県西南部を流れて土佐湾に注ぐ、四国第二、高知県第一の河川で、河川法上は
渡川の名は天正一七年(一五八九)の中村郷地検帳にみえ、元来は
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高知県高岡郡津野町の旧東津野村北部の不入(いらず)山(1336m)の東斜面に源流部をもち,四万十市の旧中村市下田で土佐湾に注ぐ川。幹川流路延長196km,全流域面積2270km2。四国では吉野川に次ぐ流域面積をもつ。河川法では旧中村市の市街地付近より下流の部分称であった渡(わたり)川の名称が用いられるが,近世の文献でも,総称に四万十川が用いられ,現在も,一般には四万十川とよばれている。流域は高知県南西部の高岡郡西部と幡多(はた)郡(南部を除く)および四万十市の広域にわたる。複雑な地盤運動の影響で,中流部で大きく流路を変えている。上流部はほぼ南流し,四万十町の旧窪川町で西に向きを変え,さらに同市の旧西土佐村で再び南東流して土佐湾に入る。この間,仁井田川,檮原(ゆすはら)川,吉野川,中筋川など多くの支流を合わせる。中流部の窪川盆地,下流部の中筋川流域を含めた旧中村市付近の小平野を除いて,流域の大部分は山間地で,とくに中流部の四万十町の旧大正町から西土佐村間は著しい穿入蛇行(せんにゆうだこう)をみせる。昭和初期までは河川交通にも利用され,とくに吉野川との合流点である旧西土佐村江川崎と河口の旧中村市下田間の水運はさかんであった。下田は,中世以降中村の外港,薪炭,木材の集散・積出地として栄えたが,河口付近の土砂の堆積が多く,また流域の大部分が過疎山村地帯であるため経済開発も遅れ,近代港湾としては発展をみず,衰退した。中流の穿入蛇行部に沿って国道381号線や1974年完成の予土線が通じ,宇和島方面への交通路として重要である。また上流部を横断する国道197号線は須崎,宇和島方面に通じており,流域圏の経済的結びつきは弱い。上流の山間部一帯は,高知県でも有数の多雨地で,下流の後(うしろ)川合流点付近に立地する旧中村市中心市街地や,低湿な中筋川流域では洪水の害も多く,近世以来,改修・整備が積み重ねられてきた。流域は電源開発などのダムも少なく,水資源を含めた経済開発は進展していないが,自然のよく残された清流で魚種も豊富なことで知られる。
執筆者:大脇 保彦
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高知県の西部を流れる川。一級河川。延長196キロメートルは四国一の長流。流域面積2186平方キロメートルは吉野川に次ぐ。河川法では渡川(わたりがわ)と称したが、歴史的には渡川は下流部の名称で、総称は近世以来、四万十川が一般に用いられた。1994年(平成6)名称を四万十川に変更。源流を愛媛県境に近い高岡郡津野町船戸(ふなと)の不入山(いらずやま)斜面に発し、ほぼ南流して四万十町の南東部で方向を西に転じ、四万十町田野々で南流してきた檮原(ゆすはら)川をあわせ、典型的な嵌入(かんにゅう)蛇行をみせながら、四万十市西土佐の江川崎(えかわさき)で愛媛県から東流してきた広見川(吉野川)をあわせて南南東に方向を転じ、四万十市角崎(つのさき)付近で後(うしろ)川を、実崎(さんざき)付近で中筋(なかすじ)川をあわせ、四万十市下田(しもだ)付近で土佐湾に注ぐ。流域の大部分は山間部で、曲流峡谷の部分も多く、上流の窪川台地や下流の中村平野などわずかな河谷低地が水田に利用される以外は、林業、シイタケ、茶の栽培、氾濫原(はんらんげん)利用の桑園などがみられる。電源開発もほとんど進まず、全国的にも数少ない清流として知られる。昭和初頭までは、高瀬舟による交通路として利用され、とくに江川崎と河口の下田港との間は薪炭(しんたん)輸送などが盛んであった。生息する魚類も多く、独特の漁法もみられる。なお、大水のときに水面下に沈んでしまう「沈下橋」が多く残されている。また、2001年(平成13)には四万十川の清流を保つため、「四万十川条例」が県によって定められた。2009年、源流域の山村、上流域の山村と棚田など5件にわたり、四万十川流域の文化的景観として国の重要文化的景観の選定を受けている。
[大脇保彦]
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…人口3万4930(1995)。四万十(しまんと)川下流に位置し,その支流中筋川の流域を中心とする低湿な中村平野が東西にのび,四万十川と南流する後(うしろ)川の河岸に平地があるが,市域の大部分は山地である。四万十川の自然堤防上に縄文晩期~弥生初期の入田(にゆうた)遺跡があり,水稲栽培の痕跡が認められている。…
…高知県南西部,四万十(しまんと)川(渡川)の支流中筋川の流域を中心に四万十川,後(うしろ)川のはんらん原を含んだ小規模な平野。中筋平野ともいう。…
※「四万十川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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