ヒトが一定量以上の紫外線を受けると日焼けなどの光線皮膚障害を起こすが,少量の光線で皮膚障害を起こす場合を光線過敏症という。より厳密に定義すれば,光線に対して皮膚が量的または質的に異常に反応する状態ということになる。原因となる光の作用波長は,日光光線では290~380nmの紫外線が主であるが,ときに可視光線が関係することもある。
光線過敏症は外因性と内因性の二つに大別される。外因性のものは,光感作物質が外から皮膚表面につくか,いったん体内に入ってから血液を介して皮膚に達するために起こる。皮膚表面に作用するのは,化粧品(オーデコロン,香水),香料(ベルガモット油),植物の汁(イチジク,セロリ),ハロゲン化フェノール化合物などの殺菌剤,タール,色素(アクリジン,エオジン)などがあり,体内に入ってから作用するものとしては,薬剤(サルファ剤,フェノチアジン,クロルプロマジン,グリセオフルビンなど),食品(そば)などがある。また,内因性のものは,慢性多形日光疹,日光蕁麻疹(じんましん),種痘様水疱症,色素性乾皮症,ポルフィリン症,ペラグラ,ブルーム症候群,コケイン症候群,全身性エリテマトーデス,皮膚筋炎などの病気によって起こる。発症機序としては,(1)光毒性phototoxic,すなわち皮膚に存在する光感作物質(光線を吸収してエネルギーを放出するもの)のために障害を起こす場合(ソラレン,タールなど),(2)光アレルギー性photoallergic,すなわち皮膚内のある物質が光化学的に変化し,タンパク質と結合して抗原性をもち,抗原抗体反応を引き起こす場合(フェノチアジン,ハロゲン化フェノールなど),(3)メラニン色素の減少による光防御能低下(白皮症,フェニルケトン尿症,尋常性白斑など)で,メラニン色素が少ない白人は光線過敏の度が高い,(4)酵素欠損による紫外線損傷DNAの修復能低下(色素性乾皮症)がある。
顔,耳,頸,上胸,手背,下腿など日光に当たる部に限って紅斑,浮腫,丘疹,水疱をつくり,灼熱感やかゆみを生ずるのが特徴で,長年反復するうちに色素沈着,皮膚萎縮,毛細血管拡張,瘢痕(はんこん)を残す。さらに良性~悪性の皮膚腫瘍を生ずることがある。光線過敏症に対する特殊な検査には,最小紅斑量の測定,光貼布試験,光内服試験などがある。最小紅斑量とは,背中の数ヵ所にそれぞれ15秒,30秒,45秒,1分,1.5分,2分……と光線を照射して,24時間後に紅斑が発生する最短時間を指す。
原因となる物質があればそれを除くことが大切であるが,なによりも遮光することが最も重要である。帽子,傘,通風のよい衣服を着るなどのほか,光線遮断剤(サンスクリーン,〈日焼止め〉)を塗布するとよい。中波長の紫外線の遮断に最も有効なのはパラアミノ安息香酸とその誘導体であり,長波長の紫外線~可視光線の遮断には二酸化チタン,タルク,酸化亜鉛など細粒子による物理的散乱が有効である。これらを配合していろいろな遮光クリームが市販されている。またβ-カロチンを内服すると皮膚に沈着して遮光効果がある。
執筆者:肥田野 信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
(2019-4-16)
…長期間にわたって日焼けを繰り返していると,皮膚の結合組織が障害されてしわの多い皮膚となり,さらに前癌症状や皮膚癌を発生しやすくなるので注意すべきである。また,少量の日光光線でも日焼けを起こす場合を光線過敏症というが,遺伝性の色素性乾皮症,ポルフィリン症などの代謝異常症,エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病,薬剤による薬疹の一種など,特殊な病気がひそんでいることも考えられるので,診察・検査をうける必要がある。【藤澤 龍一】。…
※「光線過敏症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新