活動内容などは公表されないたてまえである。ただワシントンにある本部の建物の大きさなどから本部だけで1万名以上の職員がいることは確実といわれ,その予算規模も450億ドルは下らないとみられている。どこの国においても政府機関による諜報活動は多かれ少なかれ不透明であることを免れないが,CIAの場合,長年その活動が世界的に不評,批判を受けてきたことに対する国内世論の高まりとウォーターゲート事件をきっかけとした政府情報公開の国民的要求の動きとが背景となって,フォード政権時代,行政府と議会の双方が調査にのりだすことになった。それらの調査特別委員会はCIAの過去の活動を洗い出し,特に国内での不当な人権侵害的行動の例を指摘したが,具体的な改善策を提案するまでにはいたっていない。
執筆者:泉 昌一
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アメリカ中央情報局The Central Intelligence Agencyの略称。正確には中央諜報(ちょうほう)局。第二次世界大戦中の対敵諜報機関OSS(戦略活動局The Office of Strategic Services)の解散後、その後身として1947年に設立。49年にCIA法が改正されてから、CIAとその長官は巨大な活動権限をもつようになった。(1)雇用している職員・雇員・手先の氏名・所属・給与・員数の発表・報告の義務免除、(2)予算局はCIA予算とその使途について報告の義務免除、(3)その活動目的の一つとして、アメリカの利益に合致しない外国政府の転覆を公然と掲げたこと、など。
CIAの機構は、周知の諜報・謀略活動ばかりでなく、地質学・海洋学・言語学その他を含む推定5000~1万人のスタッフを擁し、その活動領域も旧ソ連、中国など仮想敵国から同盟諸国、航空・宇宙にまで及び、その活動内容と膨大な予算はベールに包まれている。CIAの活動としてこれまでに注目を集めたのは、1953年イランのモサデク政権の転覆によるイラン石油資源の支配、54年グアテマラのアルベンス人民政権の倒壊、61年コンゴのルムンバ大統領暗殺、61年キューバ侵入計画の失敗、73年チリのアジェンデ政権の転覆、その後のニカラグアのサンディニスタ革命政権への干渉計画など枚挙にいとまがないほど多い。冷戦終結後も、その活動範囲をかえって拡げ、日本、西欧などの企業活動に対するスパイ・告発行動を盛んに行い、途上諸国の政権への公然・隠然の活動とアメリカ企業の利益のための活動を強化している。
[陸井三郎]
『フレッド・クック著、山口房雄訳『CIA』(1961・みすず書房)』▽『D・ワイズ、T・ロス著、田村浩訳『見えない政府』(1963・弘文堂)』▽『アメリカ合衆国CIA国内活動調査委員会編、毎日新聞社外信部訳『CIAアメリカ中央情報局の内幕』(1975・毎日新聞社)』▽『矢部武著『CIAとアメリカ―世界最大のスパイ組織の行方』(1996・広済堂出版)』
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(細谷正宏 同志社大学大学院アメリカ研究科教授 / 2007年)
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…その活動が国家の統制下に行われるようになったのは第2次大戦以後のことである。アメリカの情報機構の中心的役割を果たしている中央情報局(CIA)の萌芽は1942年初めに創設された情報統制局(COI)で,その後第2次大戦中に戦略業務部(OSS)と改称された。OSSは45年9月にいったん解散されたが,46年1月中央情報本部(CIG)として復活,47年9月にCIGに代えCIAが発足,ダレスA.Dullesが長官となり,CIAの名が世界中に知られるようになった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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