DNAチップ(読み)ディーエヌエーチップ

デジタル大辞泉 「DNAチップ」の意味・読み・例文・類語

ディーエヌエー‐チップ【DNAチップ】

バイオチップ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「DNAチップ」の意味・わかりやすい解説

DNAチップ
でぃーえぬえーちっぷ

ガラスシリコンなどの基板上に、既知DNAデオキシリボ核酸配列オリゴヌクレオチドを多数、しかも高密度に配置したもの。DNAマイクロアレイとも称する。目的に応じて、基板上に整列させるDNA配列を変えたり、遺伝子組合せを変えることによって、広範囲の分野に応用可能である。ヒトゲノムなど各種のゲノムプロジェクトの成果が大いに活用される領域であり、がんなどの病気の遺伝子診断、食品の遺伝子分析、微生物の遺伝子解析など、医療、食品、環境、基礎研究をはじめとした多様な分野に利用できる。

 研究分野ではすでに種々のDNAチップが販売されており、アメリカのアフィメトリクス社(現、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社)をはじめとして、国内外の企業が製造販売に参入している。また、診断を中心とした医療分野でのDNAチップの利用拡大も進んでいる。実際に、2011年(平成23)、東芝と積水メディカルら3社が共同で開発した、ヒトパピローマウイルスHPV)型判別用DNAチップが体外診断用薬として薬事承認され、医療保険が適用されることになった。これは、子宮頸(けい)がんの原因であるHPVの型の判別に利用可能な診断薬キットである。そのほか、2009年にはロシュ・ダイアグノスティックス社が薬物代謝酵素シトクロムP450の遺伝子型判定用DNAチップについて薬事承認を得ている。海外の製品だけでなく、日本国内でも活発に研究開発が進められており、たとえば、東レ三菱(みつびし)レイヨン(2017年に三菱化学三菱樹脂と統合して三菱ケミカル)、DNAチップ研究所、横河電機、東芝、コニカミノルタ等をはじめとした多数の企業が参入しており、2007年には、バイオチップコンソーシアム(2018年バイオ計測技術コンソーシアムに改称)が設立された。この団体は、DNAチップをはじめとしたバイオチップの産業化の促進を目的としており、2018年12月の時点で、正会員として46法人が参加している。

[飯野和美 2019年2月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「DNAチップ」の意味・わかりやすい解説

DNAチップ
ディーエヌエーチップ
DNAchip

細胞内でどのような遺伝子が働いているか網羅的にとらえるための素子。 DNAマイクロアレイともいう。ガラスあるいはシリコン基板上に数万から数十万種類のデオキシリボ核酸 DNA断片を植え付けてある。細胞内のメッセンジャーRNAを DNAに変換,チップ上に流してその上のどの DNA断片と結合したかを見れば,細胞内で発現している遺伝子について知ることができる。生物研究では,発生の各段階でそれぞれの組織でどのような遺伝子が関係し合って働いているかを調べることが重要になっているが,DNAチップはそのための主要な技術となっている。

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