ハムレット(英語表記)Hamlet

翻訳|Hamlet

デジタル大辞泉 「ハムレット」の意味・読み・例文・類語

ハムレット(Hamlet)

シェークスピアの四大悲劇の一。5幕。1602年ごろ初演。デンマークの王子ハムレットが、父王を毒殺して王位に就き、母を妃とした叔父に復讐する物語。ハムレットはその思索的な性格のために悩み、恋人オフィーリアをも捨てて狂死させ、苦悩のすえに復讐を遂げるが、自分も命を落とす。
トーマ作曲のオペラ。5幕。1868年パリで初演。シェークスピアのに題材をとった同名のオペラ作品のなかで最も多く上演される。フランス語の読みに従い「アムレ」ともする。

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精選版 日本国語大辞典 「ハムレット」の意味・読み・例文・類語

ハムレット

  1. ( 原題[英語] Hamlet ) 戯曲。五幕。シェークスピア作。一六〇一年ごろ成立、一六〇二年ごろ初演。デンマーク王子ハムレットが、父王を毒殺して王位についた叔父クローディアスや不貞の母ガートルードへの復讐と、オフィリアとの悲恋の間に苦悩する運命を描く。作者の四大悲劇の一つ。日本では明治三六年(一九〇三)東京本郷座川上音二郎一座が翻案により演じ、また、同四〇年には坪内逍遙訳・演出によって本郷座で土肥春曙東儀鉄笛松井須磨子らが初演。

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改訂新版 世界大百科事典 「ハムレット」の意味・わかりやすい解説

ハムレット
Hamlet

イギリスの劇作家シェークスピアの悲劇。1601年ころ作,02年ころ初演。原話は北欧の民話で,12世紀のデンマークの史家サクソ・グラマティクスが書き記したものを基にしたフランス語の物語をシェークスピアが読んだ節はあるが,直接下敷きになったのは,1580年代末にロンドンで上演されて人気を呼んだ作者不詳の劇(《原ハムレット》と呼びならわされる。作者はT.キッドという説もある)であったと想像される。デンマーク王子ハムレットは父王の急逝後あまりにも早く母が父の弟で王位を継いだクローディアスと再婚したことに悩むが,やがて父の亡霊によって父が叔父に毒害されたことを告げられる。彼は父王暗殺の状況を筋に仕組んだ芝居をクローディアスに見せてその反応を試す一方,狂気を装って復讐の機をうかがうが,そのうちに王と誤って重臣ポローニアスを刺殺してしまい,その娘で彼の恋人であったオフィーリアは狂死する。遊学先から帰国したポローニアスの息子レアティーズは,王と結託して親善試合の最中にハムレットを毒剣で刺し,ハムレットもまた彼と王を殺して死ぬ。

 《ハムレット》については,復讐劇の枠組みの中に,母親の罪に苦悩する知的な青年主人公の悲劇をはめこんだ特異な作品として,さまざまな解釈が行われてきた。ことに19世紀には,主人公の性格分析が作品解釈の中心課題として盛んに行われ,S.T.コールリジに代表されるロマン主義批評は,非行動的な〈悩める知識人〉というハムレット観を強く打ち出した。しかし20世紀に入ると,こうした性格批評よりも,〈強いられた状況の劇〉〈権力と世襲との劇〉など,劇全体のモティーフやドラマの構造原理に,より大きな関心が払われることが多い。

 日本への初期の移入では,明治半ばに外山正一矢田部良吉による部分訳(いずれも《新体詩抄》(1882)所収),仮名垣魯文による翻案《葉武列土倭錦絵(ハムレツトやまとにしきえ)》(1886)などが試みられたが,完訳は戸沢姑射(こや)(正保)と浅野馮虚ひようきよ)(和三郎)の共訳(1905),それに続く坪内逍遥訳(1909)以降である。逍遥訳初版は,もっぱら実演に便宜なように企図したため,訳詞が歌舞伎式,七五調となったと彼自身述懐している。上演面では,土肥春曙と山岸荷葉が明治の華族のお家騒動物に翻案したものを川上音二郎の一座が1903年東京本郷座で上演,葉村年丸(原作のハムレット)を藤沢浅二郎が,おりえ(オフィーリア)を川上貞奴が演じた。原作に忠実な上演は文芸協会設立(1906)以降で,1911年には逍遥訳・演出(配役,ハムレット=土肥春曙,オフィーリア=松井須磨子)により上演された。
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百科事典マイペディア 「ハムレット」の意味・わかりやすい解説

