日本大百科全書(ニッポニカ) 「大江満雄」の意味・わかりやすい解説
大江満雄
おおえみつお
(1906―1991)
詩人。高知県生まれ。労働学院卒業。小学校卒業後独学し、キリスト教会に通う。14歳で上京し、石版印刷工をしながら詩を書き始める。生田春月(いくたしゅんげつ)の影響下に人生派詩人として出発、第二次世界大戦前に『文芸世紀』を創刊。『野獣群』に作品を発表。伊藤信吉らと『労働派』発刊。『プロレタリア詩』の発刊など、プロレタリア詩人として幅広い活動をする。戦後は『現代詩』『至上律(しじょうりつ)』などで活躍。キリスト教的理想主義にたつ幻想的で人間愛に満ちた抒情(じょじょう)詩に冴(さ)えをみせる。1950年(昭和25)の現代詩人会(現・日本現代詩人会)結成時の発起人の一人。詩集に第一詩集の『血の花が開くとき』(1928)、『日本海流』(1943)、『海峡』(1954)、『機械の呼吸』(1955)。評論集に『日本詩語の研究』(1942)など。ハンセン病患者との出会いから、全国のハンセン病患者の詩を編纂(へんさん)した『いのちの芽』(1953)を刊行した。離れキリシタンの調査研究など、社会的弱者に温かな目を注いだ仕事を続けた。『うたものがたり』(1947)、『子どものためのイエス伝』(1949)など児童文学の著作もある。没後の1996年(平成8)、『大江満雄集 詩と評論』が思想の科学社から刊行された。
[吉田文憲]
『『日本詩語の研究』(1942・山雅房)』▽『『国民詩について』(1944・育英書院)』▽『『海峡』(1954・昭森社)』▽『森田進ほか編・解説、伊藤信吉・小田切秀雄監修『大江満雄集 詩と評論』2冊(1996・思想の科学社)』