商品先物取引(読み)ショウヒンサキモノトリヒキ(英語表記)commodity futures trading

デジタル大辞泉 「商品先物取引」の意味・読み・例文・類語

しょうひん‐さきものとりひき〔シヤウヒン‐〕【商品先物取引】

農産物や工業品などを将来において売買することを約束し、その価格事前に決めて行われる取引。→先物取引

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「商品先物取引」の意味・わかりやすい解説

商品先物取引
しょうひんさきものとりひき
commodity futures trading
commodity futures

農産物や工業品を将来のある決まった期日に売買すると約束し、現時点でその価格を決める取引。先物取引の一種である。商品先物取引には公正で透明性のある価格を形成する機能があるほか、農業生産者や工業品の需要家にとっては、将来の価格変動リスクを回避ヘッジ)できる機能がある。投資家にとっては資産運用手段の一つである。商品先物取引は、取引に入る前に「証拠金」という担保を差し入れることで証拠金額の何倍にも上る取引をすることが可能である。このため予想に反して商品価格が変動した場合、証拠金を上回る損失が出るおそれがあり、商品先物取引は元本の保証されないハイリスク・ハイリターン取引といえる。日本では2011年(平成23)に商品先物取引法が施行され、取引を望まない消費者に電話や訪問で商品先物取引を勧誘することは禁じられた。

 商品先物取引では売買期限(限月(げんげつ))が決まっており、期限までに売買の約束を履行しなくてはならない。限月以前であれば、いつでも買っていたものを売ったり、売っていたものを買い戻したりする「反対売買」が可能である。反対売買時点で、取引開始時点との商品の差額を清算して取引を終えることができ、これを「差金決済」という。売買価格の決定方法には、まず取引所が適当な価格を提示し、売買の希望数量に応じて価格の上げ下げを売買数量が一致するまで繰り返す「板寄せ方式」と、売値買値の数量が合うごとに売買を相対(あいたい)で成立させる「ザラ場方式」の大きく2種類に分けられる。

 日本で売買されている商品先物(2021年11月時点)は、農産物では大豆、小豆(あずき)、トウモロコシ、粗糖など(コメは2011年から試験上場されていたが、2022年8月に終了)、工業品では金、銀、白金、パラジウム、ガソリン、灯油、軽油、原油、電力、ゴムなどである。監督官庁は、工業品が経済産業省、農産物は農林水産省に分かれている。商品先物取引を行う取引所を商品先物市場とよぶ。実質的に世界最初の商品先物取引は1730年(享保15)に大坂の堂島米会所(どうじまこめかいしょ)(堂島米市場)で始まったコメの先物取引である。アメリカでは1840年代に、中西部穀倉地帯の中心に位置するシカゴで商品先物取引が始まり、その後、世界に広がった。日本では1980年代に19の商品取引所があったが徐々に集約が進み、2021年(令和3)時点で、大阪取引所(金、パラジウム、ゴム、トウモロコシなど)、東京商品取引所(原油、石油製品、電力など)、堂島取引所(旧、大阪堂島商品取引所、トウモロコシ、大豆、粗糖など)の3か所となった。世界の商品先物取引の売買高は、商品先物に金融派生商品(デリバティブ)や現物を組み合わせた総合取引所化が進み、電子取引の普及もあって、2020年に約95億枚(1枚は最小取引単位)と15年前の12倍強に増えた。一方、日本の売買高は2003年をピークに減少傾向にあり、2020年度は約1900万枚とほぼ同じ期間で8割減少した。

[矢野 武 2022年1月21日]

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