宮尾登美子(読み)ミヤオトミコ

デジタル大辞泉 「宮尾登美子」の意味・読み・例文・類語

みやお‐とみこ〔みやを‐〕【宮尾登美子】

[1926~2014]小説家高知の生まれ。高知の花柳界で成長した体験を生かした自伝的作品人気を集める。「一絃いちげんの琴」で直木賞受賞。他に「かい」「序の舞」「クレオパトラ」など。平成21年(2009)文化功労者

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宮尾登美子」の意味・わかりやすい解説

宮尾登美子
みやおとみこ
(1926―2014)

小説家。高知市に生まれる。1941年(昭和16)高坂高等女学校に入学。1943年結婚、満州(中国東北地方)へ渡る。1946年引き揚げ、保育所勤務のかたわら小説を書く。1962年(昭和37)『連(れん)』で『婦人公論』女流新人賞を受賞、20年の結婚生活を清算。翌年再婚を機に上京。『櫂(かい)』(1972)で太宰治(だざいおさむ)賞を、『寒椿(かんつばき)』(1976)で女流文学賞を、『一絃(いちげん)の琴』(1978)で直木賞を、『序の舞』(1980)で吉川(よしかわ)英治文学賞をそれぞれ受ける。ほかに『陽暉楼(ようきろう)』(1976。直木賞候補)、『天璋院篤姫(てんしょういんあつひめ)』(1984)、自伝小説『朱夏(しゅか)』(1985)、『春燈』(1988)、『松風の家』(1989。文芸春秋読者賞)、『きのね』(1990)、『蔵』(1993)、『クレオパトラ』(1996)、『天涯の花』(1998)、『櫂』『朱夏』『春燈』に続く自伝小説『仁淀川(によどがわ)』(2000)など。また『手とぼしの記』(1984)、『女のこよみ』(1987)、『記憶の断片』(1996)、『はずれの記』(1998)、『めぐる季節を生きて』(2002)などのエッセイ集もある。代表作の多くは、土佐高知の遊興の世界で成長した作者の体験・見聞からモチーフを得ている。とくに父や苦界でひたむきに生きる女性など、緊密な構成、練達の文章によって、鮮烈な人間像を掘り起こした。

[岡 宣子・橋詰静子]

『『連』(1962・中央公論社)』『『宮尾登美子全集』全15巻(1992~1993・朝日新聞社)』『『記憶の断片』(1996・飛鳥新社)』『河野多恵子ほか監修『女性作家シリーズ13 宮尾登美子他』(1998・角川書店)』『『一絃の琴』新装版(2000・講談社)』『『仁淀川』(2000・新潮社)』『『めぐる季節を生きて』(2002・講談社)』『『櫂』『寒椿』『蔵』(中公文庫)』『『序の舞』『クレオパトラ』『手とぼしの記』(朝日文庫)』『『きのね』(朝日文芸文庫)』『『朱夏』『天涯の花』(集英社文庫)』『『春燈』『記憶の断片 お針道具』『記憶の断片 成城のとんかつやさん』(新潮文庫)』『『陽暉楼』『松風の家』(文春文庫)』『『はずれの記』『女のこよみ』(角川文庫)』『『天璋院篤姫』(講談社文庫)』

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知恵蔵 「宮尾登美子」の解説

宮尾登美子

作家。1926年生まれ、高知県高知市出身。生家は芸妓娼妓(げいぎしょうぎ)紹介業。家業をいとい、早く家を離れたいと、女学校卒業後に高知市を離れて山間部の代用教員となり、17歳で結婚する。45年3月、生まれたばかりの長女と教員の夫と共に旧満州へ渡り、ほどなく敗戦を迎える。終戦後の収容所での生活は飢餓との戦いで、1年後の引き上げ時には、幼い子を連れた数少ない一家となった。
引き揚げ後、当時まだ死の病とされていた結核にかかる。満州での過酷な体験を娘に書き残したい気持ちが原動力となり、執筆を始める。この思いは、後年、『朱夏』(85年)に結実する。結核は自然に治癒したとされる。
62年、『連』 (筆名前田とみ子) で婦人公論女流新人賞を受賞。離婚・再婚を経て66年に上京し、雑誌編集者をしながら執筆に力を入れる。73年、生家の家業を材にとった自伝的小説『櫂(かい)』(自作本)で太宰治賞を受賞。家業への劣等感にさいなまれながら、自分をさらけ出す決意で生み出したこの小説を機に、作品が次々に売れ始める。
自伝的小説の他、運命にあらがい高い志を持って生きる実在の女性たちをモデルにした小説も多く執筆した。79年、土佐を舞台に、伝統芸能である一絃琴の女性演奏家2人をモデルとした『一絃(いちげん)の琴』で第80回直木賞を受賞。80年代には、出す本がすべてベストセラーになり、多くが映像化、舞台化、テレビドラマ化され、宮尾ブームが起こった。80年発表の『鬼龍院花子の生涯』は夏目雅子の主演で映画化された。83年、女性初の文化勲章受章者である日本画家・上村松園をモデルとした『序の舞』で吉川英治文学賞を受賞。
歴史上の人物を題材に大きなテーマにも挑み、96年『クレオパトラ』、2001年~04年『宮尾本 平家物語』(05年のNHK大河ドラマ「義経」の原作)、07年『天璋院篤姫(てんしょういんあつひめ)』(08年の同「篤姫」の原作)などを残した。
小説のアイデアは長い時間をかけて温め、入念に準備し、1日の執筆量は原稿用紙数枚という遅筆であった。それ以上書くと、内容が薄くなると語った。『櫂』は執筆に9年、『きのね(柝の音)』(1990年)は、着想を得てから実際に朝日新聞に連載として書き出されるまで30年以上かかっている。
2008年に菊池寛賞を受賞し、09年には文化功労者に選ばれる。10年『錦』で親鸞賞を受賞。
14年秋、骨折で入院。自宅でリハビリに励んでいた。同年12月30日、老衰のため死去。享年88。半生を書き継いだ自伝的作品の次作を構想していたとされるが実現しなかった。

