つくば

日本大百科全書(ニッポニカ) 「つくば」の意味・わかりやすい解説

つくば(市)
つくば

茨城県南西部にある市。市域内に筑波研究学園都市がある。1963年(昭和38)学園都市の建設が閣議で了解され、以後、建設工事が進められ、1980年までに筑波大学(旧、東京教育大学)など予定されていた国の試験・研究機関のほとんどが移転した。これに伴い、1987年筑波郡大穂(おおほ)、豊里(とよさと)、谷田部(やたべ)の3町と、新治(にいはり)郡の桜村が合併して市制施行し、つくば市が誕生した。さらに、1988年筑波郡筑波町、2002年(平成14)稲敷(いなしき)郡茎崎町(くきざきまち)を編入。2007年特例市に移行する。筑波山地と筑波台地および桜川と谷田部川の沿岸低地よりなり、北部は水郷筑波国定公園域に含まれる。国道6号(牛久土浦バイパス)、125号、354号、408号が通じ、常磐(じょうばん)自動車道の谷田部、桜土浦(一部は土浦市)インターチェンジと、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)のつくば中央、つくば牛久のインターチェンジがあり、両自動車道はつくばジャンクションで交差・接続している。2005年8月つくばエクスプレスが開通し、東京の秋葉原(あきはばら)との間が最速45分で結ばれた。中心地区からのJR常磐線最寄り駅は土浦市域の荒川沖(あらかわおき)駅で、つくばセンターとの間にバスの便がある。東京駅から常磐自動車道経由の高速バスも出ている。

 筑波研究学園都市は、中心部に整備された人工的な都市空間の研究学園地区と、それ以外の周辺開発地区からなる。研究学園地区の大部分は旧桜村西半部にあたり、この部分の地域変貌が著しい。南西部の旧谷田部町域は筑波郡の行政中心地であったところで、現在もつくば市役所が置かれている。1985年に国際科学技術博覧会(通称科学万博、EXPO'85)の開催地となったが、その跡地は、科学万博記念公園や筑波西部工業団地となり、コンピュータ、通信機器、医療品、食品などの民間企業の研究施設が立地している。西部の旧豊里町域にはつくばテクノパーク豊里があり、食品、洗剤プラスチックなどの企業が進出しているが、野菜やゴルフ場用の芝の栽培なども盛ん。その北に続く旧大穂町域には筑波北部工業団地やつくばテクノパーク大穂があり、電子材料、放射光、集積回路、紙・パルプ、印刷など、先端技術産業の研究施設が多い。豊里とともに農業も行われ、座敷箒(ざしきぼうき)の生産がある。最北部の旧筑波町域は筑波山の南西山麓(さんろく)にあたり、筑波山神社の参道に通じる商業地区の北条(ほうじょう)を中心とする。

 国指定文化財には、栗原(旧、桜村域)の大塚家住宅、筑波山神社の太刀(銘吉宗(めいよしむね)・附絲巻太刀拵(ふいとまきたちごしらえ))、小田(旧、筑波町域)の小田城跡、平沢(旧、筑波町域)の平沢官衙(かんが)遺跡があり、前二者は重要文化財、後二者は史跡。文化施設には、ホテルや音楽ホール(ノバホール)などの複合施設つくばセンタービル、市立図書館と県立美術館を主とする複合施設つくば文化会館アルス、プラネタリウムや最新映像システムを備えたつくばエキスポセンター、国立科学博物館の筑波実験植物園など多数ある。面積283.72平方キロメートル、人口24万1656(2020)。

[編集部]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「つくば」の意味・わかりやすい解説

つくば[市]