ハムレット

シェークスピア作の悲劇。5幕。推定初演1602年。父を毒殺し母を奪って王位についた叔父にデンマークの王子ハムレットが復讐(ふくしゅう)する話。先王の亡霊から秘密を聞いた王子は狂気を装ったため婚約者オフィーリアは自殺。秘密を確かめるための劇中劇の後,関係者全員が死んで物語は終わる。ハムレットの物語は北欧伝説にあり,トマス・キッドも劇化しているが,シェークスピアは自意識過剰で思索的な青年像を創造し,後にコールリジら多くのハムレット論を生んだ。近年は自己克服をした行動人ハムレットという解釈も有力である。
→関連項目オリビエクロンボー城ドラクロアドン・キホーテ文芸協会松井須磨子リュビーモフ

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デジタル大辞泉プラス 「ハムレット」の解説

ハムレット〔イギリス映画:1948年〕

1948年製作のイギリス映画。原題《Hamlet》。シェークスピアの同名戯曲の映画化。監督・主演:ローレンス・オリビエ、共演:ジーン・シモンズ、ベイジル・シドニー、クリストファー・リー、ピーター・カッシングほか。第21回米国アカデミー賞作品賞受賞。同主演男優賞(ローレンス・オリビエ)、美術賞(白黒)、衣裳デザイン賞(同)受賞。第2回英国アカデミー賞作品賞受賞。

ハムレット〔アメリカ映画:2000年〕

2000年製作のアメリカ映画。原題《Hamlet》。シェークスピアの同名戯曲を、舞台を現代に置きかえて映画化。監督:マイケル・アルメレイダ、出演:イーサン・ホーク、カイル・マクラクラン、ビル・マーレイ、サム・シェパード、リーブ・シュレイバーほか。

ハムレット〔アメリカ映画:1990年〕

1990年製作のアメリカ映画。原題《Hamlet》。シェークスピアの同名戯曲の映画化。監督:フランコ・ゼフィレッリ、出演:メル・ギブソン、グレン・クローズ、アラン・ベイツ、ポール・スコフィールド、イアン・ホルム、ヘレナ・ボナム・カーターほか。

ハムレット〔イギリス映画:1996年〕

1996年製作のイギリス映画。原題《Hamlet》。シェークスピアの同名戯曲の映画化。監督・主演:ケネス・ブラナー、共演:ケイト・ウィンスレット、ジュリー・クリスティ、デレク・ジャコビほか。

ハムレット〔ソ連映画〕

1964年製作のソ連映画。シェークスピアの同名戯曲の映画化。監督:グリゴリー・コージンツェフ、出演:インノケンティ・スモクトゥノフスキー、アナスタシア・ベルチンスカヤほか。

ハムレット〔実在動物〕

アメリカ、ニューヨークにあるアルゴンキンホテルのマスコット(通称:アルゴンキンキャット)を務めるオス猫に代々付けられる名。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ハムレット」の解説

ハムレット
Hamlet

イギリスの劇作家シェークスピアの四大悲劇の1つ
1601年ころの作で,02年に初演された。デンマーク王子ハムレットは,母と結婚して王位についた叔父が父を毒殺した事情を父の亡霊によって知らされ,苦悩の末復讐 (ふくしゆう) を果たすが,自分も毒剣に倒れるという物語。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ハムレット」の解説

『ハムレット』
Hamlet

シェークスピアの四大悲劇の一つ。1602年初演。父の生命と王位,さらに母までも叔父に奪われたデンマークの王子ハムレットの復讐物語。ハムレット伝説の原型は13世紀にみられるという。

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