航空機の尾部に取り付けられる翼面で、通常は機体の軸に対して水平の水平尾翼と、垂直の垂直尾翼で構成される。水平尾翼は普通、前半の水平安定板と後方の昇降舵(だ)とからなり、機体に縦の安定を与えるとともに、機首を上下させる操縦を受け持つ。垂直尾翼は水平尾翼同様、前半の垂直安定板と後半の方向舵からなり、機体に方向の安定を与えるとともに、機首を左右に振る操縦を受け持っている。
水平安定板は機体に固定したものと、縦のつり合いをとるため操縦士が自由に角度を調整できるものとがあり、油圧、電気または人力で動かされる。また安定板と昇降舵とを連動させて動かしたり、この二つを区別しないで、一枚の水平尾翼で安定と操縦の両方の働きをもたせようとするフライングテールあるいはスタビレーターという型式もあり、高速機で翼面に生ずる衝撃波の影響を避けたり、小型機で尾翼の抵抗を減らそうとするときに用いられる。さらに水平・垂直の二つの尾翼を取り付けるかわりに、翼面をV字型に配置し、それぞれの投影面積分にほぼ近い面積で二つの翼面の作用をもたせているV型尾翼、主翼を越えて流れる気流(洗流)の影響を避けたりするため、水平尾翼を垂直尾翼の頂部や中間部に取り付けるT型または十字型尾翼、あるいは10度前後の小さい上反角または下反角をつけた水平尾翼などがある。
垂直尾翼では、一般に垂直安定板は機体に固定されているが、超音速機のなかにはまれに可動式のものもある。また垂直尾翼の数は一枚のものが多いが、双発機で片発が停止した場合を考えたり、格納時のスペースの縮小を考慮して2~4枚に分割したものがある。
なお、水平尾翼は通常、胴体の尾部に取り付けられているが、逆に機首部分に取り付けるものもあり、先尾翼(カナードまたはエンテ)とよばれる。先尾翼は効きがよいので小さい面積ですみ、機体も軽くできる特長があるが、垂直尾翼は機能上機首に取り付けることはできないので方向安定が悪くなる欠点がある。
[落合一夫]
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…このため主翼のつく部分の胴体は他の部分より細くなっている。 超音速機を亜音速機と比較したときの外形上の差異のもう一つに,尾翼の大きさがある。尾翼の効きはマッハ数が高くなるにつれしだいに低下し,マッハ1.5で十分な大きさの垂直尾翼も,マッハ2になれば不十分になってしまう。…
… 鳥の羽ばたき飛行を模倣するという長い間の迷いから覚めて,人間の飛行の可能性へ向かって第一歩を踏み出したのは,イギリスのG.ケーリーであると考えられる。彼は揚力・推力分離説を提唱し,1799年,揚力を発生する固定翼と推力を発生する手動のフラッパー(板をばたばたさせるもの)からなる飛行機の設計を発表し,1809年には,翼面積19m2の固定翼と尾翼をもったグライダーを製作,無人滑空試験に成功した。 91年ドイツのO.リリエンタールは,固定翼グライダーを製作,彼自身が操縦して滑空実験を始めた。…
…単に翼といえばこの主翼を指す。尾翼tail unitは機の尾部にあって,機のつりあいと安定を保つのがおもな目的で,機の縦(前後傾斜)のつりあいと安定を保つ水平尾翼horizontal tailと,機の方向の安定を保つ垂直尾翼vertical tailをもつのが一般であるが,両者を兼ねたV尾翼をもつ航空機もある(図6-a)。 翼は機の重心より後ろに取りつけると風見と同様に働き,機がゆれて重心を中心に回転したとき,それをもとにもどそうとする安定作用をする。…
※「尾翼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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