後陣痛(読み)こうじんつう(英語表記)Afterpains

六訂版 家庭医学大全科 「後陣痛」の解説

後陣痛
こうじんつう
Afterpains
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 後陣痛とは、分娩終了後の数日間にみられる産褥(さんじょく)初期の子宮収縮に伴う疼痛のことです。生理的な後陣痛はむしろ望ましく、通常は特別な治療を必要としませんが、強い後陣痛は産褥婦にとって非常に苦痛なものであるため、後陣痛の軽減は産褥婦管理のひとつの課題です。

原因は何か

 胎児胎盤などの付属物が娩出されたあと、急速な子宮収縮が始まります。子宮内圧の消失という物理的原因と、さらにプロスタグランジンオキシトシンなどの薬剤が関係した急激な子宮収縮とが、後陣痛の原因と考えられています。

症状の現れ方

 産褥数日間にみられる子宮に一致した下腹部痛で、経産婦に症状が強いのが特徴です。授乳により痛みは増します。

検査と診断

 産褥婦が前述した症状を訴えれば、後陣痛と診断されます。しかし、症状が異なる下腹部痛については、産褥子宮付属器炎虫垂炎子宮筋腫(きんしゅ)の変性壊死(えし)卵巣嚢腫(のうしゅ)茎捻転(けいねんてん)などを考慮し、内診、超音波断層法、血液検査、腹部X線検査などを行います。

治療の方法

 後陣痛そのものは子宮の回復における生理的現象でもあり、望ましい産褥経過ですが、痛みの強さや痛みへの感受性は人によって異なります。産婦が後陣痛のもつ意義を十分に理解し、痛みから生じる不安が解消できれば特別な治療を要しないこともあります。

 痛みが強くて産後の子宮の回復が良好と判断される場合には、子宮収縮剤投与中止します。投与の中止によって疼痛は軽くなります。それでも痛みが強い場合には、抗炎症薬を抗生剤とともに処方されることが多いようです。

病気に気づいたらどうする

 後陣痛は生理的な現象でもあり、あらかじめ母親学級または分娩後の落ち着いた時期にその意義について十分に説明を受け、不安を取り除くことが大切です。産褥期に下腹部痛を起こした場合には、他の疾患ではないことを確認したうえで、前述の治療を受けます。

菊池 昭彦

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

妊娠・子育て用語辞典 「後陣痛」の解説

こうじんつう【後陣痛】

分娩後、赤ちゃんが子宮内から出て行くと、子宮は急激に元の大きさ(ニワトリの卵くらい)に戻ろうと収縮を始めます。そのため、産後2-3日は陣痛のような痛みがあります。これが「後陣痛」です。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の後陣痛の言及

【後出血】より

…したがって,胎盤の剝離(はくり)娩出後は,これらの血管が開放状態のまま残されるので,大出血をおこしても不思議ではない。しかし,後産期に続いて分娩後期には,後陣痛とよばれる強力な持続的子宮収縮がおこるので,それによって血管は自然に圧迫閉塞されて止血する。これを生体結紮(せいたいけつさつ)という。…

【産褥】より

…この期間は子宮復古,乳汁分泌,内分泌機能などの著しい変化を伴い,心理的にも不安定で,産褥ノイローゼ,精神病が起こりやすい。 子宮復古とは産褥期における子宮の急速な縮小のことで,分娩後の子宮収縮である後陣痛によって復古が促進される。子宮は分娩直後1000gであるが,分娩後6週末にはほぼ非妊時の正常子宮大となり,産褥期末には40~60gとなる。…

【陣痛】より

…本来は分娩中の子宮収縮のことをいう。しかし妊娠中にも不規則で弱い子宮収縮が起こるので,これを分娩時の分娩陣痛に対して妊娠陣痛pregnant painsまたは偽陣痛false painsといい,分娩終了後の陣痛を後陣痛after painsという。分娩陣痛labor painsは分娩の進行とともにしだいに強くなる規則正しい子宮収縮によって起こるもので,はじめは1時間に6回くらいの頻度(周期10分)で収縮の持続時間(発作)は20~30秒くらいであるが,胎児娩出に近づくにつれて,周期は2~3分,発作は60~120秒くらいとなり,しかも収縮力が強まると同時に,いきみ(腹圧)が自然に加わるようになると,これを共圧陣痛という。…

※「後陣痛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」