児童権利宣言(読み)じどうけんりせんげん(英語表記)Declaration of the Rights of the Child

改訂新版 世界大百科事典 「児童権利宣言」の意味・わかりやすい解説

児童権利宣言 (じどうけんりせんげん)
Declaration of the Rights of the Child

1959年11月20日,国際連合第14回総会において採択された,国際的な子ども人権保障宣言前文6項と本文10ヵ条からなる。前文で〈人類児童に対し,最善のものを与える義務を負っている〉との基本的な課題を提示し,世界人権宣言(1948)や国際連盟の〈ジュネーブ児童権利宣言〉(1924)を受けつぎ,これを発展・定着させる見地表明,さらに,これを実現するために,両親,個人,民間団体,地方行政機関および政府が,この宣言に従って立法およびその他の措置を講じることを求めている。そのうえで具体的な権利保障として,無差別・平等の原則(1条),児童の全面的な発達保障のための機会・便益の付与(2条),姓名・国籍保有権(3条),社会保障権(4条),心身障害児の権利(5条),生活・環境権(6条),教育・遊びの権利(7条),優先的な保護・救済権(8条),放任虐待搾取・労働等からの保護(9条),差別的慣行からの保護,平和・人類への貢献(10条)を要請している。この宣言は,児童の権利思想・運動の歴史的展開のなかで児童を保護の客体から人権主体へと転換させ,その社会的・法的保障を求めた最初の文書となっている。児童の実情に照らし,児童憲章(1951)とともにこれを土台にしてその意義を見直し,児童関係法を再検討することなどが,日本ではなおこんにち課題であるが,国際的には,この宣言を発展させ,その条約化が追究された結果,89年に国連は〈子どもの権利条約〉を採択した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「児童権利宣言」の意味・わかりやすい解説

児童権利宣言
じどうけんりせんげん
Declaration of the Rights of the Child

子供の人権を守るための宣言。世界児童人権宣言,児童の権利に関する宣言ともいう。1959年11月20日,第14回国連総会で採択された。国連憲章世界人権宣言に基づくもので,前文と 10ヵ条からなる。心身ともに未成熟な子供が,健全な成育と幸福と社会的諸権利を保障されるべきことを確認したもの。その実質的保障として,無差別の平等,社会保障,愛情と理解のもとでの養育,初等教育,心身障害児の治療と教育,放任や虐待や搾取からの保護(→児童虐待)などの諸原則をうたっている。日本は,1959年12月に参議院本会議で支持を決議した。(→児童の権利に関する条約

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世界大百科事典(旧版)内の児童権利宣言の言及

【子どもの権利条約】より

…人類は〈子どもに最善のものを与える義務を負う〉がそのキーワード。ついで第2次大戦後,国際連合憲章(1945),世界人権宣言(1948)を受けて,とくに子どもの人権にしぼった〈児童権利宣言〉(1959)が出る。再度の大戦という最悪のものを子どもに与えた悔悟を受け,ジュネーブ宣言をさらに一歩進めて,〈子どもの最善の利益〉,その中核である生存と発達の権利の保障を求めた。…

【児童憲章】より

…本文では,保障されるべき具体的な権利として,児童の生命,健康,生活保障(1条),家庭環境ないし社会保障(2,3条),教育保障(4~6条),教育ないし労働・生活保障(7,8条),文化的社会環境保障(9条),子どもの保護(10,11条),連帯の原理と平和・文化に貢献する国民の育成をめざすこと(12条)などがあげられている。児童憲章は,第2次世界大戦直後の児童の実情や政策の貧困,子どもを親の私物視するような観念の残存を乗りこえて,子どもの人権を社会的に保障していくという見地から,20世紀における国際的な子どもの権利の法的形成の流れのなかで成立した(その結実は,1959年の国連〈児童権利宣言〉から1989年第44回国連総会採択の〈児童(子ども)の権利に関する条約〉にみられる)。法律ではないが,多くの関係者が民主的に参加し,本格的な憲章として成立したことも注目され,国際的な子どもの人権保障の法体系化のなかであらためてその意義が見直されている。…

【児童福祉】より

…しかしその発展やあり方は社会的背景を抜きにして考えることはできない。第1次大戦で養育者を失い,食糧も定住地さえも奪われた児童の救済問題をその重要課題の一つに掲げた国際連盟は1924年に〈ジュネーブ児童権利宣言〉を採択した。第2次大戦下におけるナチのユダヤ人や重度心身障害児の大量殺害への反省,世界各国に見られた戦争孤児や浮浪児の惨状の回復は大人の世代の責務とされた。…

※「児童権利宣言」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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