緯度50°から65°にかけての南北両地帯において夏季にのみ,まれに見られる雲。出現高度は80kmから85km付近に集中し,厚さは2kmあるいはそれ以下で,薄い巻雲状をしている。薄明時,太陽が地平線下9度ないし14度の間にあるとき,この雲が太陽光を反射して,夜空を背景にして輝くので,地上から見ることができる。色は青白色であるが,地平線近くに現れるときは黄味がかって見える。
ロケットを使った粒子採取や光学観測の結果,夜光雲の粒子は大きさ0.1μm以下の極微小な氷晶であることがわかっている。高度80~85kmの領域は,水分が100万分の1から10万分の1程度というきわめて乾いた状態にあるが,高緯度の夏には,まれに気温が氷点下130℃以下になることがあり,そのため氷晶の形成が可能になると考えられている。
執筆者:小川 利紘
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高緯度地方の上空にごくまれに見られる雲。日没後または日の出前の数時間の間だけ、暗くなった空を背景に白く光って見えるので夜光雲noctilucent cloudという。北ヨーロッパ、ロシア、カナダ、アラスカで、夏から秋に変わる季節にだけ発生する。形は絹の衣が水平にたなびいているような感じで、巻積(けんせき)雲か巻層雲のように見える。しかし発生する高度は約80キロメートルで、気温の高度分布が極小値になる中間圏界面の付近である。地球大気中の雲のなかでもっとも発生高度が高い。この高さの気温は零下100℃に近く、夜光雲は微小な氷晶からなるものと考えられている。しかし、発生原因についてはまだわかっていない。流星が燃え尽きる高度に一致するので、流星塵が氷晶の核になっている可能性がある。薄い雲なので、背景が暗く、横から光が当たって、雲だけが光る場合にのみ見える。このため、低い太陽高度が長時間持続する高緯度地方でのみ見えるのであろう。
[木村龍治]
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…中間圏の気温は,大規模波動による大気下方からの熱輸送が冬に活発となるため,夏より冬の方が高い。高緯度地帯の夏には,中間圏界面の気温は氷点下130℃以下になることもあり,このため夜光雲と呼ばれる薄い雲が現れることもある。中間圏の上部から中間圏界面にまたがる部分は,電離圏の最下部であるD領域にあたり,太陽紫外放射の解離作用や電離作用によって原子や活性分子およびイオンがつくられ,これらの間で活発な化学反応が起こっている。…
※「夜光雲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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