(葛西奈津子 フリーランスライター/2015年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宮尾登美子」の意味・わかりやすい解説

宮尾登美子
みやおとみこ

[生]1926.4.13. 高知,高知
[没]2014.12.30. 東京,狛江
小説家。高坂高等女学校を卒業後,代用教員を務めた。17歳で結婚,夫とともに満州に渡り,第2次世界大戦の終戦を同地で迎えた。1946年帰郷。社会福祉関係の仕事に携わるかたわら創作し,1962年『連』(筆名前田とみ子)で婦人公論女流新人賞を受賞した。その後,離婚,再婚を経て上京。芸妓娼妓紹介業を営んでいた生家に出入りする女たちや父母を描いた『櫂』(1972)で太宰治賞を受賞,作家としての地位を築いた。その後『陽暉楼』(1976),『寒椿』(1977。女流文学賞),『一絃の琴』(1978。直木賞),『鬼龍院花子の生涯』(1980),『序の舞』(1982,吉川英治文学賞),『天璋院篤姫』(1984),『蔵』(1993)など多くの話題作を発表した。作品の多くが映画・舞台・テレビドラマ化された。1989年紫綬褒章,1998年勲四等宝冠章を受章。2008年菊池寛賞を受賞,2009年文化功労者に選ばれた。

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知恵蔵mini 「宮尾登美子」の解説

宮尾登美子

作家。1926年、高知県生まれ。第2次世界大戦後、働きながら文学を志し、62年に「連」で婦人公論女流新人賞を受賞。その後、離婚、再婚を経て上京し、73年、自伝的小説『櫂(かい)』で太宰治賞を受賞した。これを機に本格的に作家活動を始め、77年に『寒椿』で女流文学賞、79年に『一絃の琴』で直木賞を受賞。以後、『鬼龍院花子の生涯』『序の舞』『天璋院篤姫』『宮尾本 平家物語』など、波乱の人生をたくましく生き抜く女性の姿を描いた作品を次々と発表し、多くの作品が映画やテレビドラマの原作となった。2008年に菊池寛賞、10年に『錦』で親鸞賞を受賞。09年には文化功労者に選ばれた。14年12月30日、老衰で死去。享年88。

(2015-1-9)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「宮尾登美子」の解説

宮尾登美子 みやお-とみこ

1926-2014 昭和後期-平成時代の小説家。
大正15年4月13日生まれ。昭和19年結婚して満州(中国東北部)にわたる。引き揚げ,離婚をへて再婚。48年「櫂(かい)」で太宰治(だざい-おさむ)賞。自伝的なもの,芸道・歴史ものと幅ひろく執筆し,52年「寒椿」で女流文学賞,54年「一絃の琴」で直木賞,58年「序の舞」で吉川英治文学賞。平成20年菊池寛賞。21年文化功労者。22年「錦」で親鸞賞。平成26年12月30日死去。88歳。高知県出身。高坂高女卒。作品はほかに「鬼龍院花子の生涯」「天璋院篤姫」「蔵」「クレオパトラ」など。

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百科事典マイペディア 「宮尾登美子」の意味・わかりやすい解説

宮尾登美子【みやおとみこ】

小説家。高知市生れ。高坂高女卒。《連》(1962年)で第5回婦人公論女流新人賞を受賞。その後9年余を費やして,明治末年から大正,昭和にわたる或る夫婦の生き方を描いた《櫂》(1973年)を執筆,第9回太宰治賞を受賞。他に第80回直木賞を受賞した《一絃の琴》(1978年),《鬼龍院花子の生涯》(1980年),女流芸術家を描いた《序の舞》(1982年),歴史小説《天璋院篤姫》(1984年)などの作品がある。2008年菊池寛賞受賞,2009年文化功労者。

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367日誕生日大事典 「宮尾登美子」の解説

宮尾 登美子 (みやお とみこ)

生年月日:1926年4月13日
昭和時代;平成時代の小説家

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