SPEEDI(読み)スピーディ

デジタル大辞泉 「SPEEDI」の意味・読み・例文・類語

スピーディ【SPEEDI】[System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information]

System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム原発事故が起きたときなどに、大気中に放出された放射性物質の大気中濃度や汚染状況を迅速に計算・予測するシステム。米国スリーマイル島原発事故を契機に日本原子力研究所(現、日本原子力研究開発機構)が開発し昭和61年(1986)から運用開始。平成2年(1990)から原子力安全技術センターが管理・運用。

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共同通信ニュース用語解説 「SPEEDI」の解説

SPEEDI

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」 原発事故時に、放射性物質の拡散方向などを風向きや地形、原子炉状態などから予測するシステム。東京電力福島第1原発事故では、予測の基となる放射性物質の放出データが得られず、使えなかった。ただ、仮定の放出量を基にした予測結果があったのに、政府は直ちに公表しなかった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「SPEEDI」の意味・わかりやすい解説

SPEEDI
すぴーでぃ

原子力発電所から放射性物質が漏れた際に、放射性物質の広がり方を予測するシステム。正式名称は緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムで、SPEEDIは英語名System for Prediction of Environmental Emergency Dose Informationの略称。原子力発電所から放出された放射性物質の種類や放出量などのデータを入力し、風向きなどの気象状況や地形などのデータを基に周辺地域への飛散予測状況を地図上に明示。15分程度で結果を表示し、向こう84時間先までの予測が可能で、ネットワークを通じて関係省庁、地方自治体、オフサイトセンターに迅速に配信することにより、住民の避難や被曝(ひばく)防止に生かすとされていた。1979年に起きたアメリカのスリー・マイル島原発事故を機に、日本で研究・開発を進め、1986年(昭和61)から運用を始めた。これまで約120億円の研究・開発費を投じており、文部科学省所管の財団法人・原子力安全技術センターが運用している。

 2011年(平成23)3月の東京電力福島第一原子力発電所事故では、全電源が喪失したため、放出源のデータを把握できず、SPEEDIの計算ができなかった。さらに当時の文部科学省や原子力安全・保安院は仮定値に基づく予測計算をしたものの、結果を公表したのは事故から12日後の3月23日で、住民避難などに活用できなかった。こうした政府の対応に対し、政府事故調査・検証委員会は「SPEEDIの情報が提供されていれば、自治体や住民は適切に避難のタイミングや方向を選択できた」と批判した。これを受け、政府は2012年9月に中央防災会議を開き、SPEEDIの予測結果の速やかな公開と手順防災基本計画に明記し、原子力の安全確保を一元的に担う新組織である原子力規制委員会記者会見やホームページ上でSPEEDIの予測結果を公表することを義務づけた。

[編集部]

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知恵蔵 「SPEEDI」の解説

SPEEDI

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)の略称。文部科学省所管の財団法人である原子力安全技術センターが運用する、放射能の影響を予測するためのシステム。原子力発電所などの事故により大量の放射性物質が放出された場合、もしくはその恐れがあるという緊急事態に際して、放出源の情報と周辺地域の気象条件や地形データに基づき、周辺環境における放射性物質の大気中濃度や被曝(ひばく)線量など環境への影響を予測する。
1979年の米国スリーマイル島原発事故を契機に、日本原子力研究所で設計・開発が進められ84年に完成・運用開始。90年からは原子力安全技術センターに移され、改良を経て現在の運用形態となった。2000年には海外で発生した原子力事故の影響を評価したり、放出源情報が不明な場合にこれを推定したりする機能などを有する世界版SPEEDI(WSPEEDI)も整備された。2011年現在は、第3世代SPEEDIとして数値環境システムSPEEDI-MP(Muliti-model Package)の開発が行われている。諸外国では、フランス放射線防護原子力安全研究所、米国エネルギー省(DOE)、オーストリア気象地球力学中央研究所などが、それぞれのデータにより拡散予測を行っている。
SEEDIは、113億円もの巨費を投じて開発され、本来であればオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)や地方公共団体に対して、その名に冠する通り「迅速」に情報が提供され、周辺住民への避難・退避などの指示伝達を行い防災対策を講じるために利用されるはずだった。ところが、11年3月11日に始まる福島第一原子力発電所事故では、同月23日になってようやく積算値のみ公開。原子力安全委員会もデータを受けとっておらず、世論や国会の強い求めを受けた末、5月になってから過去の時点の「予想」など一連のデータが公開された。福島原子力発電所事故対策統合本部の細野豪志事務局長は、データ公開に際しSPEEDIのシステムについて「問題は大いにあったと思う」とし、最も緊急・深刻な時点で多くのモニタリングポストが機能停止した状態でのデータの信用性、さらにはシステム自体に関係者が疑問を持っていたことなどがデータの公開が遅れた背景にあると述べた。システムの見直しもさることながら、信頼性の十分でないシミュレーションデータを公開する弊害を避けるという観点から遅延を是認する意見もあるが、情報公開というばかりでなく、危機管理に際して国家が主権者たる国民をどのような存在として見ているのかという国権の根幹にかかわる問題ではないかとの批判もある。

(金谷俊秀  ライター / 2011年)

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百科事典マイペディア 「SPEEDI」の意味・わかりやすい解説

SPEEDI【スピーディ】

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム。福島第一原発の大事故による放射性物質の拡散という危機的状況で,このシステムの予測能力が期待されたが,発表が遅れ内外から批判を浴びた。気象観測点データとモニタリングポストの放射線データ,日本気象協会のGPVデータ,アメダスデータを関係府省と関係自治体,原子力災害対策センター(オフサイトセンター)から送り,原子力安全技術センター(文科省所管)に集中する仕組み。原発事故が発生した場合,収集したデータおよび通報された放出源情報を基に,風速場,放射性物質の大気中濃度および被ばく線量などの予測計算を行い,これらの結果は,ネットワークを介して文部科学省,経済産業省,原子力安全委員会,関係道府県およびオフサイトセンターに迅速に提供され,防災対策を講じるための重要な情報として活用される,とされてきた。福島第一原発の事故では,東京電力が設置していたモニタリングポストが地震で故障,オフサイトセンターでも電源系統がこわれ機能不全に陥り,必要なデータが集まらず,緊急の危機的状況に対処できなかったと批判され,システムを推進してきた文科省,原子力安全委員会の対応が批判された。予測を試算したデータは不十分とはいえ存在しており,文科省と原子力・安全保安院は後になって公表,結局,大量の放射能の流出拡散状況下で住民の避難指示などに活かされなかった。公表しなかった経過が改めて批判されている。

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