翻訳|mesosphere
大気の鉛直構造を気温分布にしたがって区分するとき,高度50kmから90kmにかけて高度の上昇につれて気温が下がっている部分を中間圏という。気温は高度50kmで約0℃で,高度90kmでは氷点下約80℃である。高度85~90kmの領域は中間圏界面mesopausと呼ばれ,上層大気のなかで最も低温である。気圧は高度50kmから90kmにかけて0.8hPa(0.6Torr)から0.002hPa(0.0015Torr)に減る。中間圏の気温は,大規模波動による大気下方からの熱輸送が冬に活発となるため,夏より冬の方が高い。高緯度地帯の夏には,中間圏界面の気温は氷点下130℃以下になることもあり,このため夜光雲と呼ばれる薄い雲が現れることもある。中間圏の上部から中間圏界面にまたがる部分は,電離圏の最下部であるD領域にあたり,太陽紫外放射の解離作用や電離作用によって原子や活性分子およびイオンがつくられ,これらの間で活発な化学反応が起こっている。その結果は大気光と呼ばれる発光として観測され,また電離状態が存在していることは電波の反射・吸収によって確かめることができる。
執筆者:小川 利紘
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大気を鉛直に区分したとき、高度48キロメートルから80キロメートルの範囲を中間圏とよぶ。中間圏の下には成層圏、上には熱圏が存在する。中間圏の気温は、下端の成層圏界面でもっとも高く約0℃、高さとともにほぼ直線的に下降し、上端の中間圏界面で零下90℃になる。気温が高さとともに減少するが、水蒸気の凝結がないので鉛直運動に対して安定であり、対流は生じない。しかし、下方から伝播(でんぱ)してくる内部重力波の砕波によって乱流を生じ、上下の混合が行われている。中間圏上部では、季節に逆行して冬に気温が高く、夏に気温が低い。夏季には夜光雲が生じる。
[松野太郎]
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…安定な成層で水蒸気が少ないので天気現象は現れないが,冬の高緯度地方の上空20~30kmに真珠母雲が見られることがある。(3)中間圏mesosphere 成層圏界面の上空では,温度はふたたび高度の増加につれて下がる。最も低くなるのは高度約80kmの約180Kで,ここが中間圏界面(中間止面)mesopauseである。…
…乾燥空気には地面からの高さによらず組成比がほとんど変わらないものと,場所や時間により変化するものとがある。組成比の変わらないのは窒素,酸素などで,それらの成分比は中間圏界面の高度約85km付近まで不変であることがロケット観測などにより確かめられている。中間圏界面をこすと光解離のためにO2が多量のOに変換され,110km付近から上空では分子拡散作用のために重い分子と軽い分子の分離が起こるので,平均分子量は上空にゆくほど減少し,地表付近とは違った組成比になる。…
…対流圏と異なり,成層圏では大気が安定で,上下の混合は不活発である。成層圏の上約80kmまでは中間圏で,気温がふたたび上層ほど低くなっている。中間圏の上は熱圏といわれ,気温は上層ほど高くなる。…
※「中間圏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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