( 1 ) pão de Castella (カスティーリャ王国のパン)と教えられたのを、日本人が「カステイラ」と略したらしい。また、オランダ語 Castiliansh-brood の略という説などもある。中世末から近世にかけては、カステイラの形が一般的だったが、やがてカステラの形も現われた。
( 2 )日本での製造は、長崎本博多町和泉屋長鶴本家が最初といわれ、その後、京都・大坂に広まり、茶の湯の菓子などとしても用いられた。
小麦粉に鶏卵,砂糖,水飴を混ぜて焼いたもの。室町末期に伝えられた南蛮菓子の一種。カスティリャ地方の菓子の意であるポルトガル語のボロ・デ・カステラbolo de Castellaに出た語で,加須底羅,粕底羅などとも書かれた。長崎では寛永(1624-44)初年からつくられたといい,しだいに各地にひろまった。近松門左衛門の《傾城反魂香(けいせいはんごんこう)》(1708初演)には〈落雁かすてら羊羹(ようかん)より,菓子盆運ぶ腰本(こしもと)の饅頭(まんじゆう)肌ぞなつかしき〉と見え,当時はやりの菓子であったさまがうかがわれる。そのころの製法は,小麦粉,砂糖,鶏卵を主材料とする点はいまと同じであるが,《合類日用料理指南抄》(1689),《和漢三才図会》(1712),《御前菓子秘伝抄》(1718)など,いずれも上記の材料をこね合わせるだけで焼くとしており,これではやわらかい海綿状に膨化していたかどうか疑問である。《料理塩梅集》(推定1668-83)だけは〈おふし粉〉を入れるとしてあり,これは実体不明ながらふくらし粉のような膨化剤であったかもしれない。現在では鶏卵を泡立てることで膨化させているが,これに近い手法は《鼎左秘録》(1852)に至って,小麦粉,砂糖,鶏卵の〈三品鉢にてよくよくすりまぜ〉というのに見られる。焼き方は《料理塩梅集》は〈火のしに火を入(いれ)あて,上より色付程やく也〉としているが,《鼎左秘録》では〈カステイラ鍋(なべ)〉と称する銅製の専用なべがあるとしている。おもしろいのは京都油小路三条の万屋五兵衛という店で,カステラを茶菓子だけではなく,大根おろしやワサビを添えて酒のさかなにもよいと宣伝していたことである。
執筆者:松本 仲子
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戦国時代、日本に輸入された南蛮(なんばん)菓子の一つ。1556年(弘治2)ポルトガルの宣教師が、長崎県の平戸(ひらど)に医療とともに伝えたといわれている。カステラの語源はポルトガル語のCastella、すなわちイベリア半島東岸中央から北部にかけての、かつてのカスティーリャ王国のことで、そこでつくられた菓子という意味であった。伝来当時は原料に牛乳や蜂蜜(はちみつ)が使われ、病人の治療用と思われていたが、慶長(けいちょう)年間(1596~1615)ごろには一般に広まり始め、茶席の菓子にも用いられ大流行したということである。当時は小麦粉、鶏卵、白砂糖でつくられ、製法もいまほど複雑ではなかった。長崎の福砂(ふくさ)屋の創業は1624年(寛永1)で、続いて長崎屋、松翁軒、文明堂などが長崎にでき、やがて京坂地方から江戸にも広まっていった。長崎代官の村山等安(とうあん)をはじめ多くの人々の努力と研究の積み重ねと、400年にわたる長い時を経て、日本人独特の製菓感覚と技術が開発され、和菓子として今日のカステラが創造された。カステラの基本材料とその配合の割合は、小麦粉(薄力粉)50グラム、鶏卵100グラム、白砂糖100グラムである。小麦粉の量が少ないのでつくるのは非常にむずかしい。膨張剤を使用しないで、卵白の起泡を消さないように種生地(たねきじ)の中へ入れる。そして風味、湿性、焼き色などに気をつける。
[小林文子]
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…北のビスケー湾岸から南はモレナ山脈に至り,マドリード北西部のグアダラマとグレドス両山脈を境に,北の旧カスティリャと南の新カスティリャに二分される。ちなみにCastillaの名はラテン語castellum(城)の複数形カステラcastellaに由来,〈城塞の多い国〉を意味し,8世紀末に文献に現れる。なお,カスティリャ王国とは地理的広がりからして異なる点に注意を要する。…
…100種余の卵料理を紹介したもので,趣向を楽しませる読物としての性格が濃いが,卵料理の人気のほどを物語るものといえよう。ところで,卵を使った菓子の代表はカステラであり,卵料理のほうでは〈巨人,大鵬,卵焼き〉なる俗言のごとく,卵焼きが代表的なものである。しかるに《卵百珍》には卵焼きの作り方は書かれていないのである。…
※「カステラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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