茨城県南西部の市で,研究学園都市。2002年11月旧つくば市と茎崎(くきざき)町が合体して成立した。人口21万4590(2010)。

つくば市南端の旧町。旧稲敷郡所属。1983年町制。人口2万5836(2000)。牛久沼の北に位置し,標高20~25mの筑波稲敷台地と牛久沼に沿った低地からなる。米,麦,ラッカセイなどを中心とする純農村であったが,1968年に筑波研究学園都市の区域に入り,林業試験場(現,独立行政法人の森林総合研究所),畜産試験場(現,同じく農業・食品産業技術総合研究機構の畜産草地研究所)などが設置され,都市化が進んだ。70年代中ごろからはJR常磐線牛久駅に近い地域に住宅団地がつくられ,東京方面への通勤者がふえている。
執筆者:

つくば市の大部分を占める旧市。1987年筑波郡谷田部(やたべ)町,豊里町,大穂町と新治(にいはり)郡桜村が合体,つくば市として市制施行。88年筑波郡筑波町を編入。人口16万5978(2000)。筑波・稲敷台地と小貝(こかい)川,桜川流域の低地からなる近郊農業地域で,北端に水郷筑波国定公園に属する筑波山がある。1985年にEXPO'85国際科学技術博覧会が開催され,周辺地区を含めて急速に開発が進み,東部の旧桜地区には筑波研究学園都市が建設され,筑波大学をはじめ47の国の研究機関,8工業団地があって,日本最大の研究開発センターとなっている。南西部の旧谷田部地区は,主集落が近世細川氏の陣屋町で旧筑波郡の行政中心地であり,国土地理院,気象庁高層気象台,自動車高速試験場(現,日本自動車研究所つくば研究所)がある。西部の旧豊里地区は,芝栽培畑が多く,工業団地テクノパーク豊里がある。北西部の大穂地区は,座敷ほうきを特産した純農村であったが,筑波北部工業団地が造成された。最北部の旧筑波地区は,筑波山神社の鳥居前町である筑波と山麓の商業中心地北条,小田城跡(史)がある。常磐線土浦駅からバスが通じる。市域の南端を常磐自動車道と圏央道が通じ,2005年,首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線が開業した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「つくば」の意味・わかりやすい解説

つくば[市]【つくば】

茨城県南西部の市。1987年筑波郡谷田部町,豊里町,大穂町と新治郡桜村が合体,つくば市として市制施行。1988年筑波郡筑波町を編入。筑波・稲敷台地と小貝(こかい)川,桜川流域の低地からなる近郊農業地域で,北端に水郷筑波国定公園に属する筑波山があり,南端は牛久沼に接する。1985年にEXPO'85国際科学技術博覧会が開催され,周辺地区も含めて急速に開発が進み,東部の旧桜地区には筑波研究学園都市が建設され,筑波大学をはじめ47の国の研究機関,8工業団地があって,日本最大の研究開発センターとなっている。南西部の旧谷田部地区は,主集落が近世細川氏の陣屋町で旧筑波郡の行政中心地であり,国土地理院,気象庁高層気象台,高速自動車試験場がある。西部の旧豊里地区は,芝栽培畑が多く,工業団地テクノパーク豊里がある。北西部の大穂地区は,座敷箒(ぼうき)を特産した純農村であったが,筑波北部工業団地が造成された。最北部の旧筑波地区は,筑波山神社の鳥居前町である筑波と山麓の商業中心地北条,小田城跡(史跡)がある。常磐線土浦駅からバスが通じる。市域の南部に常磐自動車道や圏央道が通じ,2005年に秋葉原と〈つくば〉(吾妻に所在)間を最速45分で結ぶ〈つくばエクスプレス〉が開業。2002年11月,稲敷郡茎崎町と合併。東日本大震災で,市内において被害が発生。283.72km2。21万4590人(2010)。
→関連項目牛久[市]畜産試験場筑波技術大学土浦[市]図書館情報大学

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のつくばの言及

【筑波】より

…茨城県西部,筑波郡の旧町。1988年つくば市に編入。筑波山の南斜面と山麓の台地,低地を占め,中央を桜川が流れる。…

※「つくば」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android