共同通信ニュース用語解説 「完全失業率」の解説
完全失業率
働く意思や能力がある15歳以上の総数を示す「労働力人口」のうち、仕事がなく、見つかればすぐに働くことができる人の割合。失業中でも仕事を探していない人は含まない。数値が高いほど、職を求める人が多い状況を示す。リーマン・ショック後の2009年7月に5・5%まで悪化したが、17年2月に2%台に回復。コロナ禍では一時、3%台まで上昇した。
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働く意思や能力がある15歳以上の総数を示す「労働力人口」のうち、仕事がなく、見つかればすぐに働くことができる人の割合。失業中でも仕事を探していない人は含まない。数値が高いほど、職を求める人が多い状況を示す。リーマン・ショック後の2009年7月に5・5%まで悪化したが、17年2月に2%台に回復。コロナ禍では一時、3%台まで上昇した。
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完全失業率は、労働者のなかで失業している者の割合を示す経済指標であり、「完全失業者数÷労働力人口」により求める。
労働力人口とは、労働市場に参加している労働者数のことであり、わかりやすく表現すると「就業者数+完全失業者数」のことである。
労働力人口、就業者数、完全失業者数のいずれも総務省「労働力調査」により明らかにされる。労働力調査は、毎月、4万世帯に居住する約10万人の月末1週間の就業・失業状況を調査しており、就業状況や失業状況の詳細を明らかにしている。同調査では、完全失業者数を実際に把握するために、完全失業者とは、「仕事がなくて、調査期間中(月末の1週間)に少しも仕事をしなかった者のうち、就業が可能でこれを希望し、かつ仕事を探していた者および仕事があればすぐつける状態で過去に行った求職活動の結果を待っている者」であると定義している。就業することの希望の有無を、実際に求職活動をしているかどうかによって判定している。したがって完全失業者であっても求職活動をしていなければ、労働力調査では完全失業者として分類せず、非労働力人口に分類される。
なお、失業者とは表現しないで「完全」失業者として表現しているのは、1950年(昭和25)に失業者の定義を変更したことから、新しい定義による失業者をそれまでの失業者と区別するために完全失業者と表現したことによる。そこで失業率も完全失業率という表現が用いられているが、今日では完全という表現を付す意義は失われている。
完全失業率は、好景気のときには低下し不景気のときには上昇する。完全失業者は少ないほうが社会にとって好ましいのであるから、完全失業率は低いほうが好ましいことになる。
完全失業率の動きは景気動向を示すことから、不況時には経済政策を考えるうえでの重要な指標となる。完全失業率を利用するうえで留意するべき点が2点ある。第一は、事実上は失業者でありながら、労働力調査では完全失業者として数えない人が存在することである。この人たちを潜在失業者と表現することができる。したがって、景気の悪いときの完全失業率は、実態よりは低すぎるという批判がしばしば行われる。日本の場合、不況時に労働者が過剰となっても、企業は良好な労使関係の維持のために、また終身雇用慣行の存在などからアメリカのようにただちに人員削減することを極力控える傾向にある。とくに正社員については削減を控える傾向がみられる。過剰となった労働者は、いわば企業内失業者であるとみることができるが、労働力調査では就業者に分類されて完全失業者にはならない。また、上述したように、労働力調査の完全失業者となるためには求職活動をしていなければならないが、求職活動をしても適当な仕事がみつかりそうにもないと判断して、求職活動をあきらめる労働者(求職断念者)が不況時には増加する傾向にあり、この人たちも事実上は失業者でありながら統計上の完全失業者としては数えられず、非労働力人口に分類される。
第二に、日本の完全失業率は景気動向より遅れて変動する傾向があることである。それは企業が不況となっても正社員に関する限りすぐには雇用削減しないこと、景気動向が深刻となってから希望退職者募集などを始めること、景気回復時には労働時間の延長でまず対応し、景気回復が確実となってから初めて雇用を増加させようとすること、などの理由からである。
[笹島芳雄]
『清家篤著『労働経済』(2002・東洋経済新報社)』▽『笹島芳雄著『労働の経済学』(2009・中央経済社)』▽『厚生労働省編『厚生労働白書』各年版(ぎょうせい)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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